小泉さんはドイツとフィンランドへ訪問し、原発政策を勉強した結果、日本の脱原発を唱えだした。特に原発から生じる高レベル放射性廃棄物の処分を世界で初めて実用化したフィンランドの処分場を見て、日本の国土では処分場建設は難しいと確信した上での脱原発論だから本物だ。
フィンランドの高レベル放射性廃棄物処分場は今後10万年は外部に放射性物質が漏れない多重バリアが安全性を保障している。その根拠は180万年安定している花崗岩の中に水を通しにくいベントナイト粘土で包んだ容器に廃棄物を閉じ込めるというものだ。処分場は氷河期が訪れても安定しているという。(この部分はフィンランド大使館提供資料)
10万年経つと放射能が消滅するという理屈だが、小泉さんだけでなく他のどの政治家が見学しても、断層だらけの日本にはフィンランドの処分地のような安定した場所はないと判るだろう。小泉さんは日本の高レベル放射性廃棄物処分場建設には解が見いだせない以上、早急に脱原発が必要という結論を出したのだろう。30年前に気づいてくれれば、大量に放射性廃棄物が排出されたことは防げたかもしれない。小泉発言は遅きに失する感があるが、多くの政治家に衝撃を与え、真剣に考える機会を提供したことは評価できる。
私は、1980年代後半、当時の社会党の堀衆議院議員を団長とした高レベル放射性廃棄物処分の世界各国研究実験場を訪問し、日本の遅れを指摘した報告書を出したが、反応なく税金の無駄遣いとなった。
日本の場合、現在暫定処分場を何とかしようと計画しているが、本処分場が不可能であるから10万年間、放射能漏れがないように厳重に見張ることになろう。この話をしても信じて貰えないが、SFの話ではない現実のことだ。