子供はかまってくれない

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TVドラマ「カムカムエブリバディ」:稀に見るメディア・ミックスの成功例

2022年04月16日 17時35分41秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
三代に亘るヒロインを3人の女優が演じるということで話題を呼び,先週無事に大団円を迎えた朝ドラ「カムカムエブリバディ」だが,視聴率以上に展開の新鮮さと終盤の伏線回収の手際に関して,賞賛の声を数多く目にした。「成長」が主要なテーマとなってきた朝ドラにあって,確かに3世代共に努力を重ね,一定の成果を得るというメインプロットはしっかりと抑えてあるものの,成長のゴールとして存在する「成功」が,決して大々的にフィーチャーされない物語は,実に斬新で目が離せなかった。最終回における怒濤の伏線回収も,一見やり過ぎのように見えて,どうしてツボは押さえた藤本有紀の選球眼は堅実で渋い業の連発だった。

見ていて気になった瑕疵がなかったわけではない。
回想シーンに出てくる軍服姿の稔の襟足が,太平洋戦争時の軍人にしてはいくら何でも長すぎるだろう,とか。
安子からるい(深津絵里:実年齢49歳)にヒロインが代わった後の顔見せのショットに先立って,るいのおじさん(村上虹郎:実年齢25歳)を見せてしまうのは如何なものか,とか。
更にるいが家を出て,大阪に住むようになって最初に世話になったクリーニング屋の夫婦の消息について,結婚後まったくフォローしていなかったのは,さすがに薄情すぎるだろう,とか。

けれどもそんなつまずきも,平川先生の軽快なラジオ講座の声や,スウェーデン人の村雨辰剛を米国兵に仕立ててしまったり,旬の女優三浦透子を抜群のタイミングで起用したこと等に象徴される配役における数々の捻りや,ひなたが五十嵐と最後まで結ばれない展開の妙や,停滞した時の「完璧セットアッパー」市川実日子のいつもの働きぶりや,アニーは安子なのかという謎解きや,二流チャンバラ映画への異様なほどの愛とか,数え切れないほどの「面白がるのためのフック」がちりばめられた小宇宙は,間違いなく高い受信料に見合うものだったと断言できる。

更に決定的だったのは,様々なメディアを実に自然にドラマに溶け込ませた手腕だった。上述したチャンバラ映画=B級アクションへの偏愛,言い換えればそんな「変な」映画に思い入れを持つ映画ファンへの連帯が至る所に感じられたことは,テレビにも映画にも浸かっている私としてはこの上なく嬉しいことだった。ジョーがレコーディング時に突然トランペットが吹けなくなる展開もまた,明らかにスパイク・リーの失敗作としてほぼ彼のフィルモ・グラフィーから消去されつつある「モ・ベター・ブルース」からの拝借だろう。
そうした映画へのエールに加えて,中盤からはNHKの朝ドラも頻繁に登場しては,各々の時代の空気を画面に充填する役割を担っていた(レコーダーが普及して以降の朝ドラウオッチャーである私は,ほぼ知らないものばかりだったのだが)。

そして何より「ラジオ」の存在だ。物語を進めるエンジンとして機能していたことは勿論のこと,ドラマを飛び出して制作されたコラボ企画であるリアルラジオ講座「ラジオで!カムカムエブリバディ」の素晴らしさと言ったら!主題歌を歌うAIと天野ひろゆきに,実際にラジオ英会話の講師をしていた大杉正明先生のやり取りは,アプリを使ってカフェで聞いていた際に何度も吹き出してしまった。天野が執拗に連発した「それにしても,ジョーは一体いつになったら働くんだ?働けよ!」という問いに対して,「働かないアリ」もまた貴重な存在である,と答えて見せた藤本有紀の返し技に「あっぱれ!」を。
★★★★☆
(★★★★★が最高)


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1 コメント

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Unknown (あかんたれぶ〜)
2022-04-16 19:09:43
なんやこいつわ 駄文書いて良い気になるなよ
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