TINKERBELL BLOG

茨城県取手市「美容室アトリエティンカーベル」ティンカーベルのスタッフを身近に感じていただければ嬉しいです

第8回 みちのく潮風トレイル (志津川~松岩) その2

2022年09月07日 | Weblog
前日のトレイル終了後、車で30分ほど走って温泉に行ってみました。


「追分温泉」鉱山から流れ出る水を沸かして温泉にしたのが始まりというところです。
建物はレトロで完全に昭和です。
海に近いのに山奥でびっくりしました。

さて、二日目のトレイルは「道の駅大谷海岸」を拠点に南北に歩き分ける作戦です。

始発は5時13分の気仙沼行き。
これに乗って「陸前小泉駅」まで行きます。
そこから北上し、最知駅をゴールにそこからバスで大谷海岸駅に戻るというプラン。

道の駅の敷地内にバス停はありました。
一応乗り場を確認して(到着は暗かったので分かりにくかったですが建物の目の前でした)なるべく早めに寝ます。

前日の睡眠時間が少なかったのですが、なかなか寝付けずブログを書いて眠くなるのを待ちました。

朝、まだ薄暗いうちから支度を整えます。
4時30分に起きました。
朝食はおにぎりに鮭と茹で玉子です。

時間があるので少しブログを進めておこうと思いました。
思ったよりも時間が経ってしまったらしく、覆った窓の隙間からバスが来るのが見えましたが何とも思いませんでした。

さ、時間だ。
と思ってバス停に行くと… なんと時間過ぎてるじゃん!
さっきのバスに乗るんだったのか。
しばし呆然としました。
一度車に戻って頭を整理しました。

次の便は一時間後です。


すっかり明るくなった道の駅大谷海岸で次のバスを待つか計画変更で歩き始めるか、考えているとトレッキングポールを持ち忘れたことに気がつきました。

僕にはポールはあった方がいいので、慌ててバス乗って忘れてガッカリするよりもむしろ良かったのかな?と思うようにしました。

で、ただ待っていても仕方がないので陸前小泉に向かって歩き始めることにしました。

変更後の計画は、大谷海岸から陸前小泉まで歩く→バスに乗って最知まで行く→歩いて大谷海岸に戻る。
よし、これでいくぞ。


道の駅大谷海岸からは海が見えました。
震災後の防潮堤建設で海が見えるところは少なくなってしまいました。

5時25分スタートします。


海沿いは小さな漁港が点在しています。


稲刈りはまだです。
なんの品種でしょうか。粒は小さめでした。


斜面に何故かユリの群生があったり。


真ん中の凹んだところは三陸鉄道の線路の跡です。


復興道路として新しい道路の建設が進んでいます。ここもそのうち景色が変わってしまうことでしょう。


たまたま通りかかったBRTの駅。
場所によって違いますが、だいたいこのデザインです。


「津波浸水区間」の表示。
あちらこちらで見かけました。


おっ、バス来た。
これがBRTバスです。


BRT路線。
ここをバスが走ります。
遮断機は一般車両の侵入を防ぐために路線側に取り付けられています。
水没した箇所などや地域に必要な施設などには一般道に出て進みます。


さらに歩くと「風越の七里塚」が現れました。
旅人の休息の場所でした。

そろそろ陸前小泉駅の時間を気にしておかなければなりません
歩きながら時刻表を調べます。

現実的なのは9時44分でした。
距離的にもそこ狙いかな。

ところが思いのほか順調に進み、9時14分に間に合いそうです。
そうなると欲が出てきて少し走ってみました。
発車時間と到着予定時間が同じです。

ところが、駅の場所がわかりません。
建物の影に隠れているのか、まっすぐ行くのか右なのか左なのか、まごついてしまいました。

結局道路の反対側の影に隠れていました。
走るしかない。
道路を駆け下りていきます。
車道を走り降りればいいものを歩道に飛び移ろうと思った瞬間⋯

左のつま先が縁石に触れました。
スピード乗っていました。
バランスは前のめりに突っ込んだ体制です。
リカバリーできそうな感じでした。

その時、下を向いた僕に対して背中のザックが上にずれ上がってきました。重心が頭の方に移動したため、僕は頭から路面に打ち付けられたのです。

さらに、さらにですよ、下り坂だったものですから身体はでんぐり返しをした状態になりました。
昔、フリースキーで脱臼した肩が痛みました。
肩には激しい擦り傷と痛みが残りました。

構っている暇は無いのですぐに歩き出します。
額をさわってみるとタンコブになっていました。
『なんだこりゃ、スーパーボールか』
(スーパーボール=昭和世代の人ならみんな知ってる)
出血は無いようなので急ぎます。

