今年の春の賃上げはこれまでにない様相で、連合傘下の主な産別の要求は自動車、電機、情報などは昨年どおり、デフレ下の要求でベースアップはゼロ、定期昇給ないし、賃金カーブ維持分と業績による一時金から構成されている。ベースアップを要求するのは2500円を要求する私鉄総連ぐらいだ。ところがデフレからの脱却を目玉にしている安倍内閣は賃金引き上げをこれまでの内閣より熱心に経済界に要請している。
これに答えて産業競争力会議のメンバーである新浪剛史ローソン社長は7日、20歳代後半から40歳代のグループ正社員約3300人のほぼ全員を対象に、年収を平均3%引き上げると発表した。ただ、賃金の引き上げでなく賞与に上乗せする形で1人当たり平均15万円を支給するという内容だ。いわゆる「子育て世代」の所得を引き上げるのが狙いとしている。
春闘の交渉が始まる前に回答が出たようなものだ。このローソンのやり方はトヨタ労組のように一時金要求を主体とする方法を先取りしたもので春闘交渉に及ぼす影響は大きい。賃金部分を膨らませないで一時金で従業員の要求に応えるやり方だと人件費の柔軟性は保てるが、民間賃上げで最低賃金が決まることから最低賃金の引き上げ幅には影響せず、賃金格差の是正は出来なくなる。
デフレからの脱却には雇用者の7~8割を占める中小企業労働者や非正規労働者の賃金を底上げすることが喫緊の課題で、政府が雇用所得を増やし、消費を増やし、消費者物価2%を目指すには最低賃金の引き上げをデフレ脱却特別措置として東京都で1000円(時間給)ぐらいの底上げが必要で、労働組合も頑張って貰いたい。