アベノミックスでデフレ脱却を目指す政府にとって、来春、消費税で冷え込む消費対策として浮上したのが「賃金の引き上げで雇用者の可処分所得を増やす」だが、ことはそう簡単ではない。かつて金属労協で春闘相場をつくってきた経験から賃上げへの茨の道を想定してみる。
どのような道筋で大多数の勤労者の賃金が引き上げられるだろうか
先ず連合傘下のゼンセン、自動車、電機、鉄鋼、といった産業別組合が予想物価を上回るベースアップを実現し、大企業労働者の賃上げに波及させる。大義名分があるのだからストライキ覚悟での交渉だ。
産業別労働組合には系列企業労組や中小の労組も加盟しているので、統一要求としてベースアップを要求し、大企業労組と同一の結果を実現する。
中小企業の賃金改善は困難を極める。賃上げするなら借金を返せという金融機関からの要求、大企業からは賃上げする余裕があるなら納入金額を下げる。といった陰湿な妨害だ。労組があって、産業別労働組合に加盟していれば、業界統一要求、統一妥結だと言えるが、大多数の中小企業での賃上げは次のような雰囲気が出てこないと難しい。
高度成長時代、組合がない中小企業でもきちんと賃上げは行われた。大企業と系列企業がベースアップの相場をつくり、特に初任給が上がるとその上がり分がベースアップになった。したがって相場初任給を払わないと新卒が採れない状態となり、隣の会社が賃上げしたから自分ところも賃上げしなくてはという雰囲気となった。
来春、失業率が3%に低下し、人手不足になり、初任給アップをテコに賃上げをする雰囲気になることが必要だ。
更に難しいことだが、かつては正規社員の春闘で済んだ。今や35%をしめる非正規労働者へどう賃上げを波及させるかという課題だ。前提として、同一労働同一賃金の均等待遇を政労使で確認して実現させる仕組みを作り上げないと、賃上げは実現しない。
まさに茨の道で、昔国民春闘という言葉があったが、今回はデフレ脱却国民春闘という盛り上がりを政労使でつくらないと、賃上げはならないだろう。鍵は政労使のうち使が握っている。