静かに時の止まったような喫茶室で庭を眺めていました。千葉から見えたご夫妻と。「1年に1回だけど、もう5年、通っているね。」とF氏。ここに来るのは、3年前亡くなったS氏を偲んでです。こうして、F氏の奥さまを交えると4人きょうだいのようです。まだ同じものを懐かしむことができる世代です。
あっ!と、黒壁の商店街で見かけたH氏そっくりの人。いやそんなわけはないわ。その人の姿は20代だけど、H氏はもう40代のはず。そんな間違いが今日は許せる気がします。そうです、このごった煮みたいな、何でもありの街では。「何でもありよね。わたしも長浜にこようかしら」とF氏の奥さま。私に似ているわ。
「君がふと冷たくないかと取りてより 絡ませやすき指と指なり」(角倉羊子)
昨日、俵万智の「あなたと詠む恋の歌百首」の中で見つけました。今の季節でないと合わないかもしれませんね。この頃、歌は詠めません。俵万智さんは、恋の歌が詠めるのは、失恋とか愛する人を亡くしたとか、幸せの絶頂でないとなかなか詠みにくいと。たしかにこの安心感からは歌は出ないかもしれません。
人は、いろいろなものを背負って歩いて行くものですね。でも、悲しみも新しい喜びで少しは消えますようにと祈ります。