2010年の南アw杯スペイン初優勝前後から、スペインのように繋ぐだけでは勝てなくなった。メッシがいない時のバルセロナに得点力がなくなってきたとは、知る人ぞ知る真実である。スペインが勝てなくなったのは、ドイツ発祥のゲーゲンプレスがこの弱点を突けるようになったからだ。その後次第に、引いて守る守備の世界的名監督モウリーニョも勝てなくなった。スペインやモウリーニョを退けたこのゲーゲンプレスの世界的頂点が、2014年ブラジルW杯のドイツ優勝であろう。この大会では、日本人が好きなブラジルもドイツに大差で負けている。そして、2018年ロシア大会は誰もが予想しなかったフランス優勝である。これは、スペイン流繋ぎもゲーゲンプレスもぶち破る「戦術エムバペ」の産物と見る。今ではこのエムバペも23歳、この戦術がカタール大会ではすっかりチームとして洗練されていると分かる。
さて、こんな歴史を見てきたのは、日本が直近の世界サッカー2大潮流スペインとドイツとを負かしたからだ。それはなぜだったかを考えてみたい。
そもそも日本はどうしてこんなに強くなったのか。いろんな専門家の見解をも参考にして考えてみると、こういうことが分かる。ゴール前に引いて守る守備を最終ラインを押し上げてコンパクトにできるようになったからだ。そして、この陣形でゲーゲンプレス守備をやれているからだ。ドイツ戦では後半の後半まではまだまだ下手だったけれど、スペイン戦後半にはすっかり板に付いてきた。ゴール前で守っている吉田が、「上がれ、上がれ」と両手をひらひらさせて最終ラインを押し上げている場面も多いうえに、この守備陣形を形成している中盤より前がどんどん相手に突っかけている。旧川崎勢がとにかくこれが上手い。守田、田中あたりが周囲にも声をかけているのだろう。
この守備は、間も無く当たるブラジルにも有効だと思う。ゲーゲンプレス守備とは、スペースを作らせないことと、オフサイドトラップなどが鍵になる。日本人はブラジルを持ち上げ過ぎるが、この三大会で優勝できていない理由を考えたことがないのだろう。選手個人能力では世界で抜きん出たブラジルは組織に弱いのである。プレミアで名を馳せるような世界的名監督が近年のブラジルから出ていない理由も組織論が弱いことにあるのはまちがいない。優れた個人技だけでは「組織として逆算したスペース消し守備」に勝つのは難しい。