春じゃはる

　窓を開けると春の風が舞い込んできた。ああ、春だ！コートも要らないし、セーター1枚で十分だ。家の中は窓を開け放しても寒くない。でも、天候に身体がついていかないのかだるい。

　ひな祭りには祖母が五目ちらしを作っていた。五目どころか十目くらい材料があった。家族や家で働いている人の分にご近所三軒分くらい作る。その煮物が台所に所狭しと並んでいた。最後に上に乗せる卵の黄色と紅しょうがの赤とさやいんげんの黄緑がきれいだったのを覚えている。今日は、インスタントだが五目すしを作ってみた。彩がうまくいったので春らしくなってうれしかった。こうしてつくってみると、祖母や母の愛情がわかる。もちろん今までも作ってきてはいたが、ひとつひとつのことにここまで愛情を込めることができなかった。

　心理学で学んだ話だが、人は子供のころに（3歳くらいまで）うけた愛情でその後の人生を乗り切っていくという説がある。また、アタッチメントといって養育者の愛情で子供は安心して一人で遊ぶことができるようになるという。いまは、母親の姿がみえないと不安が強くなる子供が多いとも聞く。きっと私は3歳までにたくさんの愛情をたくさんの人から受けることができたのだろう。ここまで馬鹿がつくほどお人よしで生きてこれたのは。

　夜は少し風が強いが、満月が出ていた。あなたは見ていましたか？