1980年代後半、私は原発から出る使用済み燃料など高レベル放射性廃棄物の保管に関する研究会の一員として、米国ネバタ砂漠のユッカマウンテンやスイスアルプスのグリムセル、ベルギーのモルなどの実験研究施設を訪ね調査をした。環境に如何に影響を与えないで放射性廃棄物を保管するかが大きなテーマだった。放射性物質が保管場所から万が一でも漏れることがあるとすれば、水によって外部に運ばれると考えられた。従って砂漠のように水のないところか、岩石や粘土で水を閉じ込められるところが保管場所の適地とされた。
原発の3月に起きた水素爆発で風に流された放射性物質のシュミレーションが朝日新聞8月11日朝刊に掲載された。名古屋大学山沢弘美教授によるもので、これによると関東をこえ、静岡県の一部まで放射性物質が流されており、地上へは主に雨によって降ってくる。地上での雨水の行方を突き止めることは不可能に近い。浄水場にかなりの部分は流れてくるためか浄水場の汚泥のなかに濃縮された放射性物質が残る。これの処置を厚労省は自治体でやれと言っている。自治体はその保管の技術がないため、とりあえず野積みにしてシートをかぶせている。
雨水により、そこから放射性物質が再び出て来ることは明らかで、「水も漏らさぬ」保管場所を早急に設置することが必要だ。日本には砂漠はないので、人工的な施設が必要だが、自治体に任せることなく文部科学省、国土省など技術のある国が主導すべきだ。
稲わらと牛肉の問題も雨水を甘く見た結果で、水こそが放射性物質の運び屋で我々の生活環境に忍び寄ってくる。甘く見てはいけない。