(冒頭写真は、朝日新聞2022.01.22付 書評コーナーより、ブライアン・グリーン著「時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙」の書評内写真を転載したもの。)
久々に「書評」を取り上げるが。
上記著書に対する、東京大学宇宙物理学教授・須藤靖氏による書評「怪しくも魅力的な未完の『物語』一部を、以下に要約引用しよう。
科学によって蓄積された膨大な知識と情報に基づいて、この世界の起源と未来、さらにはその存在意義自身をも問い続ける。 著者はそれを「物語」と呼ぶ。 本書では、狭い意味の科学や物理学にとどまらず、世界のあり方を巡り終わりのない物語が展開される。
第1章「永遠の魅力」では、この物語の主人公がエントロピーと進化だと宣言される。 世界が秩序から混沌へ向かう性質を特徴づけるエントロピーという概念と、時間の進む向き、宇宙と生命が誕生し進化する理由は互いにどのように関係するのか。 それらが次の三つの章、「時間を語る言葉」「宇宙の始まりとエントロピー」「情報と生命力」で解説される。
これに対して、「粒子と意識」「言語と物語」「脳と信念」「本能と創造性」の四つの章では、「(少なくとも現時点において)物理学だけでは語り尽くせない「物語」が積極的に取り上げられている。
「物理法則に支配されている粒子たちが詰め込まれた袋にすぎない」人間が、なぜ意識を持ちうるのか。 そんな袋が、あたかも自由意志をもつかのように振舞うのはなぜか。 人間が言語をもつのは単なる偶然か。 宗教を信じるのはなぜか、そもそも信念は如何に形成されるのか。 人類が誕生以来、生き残りに役立ちそうにない芸術や高度に創造的な活動に没頭する理由は何か。
正直なところ、これらの問いに対する著者の意見に私は納得していないが、進化生物学・社会学・言語学・哲学における様々な説の紹介から学ぶことは多かった。 (中略)
本書は、最終章「存在の尊さ」に代表されるようにレトリックが多めである半面、物理学の知識なしでも読み通せるはずだ。 著者の意見に納得するかどうかは別として、未完の「物語」に触れてみたい方には是非お勧めしたい。
(以上、朝日新聞「書評」ページより一部を要約引用したもの。)
ここで、言葉の説明を追加しておこう。
エントロピー :
エントロピーとは、言うなれば「エネルギーが自然に流れる向きを表す指標」
である。
である。
この世で起こるあらゆる物理的な変化にはエネルギーが関与している。 そして、エネルギーの流れる向きは本質的に一方通行である。 であれば、エネルギーの流れから、あらゆる変化の進む方向を推し量ることができるだろう。 この「変化の進む方向」を数値で表したものがエントロピーなのだ。 エネルギーが流れる向きを知る、ということは、この世に起こるあらゆる変化の向きを予測できる、ということだ。 これがいかに大きなインパクトを持つか、なぜ物理学の根幹と言われているか、お分かり頂けることと思う。
エントロピーを理解するためには、エネルギーの流れがどのような「法則」に従うのか考えてみる必要がある。
真っ先に思いつく事例は「水は高きから低きに流れる」であろう。 水であれりんごであれ、あらゆる物体は、より低い、安定した状態に移行しようとする。 ということで、エネルギーの流れについて最初に思いつく法則は次のようなものであろう。 「あらゆる物体は、位置エネルギーが低い状態に移行しようとする。」 この法則はおおむね間違ってはいないのだが、絶対の真実というわけでもない。 位置エネルギーが低いからといって、月はすぐさま地球に落ちてはこないだろう。 りんごが地上に落下するのに、月が落下しない理由は何だろうか。 地面に激突するからだろうか。 ここで、エネルギーは決してなくならない、という法則を思い出そう。 地面に激突したりんごが再びもとの高さまで跳ね上がらないのは、りんごの持っていたエネルギーが衝突時に熱に変わったからだ。 もしエネルギーが熱に変わらなければ、りんごは決して下に落ちたままでいることはない。 月が地球に落ちてこないのは、月の持つエネルギーが摩擦などによって熱に変わるチャンスが無い(極めて少ない)からである。 中途半端な高さにある人工衛星は大気との摩擦によって、やがて地上に落下してしまう。 つまり「物体は自然に落下する」という素朴な常識は、 「エネルギーは最後には熱に変わる」という法則に従っていたのである。
(以上、ネット情報より原左都子が一番わかりやすいと思った説明書きを引用したもの。)
レトリック :
レトリックとは美しく、巧みな言葉のこと。 聞いている人に感動をあたえる、すぐれた表現方法のこと。 「言い回しによって、人生は大きく変わる」と説いた方法 。
(以上、ネット情報より原左都子が一番気に入った説明書きを引用したもの。)
原左都子の私事及び私見に入ろう。
この書評を読んで、早速ネット通販にてこの著作本を入手しようと志したのだが。
定価¥2,860- と記載されているが、ネット通販では送料が加算されて高額となっている。 それだけの理由で、今回は購入を取りやめた。
という訳で、上記書評のみで私見を少しだけ述べるならば。
この著書の作家(上記写真に記載されている通り、米コロンビア大学物理学者であられ第一線での研究の傍ら、科学の普及活動にも力を入れられているようだ。)が、科学(特に物理学)を「物語」として語っている部分が興味深い。
というよりも、そうでもしなければ今時堅物の著作物など売れる訳もないであろうし…
原左都子として一番興味深い、というよりも反発したいのは、「人類が誕生以来、生き残りに役立ちそうにない芸術や高度に創造的な活動に没頭する理由は何か。」の部分だ。
これに関しては、既にその意義を唱える思想等々が世に溢れているであろうし、人類にとって創造的活動の重要性は既に語られて久しい感覚がある。
今更、時は既に遅しの感も抱かされるのだが…
それにしてもこの著作本は、おそらくある程度の販売実績を稼げることであろう。