サンフランシスコから戻ってくる飛行機で、
しばらくぶりに酔った。
私は、よく車酔いする子供だった。
父の車でも酔って吐いたが、観光バスの独特の匂いがダメで、
遠足は好きじゃなかった。
自分で車を運転するようになり、車では酔わなくなったけれど、
飛行機と船、遊園地の乗り物は相変わらず酔う。
遊園地と船は、乗らない選択ができるが飛行機はそうもいかない。
乗っている時間の長さではなく、乱気流と高度を下げていくときに酔うので、
日本国内線でも酔い止めは欠かさず飲んだ。
ただ、酔い止めはやたらと眠くなるため、目的地に着いてからも睡魔との戦いで、
それはそれで具合が悪い。
車酔いは思い込みだという人もいる。
私も、そうかもしれない、と思う。
過去の酔った記憶や、酔うことを意識しすぎることがよくないのかもしれない。
ということは、「酔わない」記憶が「酔った」記憶を更新するまで
薬を飲まずに乗ってみることにした。
薬なしで乗ってみると、これが酔わなかった。
最初は非常用に酔い止めを持っていたが(酔ってからでは遅いのだけど)
それも持たなくなるほど、酔わなかったのだ。
やっぱり思い込みだったんだーー‼
と喜ぶ頃、日本から戻る時に乱気流で酔った。
しかしその次の時には大丈夫で、あれは特別の乱気流だったのだと思った。
それが今回、ひどく酔った。
ホノルルに着陸する時、高度がグーっと下がるたびに
胃の奥からグーっとこみあげるものがある。
船酔いが、陸に降りてしまえば治るように、飛行機も着地さえすれば治る。
近づいてくる陸地を見ながら、あと少し、あと少しと自分を励ます。
ところが、あと少しで着陸かと思ったら再び高度を上げるではないか。
何かのアクシデントで滑走路が使えず、あと8分かかるとアナウンスがあった。
酔いに耐えている時の8分がどんなに長いか、これは酔ったことがある人しかわからない。
冷たい風を当てて、ゆっくりと呼吸する。
嫌な汗がじんわりとにじみ出てくる。
何度もこみ上げてきては、なんとかやり過ごす。
隣で呑気に映画を見ている夫が憎らしくさえある。
どうして全く酔わない人がいるんだろう。
30歳ぐらいの時に、眩暈がして病院に行った。
検査の末、三半規管の機能が弱いと言われた。これは生まれつきのもので、治しようがない。
「私もそうなの。上手に付き合っていくしかないのよ」
一人の看護師さんがそう言った。
酔う理由はわかったけれど、酔い続けるのは嫌だから気力で乗り越えようとしているのに、
ひとたび酔ってしまうと、その具合の悪さにウンザリする。
8分が1時間にも感じられた頃、ようやく ガタン と着陸した振動があった。
そうなると、ついさっきまでこみ上げてきたものは、嘘のように引いて
地に足がついていることのありがたさが身に沁みる。
気力じゃダメかも。
今はそんな弱気になっている。
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しばらくぶりに酔った。
私は、よく車酔いする子供だった。
父の車でも酔って吐いたが、観光バスの独特の匂いがダメで、
遠足は好きじゃなかった。
自分で車を運転するようになり、車では酔わなくなったけれど、
飛行機と船、遊園地の乗り物は相変わらず酔う。
遊園地と船は、乗らない選択ができるが飛行機はそうもいかない。
乗っている時間の長さではなく、乱気流と高度を下げていくときに酔うので、
日本国内線でも酔い止めは欠かさず飲んだ。
ただ、酔い止めはやたらと眠くなるため、目的地に着いてからも睡魔との戦いで、
それはそれで具合が悪い。
車酔いは思い込みだという人もいる。
私も、そうかもしれない、と思う。
過去の酔った記憶や、酔うことを意識しすぎることがよくないのかもしれない。
ということは、「酔わない」記憶が「酔った」記憶を更新するまで
薬を飲まずに乗ってみることにした。
薬なしで乗ってみると、これが酔わなかった。
最初は非常用に酔い止めを持っていたが(酔ってからでは遅いのだけど)
それも持たなくなるほど、酔わなかったのだ。
やっぱり思い込みだったんだーー‼
と喜ぶ頃、日本から戻る時に乱気流で酔った。
しかしその次の時には大丈夫で、あれは特別の乱気流だったのだと思った。
それが今回、ひどく酔った。
ホノルルに着陸する時、高度がグーっと下がるたびに
胃の奥からグーっとこみあげるものがある。
船酔いが、陸に降りてしまえば治るように、飛行機も着地さえすれば治る。
近づいてくる陸地を見ながら、あと少し、あと少しと自分を励ます。
ところが、あと少しで着陸かと思ったら再び高度を上げるではないか。
何かのアクシデントで滑走路が使えず、あと8分かかるとアナウンスがあった。
酔いに耐えている時の8分がどんなに長いか、これは酔ったことがある人しかわからない。
冷たい風を当てて、ゆっくりと呼吸する。
嫌な汗がじんわりとにじみ出てくる。
何度もこみ上げてきては、なんとかやり過ごす。
隣で呑気に映画を見ている夫が憎らしくさえある。
どうして全く酔わない人がいるんだろう。
30歳ぐらいの時に、眩暈がして病院に行った。
検査の末、三半規管の機能が弱いと言われた。これは生まれつきのもので、治しようがない。
「私もそうなの。上手に付き合っていくしかないのよ」
一人の看護師さんがそう言った。
酔う理由はわかったけれど、酔い続けるのは嫌だから気力で乗り越えようとしているのに、
ひとたび酔ってしまうと、その具合の悪さにウンザリする。
8分が1時間にも感じられた頃、ようやく ガタン と着陸した振動があった。
そうなると、ついさっきまでこみ上げてきたものは、嘘のように引いて
地に足がついていることのありがたさが身に沁みる。
気力じゃダメかも。
今はそんな弱気になっている。
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