新しい靴を履いて職場に行ったら、踵のうしろに靴擦れができた。
オフィス備品の絆創膏を貼っていると、同僚が入ってきた。
「Oh! You break them in!」
「?」
「Break them in ていうのはね」
同僚の説明によると、
新しい靴は最初は靴擦れができるが、履いているうちに足に合ってくる、というようなことであるらしい。
日本語だとなんだろう、靴慣らし、とでもいうのか。
コツコツとテキストで英語を勉強する根気がない私は、
こんなふうに、人が話すのを覚えて真似して暮らしている。
だから、I have を短縮してI've と言っていてもわからずに、
haveを抜かして言っていることも多いだろうが、なんとなくそれはそれで通じてしまうので、
書く段になったらもう、てんでダメ。
そうそう、というふうな相槌としてよく使う
I know
も、
そりゃ私が悪かった、という
My bad
も、
転ばぬ先の杖、というときの
Better safe than sorry
も、
すっころんじゃってさ、というときの
I ate it
も、テキストにはのっていないのではないか。
理論だてて物事を進めるのが苦手な私は、こうして雰囲気でふわーっとするのを得意とする。
ハワイに来たころは、話すよりも書くほうがずっと楽だったのが
まるきり反対になってしまったのも無理はない。
しかし、単語はひとつでも多く知っているほうがいい、とは思う。
ただし受験用単語ではなく、生活単語。
医療保険会社に問い合わせの電話をしていたときのことだ。
インカムの状態を調べるのに、私と夫の給与の紙をスキャンして送るということになった。
そのとき、相手が聞いた。
「Do you have 〇X△■?」
「すみません、今、なんて?」
「Do you have 〇X△■?」
3回も4回も聞き返した。
最初はフェイスブックかと思った。フェイスパックにも聞こえた。
ペイズアップ、とも聞き取れる。
「あなたのいう〇X△■の意味がわからない」
と正直に言ったら、
相手は諦めたか、とにかく給与の紙を送ってね、といって話は終わった。
その話を、翌日、ジュディスの家に遊びに行ったときに話した。
じっと聞いていたジュディスが、
「それってもしかしたら ペイスタブ のことじゃない?」
と言う。
「なんじゃそれは?」
「給与の内訳のことよ」
知らなかった、そんな言葉・・・・・
どんなに聞き取れたとしても、その言葉の意味を知らなかったら意味がない。
言い換えれば、その言葉を知っていたら、ちゃんとは聞き取れなくても、
その言葉かもしれないという想像がつく。
私のように、半分以上想像で聞きとっているような未熟者は、単語をどれだけ知っているかにかかっているともいえる。
単語の本は持っているけど、それは受験用で、
ハッキリ言って受験用の難しい単語なんか、あまり使うことはない。
生活に根差した単語、ねえ・・・・
そう思いつつも、こうして壁にぶち当たって恥をかいて、1個ずつ覚えてゆくという、
効率悪すぎのやり方で日々お茶を濁している。