子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2022夏シーズンドラマレヴューN0.1:「石子と羽男」「初恋の悪魔」

2022年10月10日 19時07分06秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
「石子と羽男-そんなことで訴えます?-」
プロデューサー新井順子&演出塚原あゆ子(プラス山本剛義)という,野木亜紀子脚本の傑作群を生み出してきた「テレビドラマ界のスライ&ロビー」と私が勝手に呼んでいる鉄板コンビが手掛けた弁護士ドラマは,期待を裏切らない出来だった。有村架純という脂の乗った芸達者が中村倫也を引っ張り,雑然としたマチベン事務所に「私,失敗するかもしれませんので。というか,もう何度も司法試験に失敗してるので」的な魅力溢れる空間を作り上げた力量は,圧倒的だった。
毎回取り上げられる事件やトラブルが,庶民生活と地続きなものばかりでありながら,いずれにもドラマの題材としての緊張感と圧力をまとわせた西田征史の力量も優れていた。主人公二人の関係において,敢えて恋愛感情を排し,仕事を通した依存関係からやがて相互への敬意を伴う友情へと変質させていくプロセスは実にスリリングかつ心温まるものだった。エピソードの中では,ファスト映画を発信してページビューを稼いだ若者に向かって,でんでん扮する映画監督が,表現者としての本音を吐露する第3回が特に心に残る。
娘(有村)に敬語で接しざるを得ない過去を持つ父親役のさだまさしと,おいでやす小田のサポートもツボにはまって見事。石子が弁護士となった姿をフィーチャーした続編の制作を,強く希望。
★★★★☆

「初恋の悪魔」
「大豆田とわ子と三人の夫」に続く坂元祐二の新作は,推理劇+コメディ+シリアス+犯罪劇≒「初恋の悪魔」という,ほぼ前代未聞のフレームを携えて現れた。
その結果,坂元祐二フォロワー以外の,豪華キャストに惹かれて観始めた視聴者の多くは戸惑ってしまったのか,当然ながら視聴率は低空飛行に終始。かく言う私も当初は挑戦的な作風を上手く咀嚼できず,徐々に輪郭を表していく展開を必死に追いかけていくことと相成った。
悠日(仲野太賀)の兄の死が全体を貫くプロットとして機能するミステリーかと思いきや,多重人格だった星砂(松岡茉優)の過去や,その星砂のW人格と悠日と鈴之介(林遣都)との歪な「四角関係」,更に終盤には連続殺人事件と悠日の兄及び星砂の恩人との因縁が浮上してくるというジェットコースター的展開は,「カルテット」や「大豆田〜」にあった大変かつ複雑な人間関係だからこそ滲み出てくる人情の機微を味わうには,少々慌ただし過ぎた,というのが正直な感想。佐久間結衣や田中裕子の使い方にも一工夫が欲しかった。瀬戸カトリーヌも,石坂版「金田一耕助シリーズ」の加藤武になりそこねてしまったし。
とは言え,こうした上質かつチャレンジングなトライこそ,世界戦略で韓ドラに大きく水をあけられた日本のドラマが採るべき道であることは明白。更なるチャレンジを期待したい。
★★★★


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