私は、1970年代、7年間大阪で勤務したが、大阪の味には脱帽した。特に東京ではなかなか食べられなかったふぐやうどん数寄の旨さは忘れられない。同時に関西人の食に対するこだわりが大阪だけでなく京都でも神戸でも印象的だった。宝塚ホテルの高級レストランはよほどの祝い事だけに利用した。
ところが、宝塚ホテルを含む阪急阪神ホテルズ(本社・大阪市)系列のレストランなどでメニュー表示と異なる食材が使用された問題が発覚、冷凍魚を鮮魚、濃縮還元ジュースをフレッシュジュースと表示したり、トビコをレッドキャビアとごまかし、料理人ならすぐ判るのに、ホテル側は単なる誤表示と強弁している。
更に、系列のリッツカールトン大阪でもホテル内の中華料理店でメニューに表記していた「車エビ」の代わりに「ブラックタイガー」を、「芝エビ」の代わりに「バナメイエビ」を使っていたことが判明した。ルームサービスで提供していた9種類の自家製パンのうちバターロールなど3種類は業者から取り寄せたものと判った。
更に、東京に飛び火し、阪急阪神ホールディングス傘下の「第一ホテル東京シーフォート」のレストランでは約4万人に「鮮魚のムニエル」として冷凍の魚が提供され、国産と中国産のそば粉が混ざっていたそばを「天ざるそば(信州)」として、バナメイエビを使った「芝海老(しばえび)とイカのクリスタル炒め」として提供した。などなど阪急阪神ホテルズグループの特殊才能ではと思わざるを得ない。
レッドキャビアとトビコの場合、実際に使われた食材と表示の食材を比べると、価格差が最大3倍になることがわかり、お客は一流ホテルのレストランで詐欺に遭ったようなものだ。世はグルメブームだが、今後お客はスーパーでの食品表示と同じく原材料や生産地を確かめなければほんとの味がわからない。
それより、和食が世界無形遺産に指定されることになる時代、一流レストランの料理人のモラルも問われる事件だ。