佐佐木幸綱選
石狩の河口に架かる大橋を四肢もて渡るきたきつねかな 札幌市 堺隆
いつもより長い髭剃る休み明け世との繋がり戻る瞬間 尾道市 森浩希
一首目、キタキツネの姿が目に浮かびます。これから冬に向かい、彼らにとっては厳しい季節。がんばってほしいと思います。二首目、作者はリモート業務ではない仕事のようです。もしかしたら、医療関係や介護関係かもしれません。コロナ感染予防に厳しい仕事に戻る緊張感を想像しました。社会とつながるというのも、大変なことです。つながらないのも大変だけど・・。
高野公彦選
ザリガニを小枝とスルメで釣って見せ孫に伝えるアナログ技術 堺市 蟬正敏
コロナでも植木は伸びてくれるから助かりますと庭師は一服 東京都 村上ちえ子
一首目、デジタルやリモートなど、現実味の薄くなった社会で、アナログ技術こそ、本来の大切なものなんじゃないかと共感しました。二首目、生き物は人間も含め、変化する、成長する。植木屋さんの仕事は、目の前に樹木がないとできませんよ。外の作業だから、三密じゃないしね。
永田和宏選
唐松の黄葉始まりあめ色の佐久の地酒の沁みわたる秋 神奈川県 吉岡美雪
栗おこわ炊いたから来てとはまだ言えぬ新たな日常手さぐりの今 東京都 鹿野文子
噂ではもうすぐ終わる紙の本、紙魚(しみ)は居場所を失くしてしまう 中津市 瀬口美子
一首目、酒好きにはたまらない歌ですね。佐久の地酒は、酒蔵が11もあるので、どこでしょうか、いいなあ。二首目、GoToトラベルとはいっても、正直なかなか旅行は厳しい状況です。現実に行き来出来ないのは、つらい。栗おこわをクール便で送るのも面倒、ですよね。そういえば、NHKの家族に乾杯も、なかなか新規で番組収録できません。家族で賑やかに密になって歓談することが、今ではできなくなってしまいました。こんな社会になるなんて、新型コロナは恐ろしい・・。三首目、紙の本は絶対になくなりません!と、私は思います。電子書籍なんて、つまんない。ページをめくって読むのが本の醍醐味だし、特に辞書はそうです。ぱらぱらめくって、必要じゃないところを読むのがいいんじゃないですか。古い本をめくると、確かに小さな虫がいましたよね、懐かしいなあ。父の書斎で本を読んでいた時、そんなことがありました。上の本が亡くなるなんて、ただの噂です。すべてデジタルの世界には、私は断固、反対!だって、人間はアナログなんだから。
馬場あき子選
バチバチとストーブの薪のはずるおと友のようだとほほえむおうな 盛岡市 山内仁子
スーパーに入りたる熊を「駆除」せりとニュースは伝う「射殺」と言わず 観音寺市 篠原俊則
「加齢です」「老人性です」と言はるれば生きてる証しと痛みを堪らふ 川口市 春山ふみ子
一首目、寂しげには見えない、なんだか暖かくなる情景です。二首目、先日は夕刊に、ツキノワグマを追いかけている写真家の方の記事が載っていました。私はもしかしたら、前世は熊だったのかもしれません。動物の中で、熊や猫にはものすごく共感してしまうのです。ほんの子熊さえも、危険だといって駆除してしまう、この人間社会の方が異常なのではないでしょうか?本来は、共存すべき存在なのに。ああ、いっそ人類こそ滅んでしまえ!と思います。三首目、確かにそう。私も、3年も前から左足の小指と薬指の付け根に違和感を感じていますが(歩くと痛む)、このコロナ禍で、病院に行く勇気がありません。変形性膝関節症の初期だと言われたのはもうずっと前。それに飛蚊症も、加齢だからだし。還暦が人体の保証期間なのかもしれません。それ以上は、もうどうしようもないのかもね。でも、痛みも忘れるほど、人生を楽しみましょうよ。笑う門には免疫力来たる!?