昨年の11月9日にWBA世界フライ級のベルトを返上していた世界3階級制覇の井岡一翔選手が昨日、記者会見し、正式に引退したことを明らかにした。
井岡選手の父親のベルト返上に関する記者会見で、引退もあり得るとの話が出ていたようだったが、まさか現実のものになるとは思ってもいなかった。
引退を決意した経緯について、念願だった3階級制覇を果たしたところで引退しようと思ったが、その後、防衛を重ねていく中で、ボクシング以外の新たな目標が見つかり、昨年4月の5度目の防衛戦の前に引退の意志が固まったと語っている。
しかし、引退後のビジョンを問われると今は言えないと言葉を濁した。
また、引退に当たって父親でもあるジムの会長とはどんな話をしたのかとの問いには「自分の気持ちを伝えて報告しました。分かったと返答がありました」と、父親との微妙な距離感を感じさせる答だった。
一方、「3階級制覇も妻の存在なしには達成できなかったですし、防衛を続けられたのも妻の後押しがあったからです」と昨年5月に結婚した妻の存在の大きさを隠そうとはしなかった。
井岡選手は現在28歳、プロのキャリアは23戦して22勝(内13KO勝ち)1敗、オーソドックススタイルから多彩なコンビネーションブローを繰り出し、高いディフェンステクニックを持つ傑出したボクサーである。
今回の引退表明について、井岡選手本人が決断したことだろうから、それについてとやかく言う筋合いなど全く無い。
それでも一ボクシングファンとしては、とにかく現役世界王者で、日本人初となる4階級制覇も視野に入れていた稀に見る魅力的なボクサーの引退は何としても惜しまれる。