■ストーリ
小学校六年生になった長男の僕の名前は二郎。父の名前は一郎。
誰が聞いても「変わってる」と言う。父が会社員だったことはない。
物心ついたときからたいてい家にいる。父親とはそういうものだと
思っていたら、小学生になって級友ができ、ほかの家はそうでは
ないらしいことを知った。父はどうやら国が嫌いらしい。
むかし、過激派とかいうのをやっていて、税金なんか払わない、
無理して学校に行く必要などないとかよく言っている。家族で
どこかの南の島に移住する計画を立てているようなのだが…。
型破りな父に翻弄される家族を、少年の視点から描いた、長編大傑作。
■感想 ☆☆☆☆
「東京タワー」を貸してくれた同期がセットで貸してくれた作品。
中盤までは眉をひそめ、肩に力を入れながら読み進めていた。
主人公もその友人たちも魅力的で生き生きと小学生生活を
楽しんでいる。その描写が鮮やかで読み進めるのに苦労はいらない。
だが、主人公の父親の言動がどうにも苦手だった。
元来、あくの強い人物は苦手だ。
体制に反発せずにはいられない父親が繰り出す
論理展開は、一件筋が通っているように見えるが
私には屁理屈としか取れなかった。
主人公を襲う不良少年とのいざこざも
理不尽極まりないものなのに、解決の糸口を見出せず
読んでいて辛い気持ちになった。
面白いけれど辛い。
そんな気持ちで読み進めていると、第一部の中盤から
飛躍的に話が動き始める。
畳み掛けるように、勃発する事件。
巻き込まれる主人公。
事件を更に大事件へと拡大していく父親。
その事件を収束させるため、主人公の両親が選択した解決策は
信じられないぐらい破天荒で子供たちの人生を大きく変える。
沖縄の離島に場所を移した第二部は
読み進めるのが辛かった第一部と異なり
肩の力を抜いて、爽快感を味わいながら
読み進めることができる。
「私有財産」という概念を持たずに
助け合いの精神で生きている島の人々。
東京という人工的な土地を離れ
自然豊かな島で、開放された父親は、
第一部とまったく変わっていないのに
たくましくかっこよく頼りがいのある父親に見える。
「常識」や「制度」「規則」でがんじがらめになった社会では
到底気付けない彼の魅力が、島の太陽の下で解放される。
そう、私が父親一郎に対して、眉をひそめずには
いられなかった感情は、その窮屈な規則の中で私が
生きているからこそのコンプレックスなのだろう。
私は一郎がはねつけた秩序の中で生きているから。
義務を面倒だと感じながらも、ひとりで生きていくと
義務をはねつけるほどの勇気も根性も持っていないから
だからこそ、一郎に対して苛立ちを感じてしまう。
もちろん、一郎の言い分は極端だ。
彼の言い分には、少しおかしいと思うところもある。
だからこそ、ラスト近くで校長先生が島の子供たちに伝えた
メッセージは心にしみた。
「忘れてはいけないことは、あなたたち小学生の
本分は勉強だということです。
大人の問題に首を突っ込んではいけません。
すべての大人にはいい部分と悪い部分があります。
あなたたちはそれに振り回されてはいけません。
もしも疑問に感じたり、これはおかしいと思うようなことが
あったら、それを忘れないでください。
そして大人になったとき、自分の頭で判断し、
正義の側につける人間になってください。」
離島問題、沖縄の歴史、共産主義について、
学生運動の甘さなど、深刻で難しい問題をたくさん取り入れつつも、
爽快に読み飛ばせ、読後は圧倒的に爽やかだ。
小学校六年生になった長男の僕の名前は二郎。父の名前は一郎。
誰が聞いても「変わってる」と言う。父が会社員だったことはない。
物心ついたときからたいてい家にいる。父親とはそういうものだと
思っていたら、小学生になって級友ができ、ほかの家はそうでは
ないらしいことを知った。父はどうやら国が嫌いらしい。
むかし、過激派とかいうのをやっていて、税金なんか払わない、
無理して学校に行く必要などないとかよく言っている。家族で
どこかの南の島に移住する計画を立てているようなのだが…。
型破りな父に翻弄される家族を、少年の視点から描いた、長編大傑作。
■感想 ☆☆☆☆
「東京タワー」を貸してくれた同期がセットで貸してくれた作品。
中盤までは眉をひそめ、肩に力を入れながら読み進めていた。
主人公もその友人たちも魅力的で生き生きと小学生生活を
楽しんでいる。その描写が鮮やかで読み進めるのに苦労はいらない。
だが、主人公の父親の言動がどうにも苦手だった。
元来、あくの強い人物は苦手だ。
体制に反発せずにはいられない父親が繰り出す
論理展開は、一件筋が通っているように見えるが
私には屁理屈としか取れなかった。
主人公を襲う不良少年とのいざこざも
理不尽極まりないものなのに、解決の糸口を見出せず
読んでいて辛い気持ちになった。
面白いけれど辛い。
そんな気持ちで読み進めていると、第一部の中盤から
飛躍的に話が動き始める。
畳み掛けるように、勃発する事件。
巻き込まれる主人公。
事件を更に大事件へと拡大していく父親。
その事件を収束させるため、主人公の両親が選択した解決策は
信じられないぐらい破天荒で子供たちの人生を大きく変える。
沖縄の離島に場所を移した第二部は
読み進めるのが辛かった第一部と異なり
肩の力を抜いて、爽快感を味わいながら
読み進めることができる。
「私有財産」という概念を持たずに
助け合いの精神で生きている島の人々。
東京という人工的な土地を離れ
自然豊かな島で、開放された父親は、
第一部とまったく変わっていないのに
たくましくかっこよく頼りがいのある父親に見える。
「常識」や「制度」「規則」でがんじがらめになった社会では
到底気付けない彼の魅力が、島の太陽の下で解放される。
そう、私が父親一郎に対して、眉をひそめずには
いられなかった感情は、その窮屈な規則の中で私が
生きているからこそのコンプレックスなのだろう。
私は一郎がはねつけた秩序の中で生きているから。
義務を面倒だと感じながらも、ひとりで生きていくと
義務をはねつけるほどの勇気も根性も持っていないから
だからこそ、一郎に対して苛立ちを感じてしまう。
もちろん、一郎の言い分は極端だ。
彼の言い分には、少しおかしいと思うところもある。
だからこそ、ラスト近くで校長先生が島の子供たちに伝えた
メッセージは心にしみた。
「忘れてはいけないことは、あなたたち小学生の
本分は勉強だということです。
大人の問題に首を突っ込んではいけません。
すべての大人にはいい部分と悪い部分があります。
あなたたちはそれに振り回されてはいけません。
もしも疑問に感じたり、これはおかしいと思うようなことが
あったら、それを忘れないでください。
そして大人になったとき、自分の頭で判断し、
正義の側につける人間になってください。」
離島問題、沖縄の歴史、共産主義について、
学生運動の甘さなど、深刻で難しい問題をたくさん取り入れつつも、
爽快に読み飛ばせ、読後は圧倒的に爽やかだ。