アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

私の「ベートーヴェンを"読む"-32のピアノソナタ」

2011年12月28日 | ピアノ
分厚くて、堅くて(中身もカタいがどっしりハードカバー)、私が買いそうな本ではまったくない、「ベートーヴェンを"読む"-32のピアノソナタ」(チャールズ・ローゼン著、道出版)。

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それをつい、クリックしてしまったのは、もちろんこの間、訳者のshukuさんの、妙~に説得力のある演奏を聞いてしまったからではあるのだけど、もうひとつの理由は、ずいぶん前に聞いた講演で、ベートーベンの話が非常におもしろかったから。

話をしていたのは、ぴあのピアの監修をしていた西原氏。講演タイトルによれば、ベートーベンとショパンの話がある予定だったらしいのだが、実際に話し出したら止まらない止まらない、ベートーベンだけでも収まらないのではないかという勢いだった。私は、こういうオタクっぽい人の話が好き(^^) いやもう、(ピアノが、音楽が)好きなんだなぁ、かわいいなぁ、という…

ベートーベンが生きた時代は、どんどんピアノ製作の技術が発展した時代でもあって、彼がピアノソナタを書いている間にも鍵盤の幅が少しずつ広くなっていった。そして、ベートーベンは常にその限界をしゃぶりつくし、生かしつくして曲を作っていったのだ。音が、だーっと下降または上昇するとき、彼の心の中にはその流れについて必然性があるわけだけれども、実際の鍵盤の物理的な限界というものがそれを許さない、ことがある。

ベートーベンは、あるときはその限界が納得いかないというように、自筆譜にぐちゃぐちゃと憤懣をぶつけたり、あるときは、オクターブで降りていくところ、鍵盤がなくなった分は単音にしたりしてしのいだ。西原氏は、そういう、ベートーベンの心の中のドラマと、実際に作曲されたピアノソナタの変遷、そこに表れているピアノの歴史をとっても生き生きと語ってくれた。

私はベートーベンファンではない。なにしろ、小学校三年生のときに「エリーゼのために」を弾いたあとは、大人になってピアノを再開してからも、ショパン、ラベル、ラフマニノフ、ブラームス、バッハ、グラナドス、ファリャ、グリーグ、シベリウス、何を弾いたってベートーベンは弾いてなかったくらいだ。嫌いなわけではなくて、単に(音階とかが)弾けないだけなんだけど。

でも、私は「ピアノ(という楽器)」好きなので、こんなにピアノの発展をなめるようにしゃぶりつくした、ベートーベン、あるいは、ベートーベンのピアノソナタというものを、避けて通るわけにはいかない(?)ような気もしていたのだ。

それで今回、この超とっつきにくそうな本を思い切って買ってみて、まず開いたのは「第一部 伝統」の中の「ペダル、トリル、鍵盤の拡大」という項目のところである。

ざっと読んでみると、西原氏は主にベートーベンとピアノにまつわるドラマについて(素人向けに)語っていたわけだが、一方この本では、ベートーベン当時の(時代的・個人的)事情に踏み込みつつ、そこを手がかりにして、演奏上の課題を解き明かしていこうとしているらしい。考えてみれば、西原氏は別に演奏家ではないし、一方、この本の著者はベートーベン全曲演奏などもした演奏家であるようなので、当然ながら視点が違うものになるだろう。

鍵盤の拡大に関する演奏上の課題はといえば、ベートーベンは当時のピアノでベストを尽くしたのだろうけれども、さて、現代のピアノではどう弾くべきなのかということである。つまり、たとえば、オクターブが欠けて単音になってるところは自主的に補ってしまっていいだろうか?? 鍵盤が足りなくて折り返しているようなところは??

答えは単純ではなくて、なんでも楽譜どおりに弾けば「正解」というわけでもなし、かといって勝手に拡大して弾いてよいものでもない。著者は、具体例を挙げて判断の難しさ(迷う余地)について述べつつ、この問題が難しい理由は
「多くの場合、鍵盤の幅が拡大することによる利点と、原典に従う利点がいずれも用意には甲乙付けがたいところにある」と書いている。

同様の問題は、ペダルなどについてもいえる。ピアノが違うので、「正解」のペダリングだって違うはずだけれども、以下同様、ということになる。

そう考えていくと、ただ「楽譜どおり弾く」ということはちっとも一筋縄でいくことではなく、いつでもパズルを解くようなスリリングな展開になってしまうわけで、現代には現代のドラマが新たに生じるといってもいい。

と思うとなかなかおもしろい本だ。熱情、悲愴など、知っている曲のあたりからもぱらぱらと読んでみたけれど、ぶっちゃけ私がベートーベンのソナタについて知っていることは少なすぎる。これじゃ、いくらいい本だって猫に小判だよね。

そう思って、今度はピアノソナタの楽譜(こないだ熱情の三楽章に無謀な挑戦をしたときの)自体をめくってみたところ…(つづく)

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コメント (8)
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