夢逢人かりそめ草紙          

定年退職後、身過ぎ世過ぎの年金生活。
過ぎし年の心の宝物、或いは日常生活のあふれる思いを
真摯に、ときには楽しく投稿

『バレンタインの日』、高齢者の私は恥ずかしながら『板チョコ』3枚となり、微苦笑させられ・・。

2012-02-14 10:00:34 | 定年後の思い
私は東京郊外の調布市に住む年金生活の67歳の身であるが、
世田谷区と狛江市に隣接した調布市の片隅に住み、結婚前後の5年を除き60年を超えている。
そして私たち夫婦は子供に恵まれなかったので、我が家は家内とたった2人だけの家庭であり、
雑木の多い小庭に古ぼけた一軒屋に住み、お互いの趣味を互いに尊重して、日常を過ごしている。

今朝、いつものように6時半に2階の寝室で目覚め、ぼんやりと一階の居間に下り立つと、
居間の食卓テーブルに、ひとつの包があり、その下に便箋で、
《 いつもコーヒーを淹れて下さり
            感謝致します
  これからも茶坊主をお願いしますね 》

このように家内の特有の女文字で綴られて、私は読みながら、苦笑したのである・・。

そして包を開けると、板チョコが3枚入っていた。
http://catalog-p.meiji.co.jp/products/sweets/chocolate/010101/07024.html
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私が定年前の現役サラリーマン時代は、家内からは程々に高価なハート・マークのような品を頂いたが、
定年退職後の年金生活になると、なぜかしら板チョコが一枚となったのである。
そして一昨年に高齢者入門の65歳となり、このお祝いのせいか、
ミルクチョコレート、ブラックチョコレート、ホワイトチョコレートの板チョコ3枚に昇格した。

日常の買い物担当の私は、最寄りのスーバーで買い物をしている時、
昨今ときおり、添付表示したブラック・チョコレートを買い求めて、食べたりしているので、
3種類のチョコからブラック一色に変わったのかしら、微苦笑したりした。

そして家内の便箋に綴られたメッセージの《茶坊主》は、
年金生活を始めた時、家内は掃除、洗濯、料理などをして貰うので、
肩身が狭くなった私は、せめて日常の買い物ぐらいは私がしなければという思いで専任者となり、
その上に家内の飲むコーヒー、煎茶などを朝夕はもとより日中のひとときでも、
私が淹れて家内の前に置く茶坊主に徹してきている。

このような状況もあるので、今回の板チョコは義理チョコなのか感謝チョコなのか、
私には解らないが苦笑したりした。

しかし私は家内と結婚して以来、幾たびか家内に
私の少年期の板チョコの思いでを伝えたりしているので、
年金生活の今は、ふさわしいひとつと思ったりした。


私が1954(昭和29)年の小学3年生になったばかりの時、私を可愛がってくれた祖父が死去した。
前年に祖父の長兄だった父が亡くなり、跡継ぎを失くし、
その上に祖父は病気となり、落胆した表情が少年の私さえ感じていた。

そして祖父、父が中心として、程ほどの広さの田畑を耕し、
多忙な時期は小作人だった人たちの助けも借りて農業をしていたが、
大黒柱の2人を失った生家では、長年の農業の技量の伝承が絶たれてしまったので、没落しはじめた・・。
母、父の末妹の叔母、長兄、次兄、私、そして妹のふたりが残された家族となり、
生活は困窮し始めた・・。

このような状況下の時、祖父の妹に当たる叔母が、
何かと不憫に思い心配されて、とても私たちが日常生活で買い求めることのできない菓子などを持参してくれた。
その上、妹の2人には、何かと品を頂き、ときにはお揃いの洒落た下駄などを頂戴した。

叔母が帰路する時、私は駅までの15分ぐらいの町道を叔母と共に歩いて、駅で見送った。
この少し前、叔母は私に、
『チョコレートでも買ってねぇ・・』
と私は百円玉ひとつを頂いた。

私は小汚い身なりであったが、駅前の商店街の菓子屋に行き、
まばゆい包装紙に包まれた一枚の板チョコレートを買ったりした。

そして私は駅前から急いで帰宅し、妹のふたりと割って食べたりした。

しかし恥ずかしながら告白するが、正確には私は少し大き目の3分の1であった・・。

あの家も貧乏になった、と少年の私さえ、近所の人たちの風の噂を聴こえたりしていたが、
この時ばかりは妹2人と食べあった板チョコは、この時は何かしら貧乏のことも忘れさせてくれた。


こうした体験を秘めた私は、たった一枚の板チョコレートであるが、
昨今のベルギー産の高級品、宇治抹茶生チョコなどのチョコレートより、
遥かに美味しく感じられるのである。

そして私にとっては、たった一枚の板チョコレートでも人生観を変えることがある、
と思ったりしている。


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コメント (3)
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