参議院の「1票の格差」を巡っては、最高裁判所が、5年前とおととしの選挙の2回続けて「違憲状態」とする判断を示したことから、各党が、来年夏の参議院選挙に向けて、格差是正に向けた改革案の取りまとめを進めている。自民党は9日隣接する2つの選挙区を1つにする、いわゆる「合区」を2か所で行うなどして、選挙区の定数を「10増10減」するとした案を提案した。この案でも1票の格差は、平成22年の国勢調査の結果で計算すれば、最大で2.974倍になる。3倍以内なので何とか違憲状態ではないという思惑だ。
これに対し、合区の対象となる鳥取、島根と徳島、高知選出の参議員だけでなく知事もこぞって猛反対、各県の代表がいないと意見が中央に通りにくいとか地方崩壊だとかおかしな理屈をこねている。衆議院選挙区は小選挙区になり地方の声が中央に通りやすくなったことを忘れている。参議院が政党化し、衆議院のコピーといわれてから久しい。参議院の存在意義は、国全体を考えた有識者議員や、職能代表議員による衆議院の補完機能で、場合によってはブレーキ役であったはずだ。
日本は現在人口減少社会に入り、かつギリシャ以上の財政赤字を抱えている。この際、県単位の選挙区は廃止し、全国区だけに絞った縮小化をはかるべきだ。それで1票の格差問題はなくなる。政治家が自ら選挙制度の見直しをやるとなると今回のように5年経っても決まらない。専門家による特別委員会で参議院改革を任せる方が早くかつ公正な結論が出る。