「物資等が届かず多くの皆様にご迷惑をおかけしています」17日早朝、熊本市の市長がツイッターでそうつぶやいたという。
政府は、食料70万食を17日中に被災地に届けると表明、さらにその日に90万食の供給も始めている。また、九州・山口9県で作る被災地支援対策本部も熊本県からの要請を受け、飲料水や毛布などを届けた。しかし、受け入れ先の1つである県庁ロビーは企業からの支援物資も含め段ボールが積み上がっていると新聞が伝えていた。
1995年の阪神大震災、2004年の新潟県中越地震、2007年の新潟県中越沖地震、そして記憶に新しい2011年の東日本大震災と、近年でもこれだけ大規模な地震が発生し、大きな被害を受けてきているというのに支援物資が集積所に山積みになったまま、肝心の避難所や被災者の手元に届かないという問題が繰り返されている。その原因として道路事情の悪さと行政の混乱、そして人手不足等が挙げられている。
都市防災が専門の宮崎益輝神戸大名誉教授によると、国や県や自衛隊は大量に物資を被災地に送るのは得意だが、避難者1人ひとりの要望に合わせるのは苦手。もっと民間に任せるという発想が必要だと指摘している。
そこで民間の宅配業者やボランティアの活用が言われているわけだが、何より重要なのは自治会・町内会の自主防災組織の充実だと考える。
いざという時に備え、役割分担を決めておく。例えば、集積場所まで支援物資を受け取りに行く担当はAさんとBさんというように。大きな避難所になれば、複数の自治会・町内会が混じることになるだろうが、すべての自治会・町内会にその担当者を置いておけば、その役割を担っている者がそこにいる確立も高くなる。
また、避難生活が長くなってくると災害による直接的な死亡ではなく、疲労などの間接的な原因で亡くなる懸念が指摘されている。特に持病を抱えている方や高齢者の方々はリスクが大きい。
着の身着のまま家を飛び出した人は、薬はもちろん「お薬手帳」など持ち出すほどの余裕はない。それを、自治会・町内会で特に高齢者の方々の持病や服用している薬などを把握しておけば、市町の職員や医療機関に円滑につなぐことが出来る。
いずれにしても、行政に何もかも任せて頼っていても、隣のおばあちゃんやおじいちゃん、それに地域の幼い子供たち一人一人の命を守ることは難しい。地域の住民を守れるのは、その地域に暮らす住民そのものなのだ。
いざという時にも日常でも、身近で起こる問題を解決できるのは、そこに暮らす私たち自身であることを肝に銘じたい。