あ! 来ちゃった。
バスが上の路線を走ってきます。
手を上げてアピールします。
バスが駅に停りました。
あとは階段を半分上がるだけ。

「プシュ〜、ブロロロロ〜」

行っちゃいました。
なんと。なんと。なんという絶望感。

ガッカリした僕は併設されたトイレに入って〇〇〇をしてやりました。
個室にいるととめどなく汗が流れ出て止まりません。

『行っちゃったものはしょうがない、とりあえず次を待つんだ』
考えてみれば最初はその次の便に乗るはずだったんだ。
いいじゃないかそれで。
いいじゃないかそれで。
いいじゃないかそれで。
何度もその言葉が頭の中を回っています。

だいたい一時間に一本しか来ないところなのに、次は30分後があるんだし、あの時でんぐり返ししなければ間に合っていた訳だし、僕は負けて何なんかいない。
むしろたいした怪我もなくてラッキーだったんだ。
よし、これをチャンスに変えるんだ。

持ってきたフルーツを食べてエナジーチャージ。
地図を見て予定を変更する事にしました。
どうせならひと駅先の「松岩駅」まで行ってやる。
なーに大したことないさ。


バスが来ました。
僕が待っているはるか手前に停車しました。
みると下には「乗車口」の表示がありました。
緑っぽく汚れてて見えねーんだよー。なんて不機嫌なフリをしました。
僕は不機嫌になった事など人生で一度もないので念の為。

誰も乗っていません。

気に入った位置に腰掛けて地図を確かめます。
よし覚えた。
いつの間にかバスはたくさんの人が乗っていました

バスが最初に決めていた「最知駅」を過ぎました。
次は目的地だ。
と思ったら違う駅名が。
急いで調べます。
『あーびっくりした』地図に駅名が載っていなかっただけでした。
つまりふた駅先ということになります。

松岩駅に着いた僕はバスから降ります。
さてと、まずルートに乗らなきゃな。
ところが
ルートに乗った瞬間何だか不安になりました。
工事車両が多いのです。これって経験上通行止めになる確率高し。


はい通行止め〜。
と思ったら横に抜けられました。
結局その道の1本向こうを戻るように歩いて行きました。
ぼーっと歩いていたら曲がるところを行き過ぎてしまい、しばらく戻りました。


行き過ぎた先にはこんな札がありました。


「羅漢かかし」
われも傷つき 語れず突っ立ったまま されど残された人々よ 悲しみを乗り越え不屈であれ

かかしはそう願っているはずです。

こう看板に書かれていました。
そうだった。この道は震災復興の道であった。

ルートを行き過ぎた僕が出会った像でした。
つまり行き過ぎてラッキー。


緑が美しい田園風景。
もうすぐ美味い米が穫れる。
これを食べて元気に暮らそう。


以前歩いたルートにもこんな岡が幾つもつくられていました。
あの岡の中身はあの時の岡と同じように震災瓦礫かもしれません。
一抹の虚しさを覚えました。


「絆」
あなたを忘れない
『ここにいれば大丈夫だ』
しかし、無情にも第一波で
下手から家や車が押し寄せ
そして、第二波、第三波が⋯
九十三名の尊い命と
すべての財産が海へと散った
あの一声が無常の叫びに
私たちはあなたを忘れない
今までありがとう
こころやすらかに

と刻まれていました。


ひたすら歩き続けるとゴールが見えて来ました。

まあちょっと疲れたかな。


帰り支度を整え、少し北上しました。
「友の湯」へ行ってみました。
この日の営業は15時からということでしたから、少し駐車場でブログを書いて待っていました。


こちらが駐車場。
狭いです。

すると車の窓を叩く音が。
店主と思われる人がOKサインを出してくれました。

準備をして入ってみると、さっきのお父さんがいました。
『初めてですか? あっそう。うちは銭湯です。日に一回しか湯を溜めません。なので湯船に入る前に身体を洗って、湯船のお湯は使わないでください』とおむろに言われました。

440円。
『こまかい方がいいですよね?』と言って財布の中からちょうど440円をだそうとすると、
『細かくなくていい、お金かかるから』
そ、そうか今は100枚以上は預けるにも手数料かかるんだったな。

昭和中期そのままの浴場は懐かしさだけではなく、取り残された空間の虚しさを感じました。

上がって店主にお礼を言うと、優しく応えてくれました。
『ここはいつからやってるんですか?』
『親父の代から、創業は昭和33年。震災のあと俺が継いだんだ。一銭も国から補助は出なかったんだ。やめたくてもやめられないんだ借金あるから。やるんじゃなかったよ』
『震災の被害はどのくらい⋯』
『めちゃくちゃだよ』と言って首を振りました。

『また寄らせて下さい』と言ってその場を後にしました。


壁にはあの時受けた傷跡がありました。


おしまい。

2日目
歩行距離 28.4km
累計登坂標高差 +471m
所要時間 8時間30分(BRT移動時間含む)
44,000歩

2日間合計
歩行距離 58.4km
累計登坂標高差 +1,591m
所要時間 17時間
102,200歩
コメント
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