☆「美味しいもの」ほど危ない
健診の痛風項目と言ったら、尿酸値(UA)をおいて他にありません。
中高年サラリーマンにとって、もっとも気になる数値のひとつでもあります。
高いと痛風発作のリスクが上がるからです。
尿酸は、DNAのプリン塩基(DNAの主成分のひとつでプリン体とも呼ばれる)の
代謝産物で、血中に溶け込み、腎臓から尿と一緒に排泄されます。
しかし供給量が排泄量を上回ると、次第に血中濃度が上がってきます。
尿酸の主な供給源は、プリン体を多く含む食品です。
ご存知のとおり、その多くが魚介類や肉など「美味しいもの」で占められています。
しかもビールなどにも、たっぷり含まれているため、
焼き鳥とビールなどは、かなり危険な組み合わせと言えます。
☆血液を弱アルカリ性に保つ食事
尿酸の排泄量は、血液のpH(酸性・アルカリ性の度合い)によって大きく左右されます。
正常な血液はpH7.4前後と、ごく弱いアルカリ性に保たれていますが、
ほんの 少しpHが下がる(酸性側に振れる)だけで、
尿酸が血液に溶けにくくなるため、腎臓からの排泄量が減ってしまいます。
血液のpHは、主に食事の内容によって変化します。
血液を弱アルカリ性に保つためには、
野菜、果物、海 藻、キノコなどが良いと言われています。
また仕事のストレスや、過度の運動やダイエットで、
血液のpHバランスが崩れることもあります。
とくに筋トレは要注意です。
尿酸は、新陳代謝やエネルギー代謝が活発になると、筋肉で大量に作られるからです。
ほかにもサウナやスポーツで大量の汗をかくと、
水分が減った分だけ血液が濃縮されて、一時的に尿酸値が上がります。
☆患者の95パーセントは男性。最近は20代の発症も
尿酸値が高い状態が続くと「高尿酸血症」と呼ばれ、
痛風発作のリスクが上がってきます。
腎臓で排泄しきれない余分な尿酸は、
血液中のカルシウムと結合して尿酸カルシウムとなり、結晶を作り始めます。
結晶は比重の関係から、下半身に沈んでいき、
足の先端(とくに親指の付け根)や踵(かかと)、膝などの関節に沈着するのです。
それがある程度溜まってくると、白血球が外敵と見なして攻撃を開始するため、
激しい炎症が生じて、激痛を引き起こす(痛風発作)というわけです。
患者の95パーセントは男性です。
以前は中高年が罹る病気でしたが、最近は20代、30代でも発症するひとが増えてきています。
また女性の患者も徐々に増えていると言いますから、
女性だから安心というわけにはいきません。
☆尿路結石と合併すると、我慢の限界を超える痛みが
尿酸カルシウムが腎臓に沈着すると、腎機能の低下が起こります。
尿路に沈着すれば、尿路結石となって七転八倒の痛みに襲われることがあります。
なにしろ尿路結石は、あらゆる病気のなかで最強の痛みとも言われています。
尿路結石は、痛風患者の数パーセントから10パーセント以上で合併するそうです。
痛風発作と尿路結石に同時に襲われたら、我慢の限界を超える痛みかもしれません。
日本人間ドック学会の基準値は、男女共通で、以下のようになっています。
単位はmg(ミリグラム)/dL(デシリ ットル)です。
☆発作が起きるかどうかは体質次第だが……
ただし痛風発作が起きるかどうかは、
尿酸値だけでなく、個人の体質などにもよります。
7を超えた程度で発作が起きるひともいれば、10でも大丈夫というひともいま す。
病院では尿酸値が7.1~8.9のひとに対しては、
まだ痛風発作を経験していなければ生活指導で経過観察、
すでに痛風や尿路結石を経験していたり、腎機能の低下の兆しが見える患者に対しては、
尿酸値を下げる薬を処方するのが一般的です。
一方、尿酸値が2.0以下になると「低尿酸血症」と呼ばれます。
遺伝的に、腎臓からの尿酸の排泄が活発なひとで、
男性の0.2パーセント、女性では0.4パーセントが該当します。
とくに自覚症状はなく、普通に暮らしていれば不都合はありませんが、
他のひとと比べて、なぜか尿路結石になりやすいと言われています。
永田 宏(長浜バイオ大学メディカルバイオサイエンス学科教授・学科長)・・》
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。