質問:コーエン兄弟「トゥルー・グリット」のあの意志強固な女の子ヘイリー・スタインフェルドが,仇討ちという目的を失う代わりに,イケメン兄貴を持って難しいお年頃を迎えたらどうなるでしょう?
正解:たった一人の親友を兄に寝取られてしまい,自殺まで考えますが,相談に行った落ちこぼれ先生の脱力指導のおかげもあって,よろけながらも最後は自力で立ち上がります。
たったそれだけのお話なのに,脚本も書いた新人監督ケリー・フレモン=クレイグの「スウィート17モンスター」は,21世紀版ジョン・ヒューズと呼びたくなるような瑞々しさと痛々しさとを等量湛えた,実に魅力的なデビュー作となった。
決して恵まれているとは言えない容姿を充分に認識しつつ,何とか学校や家庭に立ち位置を確保すべく努力する平凡な女子高生。しかしその一方で,彼女は内なる葛藤やその過程で飛び散る汗は他人に知られたくないと悩む日々を過ごしている。自意識という自らが課したそんな負荷を分かち合ってくれていた,たった一人の親友が,悪気もなく成り行きとは言え,よりによって自分とは反対方向に自意識を膨らませている兄と寝てしまう。
フレモン=クレイグが作り上げた見事なまでに「痛々しい青春」シチュエーションは,あて書きかと思われるほど主人公のキャラクターにフィットしたスタインフェルドのクールを装った熱い演技で,見事に立体化されている。
一見冴えない担任教師(ウディ・ハレルソン)に向かって,秘書に「このハゲーッ!」と罵倒した豊田議員もかくやというような罵り言葉をぶちまけたかと思えば,歯科医の恋人に家庭があったことを知って落ち込む母親に「これでデートの度に歯ぐきを調べられることがなくなったんだから,良かったじゃん」と,まるで母娘が逆転したかのような優しい慰めの言葉をかける,といった複数のレイヤーを重ねることで生まれたリアルな「こじらせ女子高生」には,ノスタルジーで目が曇りがちな批評家のみならず,現役「こじらせ組」も拍手を送るに違いない。
ネイディーンを慕う中国系の同級生役,ヘイゼン・デトーが今年32歳を迎えると知って驚いたが,果たしてこれも人生≒青春を謳歌するのに実年齢は関係ない,というメッセージなのか。同じく間もなく56歳になるハレルソン先生が乳飲み子を育てる姿にも最大級の賛辞を送りたい。「ナチュラル・ボーン・キラーズ」,改心したようです。
★★★★☆
(★★★★★が最高)
正解:たった一人の親友を兄に寝取られてしまい,自殺まで考えますが,相談に行った落ちこぼれ先生の脱力指導のおかげもあって,よろけながらも最後は自力で立ち上がります。
たったそれだけのお話なのに,脚本も書いた新人監督ケリー・フレモン=クレイグの「スウィート17モンスター」は,21世紀版ジョン・ヒューズと呼びたくなるような瑞々しさと痛々しさとを等量湛えた,実に魅力的なデビュー作となった。
決して恵まれているとは言えない容姿を充分に認識しつつ,何とか学校や家庭に立ち位置を確保すべく努力する平凡な女子高生。しかしその一方で,彼女は内なる葛藤やその過程で飛び散る汗は他人に知られたくないと悩む日々を過ごしている。自意識という自らが課したそんな負荷を分かち合ってくれていた,たった一人の親友が,悪気もなく成り行きとは言え,よりによって自分とは反対方向に自意識を膨らませている兄と寝てしまう。
フレモン=クレイグが作り上げた見事なまでに「痛々しい青春」シチュエーションは,あて書きかと思われるほど主人公のキャラクターにフィットしたスタインフェルドのクールを装った熱い演技で,見事に立体化されている。
一見冴えない担任教師(ウディ・ハレルソン)に向かって,秘書に「このハゲーッ!」と罵倒した豊田議員もかくやというような罵り言葉をぶちまけたかと思えば,歯科医の恋人に家庭があったことを知って落ち込む母親に「これでデートの度に歯ぐきを調べられることがなくなったんだから,良かったじゃん」と,まるで母娘が逆転したかのような優しい慰めの言葉をかける,といった複数のレイヤーを重ねることで生まれたリアルな「こじらせ女子高生」には,ノスタルジーで目が曇りがちな批評家のみならず,現役「こじらせ組」も拍手を送るに違いない。
ネイディーンを慕う中国系の同級生役,ヘイゼン・デトーが今年32歳を迎えると知って驚いたが,果たしてこれも人生≒青春を謳歌するのに実年齢は関係ない,というメッセージなのか。同じく間もなく56歳になるハレルソン先生が乳飲み子を育てる姿にも最大級の賛辞を送りたい。「ナチュラル・ボーン・キラーズ」,改心したようです。
★★★★☆
(★★★★★が最高)