春の花を着けず、全くの裏作の八朔に、微かに色付いた二つの実を見付けた。多い時は180個ほど実ることもあるのに……悲しくなるほどに小振りではあるが、今年の2個は貴重品である。
ツワブキの黄色が、朝日を眩しく照り返していた。
1月の運転免許証更新を前に、お盆明けに「認知度検査・後期高齢者講習通知書」が届いた。昨今の高齢者のブレーキとアクセルの踏み違いによる事故多発に伴い、今年3月に道路交通法が改正され、2日がかりの検査・講習になった。前回懲りているから、即日自動車学校に予約を入れたが、8月半ばの時点で既に空いているのは、一番早くて10月30日。高齢になるほど車が必需となる生活環境だから、運転免許の自主返納もままならず、年々講習の日取りを確保することが難しくなっている。
認知度検査は、惨めになるような内容である。まず、腕時計を外すよう指示され、壁の時計にも幕が下ろされる。「氏名、生年月日、性別、年齢を書いてください。では、今は何年・何月・何日・何曜日の何時・何分頃ですか?」を書かされる。『時間の見当識』のテストである。
次に「16種類の絵をパネルで示しますから覚えてください」
そして「丸い時計の絵を書いて、数字を入れてください。10時20分の位置に、長針と短針を書いてください」……『時計描画』のテストである。
その後で「さっき見た16の絵を思い出して、全て書いてください」一番悩ましい『手がかり再生』のチェックである。
みんなが頭を抱えて10分前の記憶を引き出そうとするが、これがなかなか出てこない。14個まで思い出したところで、時間が尽きた。
最後に、「武器、台所用品、花、動物、虫……」などとヒントが書かれた用紙が配られ、何とかすべてを思い出すことが出来た。
30分待機して、「認知症検査結果通知書」が配られる。無念、96点!(49点以下だと、「認知症に関する医師の診断」を受けなければならず、「認知症」と診断された場合は運転免許の取り消し・停止処分となる)
これで650円。
結果によって、次の「後期高齢者講習」の日程が通知された。幸い早く申し込んでいたから、3日後の11月2日に決まった。遅れて申し込んだ人は、1月2月まで待たされていた。
3日後、再び講習に赴いた。30分の運転適性診断、夜間視力、動体視力検査……覚悟はしていたが、動体視力と夜間視力の衰えを実感させられた。目が疲れやすいから、黄昏時・夜間・雨の日の運転は自粛しているが、それは正解だった。
運転実技は、車線変更・一時停止・徐行・車庫入れ・Sカーブなど何の問題もなく、試験官が唯一助言してくれたのは「一時停止を、あと1秒長くした方がいいですよ。最近の警察は、3秒以上止まらないと、停止したと認めないことがありますから」
これで4650円。
いろいろと高齢者に厳しい世の中になってきた。歳は取りたくなくても取っていく。しかし、まだまだ枯れ落葉の悲哀を舐めるつもりはさらさらない。ただ、傲岸不遜・したり顔の首相の顔を見ないで済むところで、のんびり余生を過ごせたらどんなに幸せだろう!……そんな思いで、色付き始めた木々を見上げていた。
一番の冷え込みの朝、ハナミズキの葉は散り終り、キブシと蝋梅の落葉が始まった。
木枯らし吹く季節が、もうそこまで来ていた。
(2017年11月:写真:ツワブキの花)