バイデン米大統領は15日、米国の公正取引委員会にあたる連邦取引委員会(FTC)の委員長に米コロンビア大学准教授のリナ・カーン氏(32)を指名し、議会上院も同日、承認した。FTC委員、同委員長のいずれのポストでも最年少の就任となる。カーン氏の両親はパキスタン人で、ロンドンで生まれ、11歳のときに両親とともにアメリカ合衆国に移住した。
彼女はイェール・ロー・スクール在学中の2017年1月にイェール・ロー・ジャーナルに発表した論文「アマゾンの反トラスト・パラドックス」でアマゾン・ドット・コムの競争上の問題点を批判する論文で注目を集めた。下院司法委員会がグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの独禁法違反を指摘した20年の調査報告書にも携わった。
アマゾンは日本でも公取から、取引業者から優越的地位を利用し協賛金を集めたと是正勧告を受けた。カーン氏がトップに就くことで、FTCは巨大IT企業GAFAに対して独禁法を一段と厳しく執行する可能性がある。FTCは2020年にはフェイスブックを独禁法違反の疑いで提訴し、画像共有アプリ「インスタグラム」などの売却を求めた。
先週のニューヨークタイムズはアマゾンのニューヨーク郊外の倉庫作業員の労働環境を取材し、時間給15ドルと賃金は高いが離職率が週3%と高いことに触れ、「休暇を申請した労働者が、欠勤により罰せられ、解雇通知が発せられ、その後解雇された。また倉庫内の労働者のあらゆる動きを監視システムで追跡し、仕事が遅すぎたり、アイドル状態が長すぎたりすると、解雇されるリスクがある」と報じている。今年アラバマ州のアマゾン倉庫で組合結成がアマゾンの工作で失敗したが、組合の代わりにリナ・カーン委員長が公正な労働環境を実現してくれるかもしれない。
アマゾンも前CEOベゾス氏は株主への手紙の中で、アラバマでの組合の取り組みは、「従業員の価値を創造するためのより良いビジョン、つまり従業員の成功のためのビジョンが必要」とし、「地球で最高の雇用主」になることを誓ったと述べ、巨大企業アマゾンの今後の労使関係に注目したい。