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書評 有名な性悪説「証明」、その嘘を暴く  文科系

2022年05月13日 14時04分51秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

 オランダ人歴史家ルドガー・ブレグマンの「ヒューマンカインド 希望の歴史」(文藝春秋)の主内容に連なる表記のことを紹介してみよう。本国オランダで25万部、世界46カ国翻訳という世界的ベストセラーである。

 初めはずっと、史上有名な数々の「性悪説証明」と言われてきた例をいちいち反証していく。上下2巻の上巻は、ほぼこれらへの反論に各章が当てられたものだ。

 第2章『本当の「蠅の王」』は、この有名なノーベル賞小説を実際にあった実話でもって反証したもの。小説と同じシチュエーション、少年たちの漂流から1年以上の孤島暮らし、はてどんな生活になったかという実例を見つけ出してきて、それが報告されている。1966年オーストラリアの新聞に載ったこの出来事を検索で見つけ出した上に、現地を訪問して生存者らから聞き取った調査報告だ。「イースター島の謎では、ジャレド・ダイヤモンドの「文明崩壊」が描いたイースター島の殺し合いが実は考古学的創作であったいう、新たな実証反論を提示している。
 さらには、「スタンフォード監獄実験」は、「結論に合わせた実験になっていた」ことを細々と例証、暴露したうえで、この実験について「BBCのスタンフォード再現実験」があったが、同じことは全く起こらなかったという紹介を細々とやっている。ちなみに、この実験の主、心理学者フィリップ・ジンバルドは、「それから数年で彼は、その時代の最も注目される心理学者になり、アメリカ心理学会の会長にまで登り詰めた」とある。同じように知られた「ミルグラムの電気ショック実験」もスタンフォードと瓜二つで、結論ありきの実験法操作や不都合な事実の無視などの数々が示されていた。こちらの実験の場はイェール大学で、その研究室の主はスタンレー・ミルグラムと言う。先のジンバルドよりもさらに広く知られるようになった心理学者なのだそうだ。

 こうしてこの著者の結論。性善、性悪は、人間の何か宿命のようなものではなく、その時と場に規定された人間固有の社会性、共同・共感性によって形成されていくもの、そういうことになるのだろう。ちなみに、この上下2巻本全体の初め(序章を書き出す前の1ページ全部)にアントン・チェーホフの言葉と銘打って、こんなたった一言が掲げられていた。

『人は、自分がどのような人であるかを教えられると、より良い人になるだろう』

 

追記ーこの本は、「作為的実験」を告発された「史上偉大な」心理学者、ジンバルドやミルグラム(の関係者を含む)からの告発を覚悟してもなおかつ内容に自信があるからこそ書かれている訳だ。そして、その告発がないということが、この内容の真実性を証明していることになるだろう。

 

コメント (1)
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