アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

えせ科学のできかたを追う

2011年12月16日 | 中学受験
こちらのブログをお読みの方で、中学受験別館はご覧になってない方は、「最近更新が滞っているけど、生きてるのかな??」とお思いになっているかも…

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あっちはほぼ毎日更新しています。それで、昨日は「五感を使った記憶術??」という記事を書きました。みなさん、「なるべく五感を働かせて記憶したほうが残る」とかいう話を聞いたことがないでしょうか。

ただ「つるっと」読むよりも、音読したほうが、あるいは人に説明してあげたほうが、記憶に残るってことは体験上明らかで、特に間違いはないと思いますけど、「それの根拠として」いろんな勉強法の記事で引き合いに出されている人がいるんです。

それは、「テキサス大学」の「ヴァーノン・マグネセン博士」で、たとえばこんなふうに引用されています。
「(6)-2) 五感を伴う重要性」
この記事を紹介したのは、特に他意はないんですけど、まぁこんなふうにあちこちで使われています。日能研のページにも。
「子どもには、得意な学び方がある」
同じデータのようですね。

でも、私は昨日の記事に書いたようなわけで、それならその元となった実験がどんなものか知りたいと思い立ったんです。でもなかなか見つからず、ブログ読者さんに助けてもらって、ようやくソースらしきものにたどり着きました。
A REVIEW OF FINDINGS FROM LEARNING AND MEMORY RETENTION STUDIES
確かに、Vernon Magnesenさんが書いた記事です。でもこれは論文ではないですね。もっと気軽な、ノウハウ記事的なものです。それに…

Vernon A. Magnesen, Dean
School of Career Education
Triton College

マグネセンさんは、ドクターでもなければテキサス大学の教授でもなく、記事の内容からしても、ただ社会人向け講座(Community College)で教えている人に見えるんですけどどうなんでしょう。この記事が、テキサス大学の発行物に載っているのでいつの間にかそういうことになった??

記事の内容は、成人向けクラスで漫然と授業やっても、聞いてもらえないし覚えてもらえないし、けっこう難しいものだと。それで、たんたんと説明してたりしないで、極力、生徒に言わせたり、参加させたりすることが大事(そこで、くだんのデータが出てきます)。

あと、初回授業でガツンとインパクトのある講義をしなさいとか、繰り返し演習させなさいといった、非常に実践的でリーズナブルなアドバイスが出てきます。詳細は今回の私の関心事でないので省略しますが。

この中では、あのデータはこのようになっています。
----
Studies in memory retention indicate that person retain:
10% …of what they read
20% …of what they hear
30% …of what they see
50% …of what they see & hear
70% …of what they say
90% …of what they do & say
----
けれど、私の知りたかった、どんな調べ方をしたらこういう結果になったのかについてはひとことも触れられていません。元の論文があるかもしれないのですが、少なくともここには引用元は示されていません。

私は、このMagnesenさんは、研究者でもなければテキサス大学の教授でもないと思います。この記事に書かれていた所属がそれと違うから、というのもありますが、それだけではなくて、研究者だったら、自分の研究にしろ他人の研究にしろ、データを引いてくるときに引用元を示さないなんてありえませんからね(これだけでなく、なんの資料もreferされていません)。

それに、いくらぐぐっても、彼の名前はここだけにしか出てきません。Magnesenさんが役に立つ知見を得たのであれば、何かしら別の論文に参照されたり、あちこちで検索にひっかかるはずです。

ただ、上記データが「テキサス大学、ヴァーノン・マグネセン博士」の研究成果でないとしても、元にはちゃんとした研究があって、ただこの人はそれをテキトーに引用しただけかもしれません。そこはまだわからないのですが…

ところで、上記にコピーしたMagnesen記事データは、日本で流布しているものと多少内容が異なります。でも日本のあちこちの記事にあるものはほとんど統一されているのです。何か「元」があってそこから流用されたのではないでしょうか。

と思っていたところ、これまたブログ読者さんから教えてもらったのですが、この日本語データはコリン・ローズの「加速学習法実践テキスト」の孫引きかもしれないということです。たとえばこのブログ(システムエンジニアの晴耕雨読)によれば、とにかくこの本の中にこのデータが紹介されている模様です。

つまり、この本を読めば、きちんとソースが示されていてきれいに解決するのでしょうか?? でも、コリン・ローズさんも別に学者ではなくて、勉強法の著作を出したり、セミナーをやってる人みたいですから、これもソース不明の孫引きという可能性も…

大学教授とかあって、もっともらしく数字とグラフが示されていると、ついソースにも当たらずにそれを引用して、その権威にすがりたくなるものです。そこに、「えせ科学」の活躍の場があるのでしょう。今、中学受験ブログに書いた記事の流れで、「えせ科学」がマイブームなんですけど、あまりマニアックになって中学受験とは何の関係もなくなってきちゃったのでこっちに引っ越しました。

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2 コメント

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Unknown (くるみ)
2011-12-17 11:09:50
スポーツに当てはめると、結構当たっているんですよね・・。

今までサッカーというスポーツを見たことも聞いたこともない人が、初めてサッカーをする場合、
1、活字のみのサッカーの本を読む
2、コーチからやり方を聞く
3、サッカーのプレーを見る
4、そのプレーを人に解説する
5、自分でプレーしてみる
6、1,2,3,4,5全てやる
定着率は、6>5>4>3>2>1順になると思います。

経験上、何となく当たってそうに思えて、つい、信じ込んでしまうのがえせ科学。根拠は無いのに、当たらずといえども遠からず的な感じを受けちゃうんですよね。
提示されたデータや意見に、厳密な根拠を求めない人たちが多い(私も含めて^^;)ことも広まる要因かも。
こちらのブログは色々勉強になります!

返信する
> くるみさんへ (アンダンテ)
2011-12-18 22:51:17
サッカーという、「やってみる」があるものだと、うまく当てはまりますね、確かに。

元ネタ不明のいい加減なデータでも、それが流行ったのは、流行るだけのニーズがあり、それから納得性があるからですよね。

でも実際に、こういう実験を組むのって難しいでしょうね~誰かまじめにこういうデータを出してくれればいいけど(^^;;
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