骨董品に関する物語・アール・ヌーヴォーのボンボニエール

　幼馴染の彼女は口下手の僕にも優しく、だから僕は言葉以外のもので自分の心を示して彼女に求婚しようと職人としての研鑽を重ねてきた。そしてようやく彼女に渡すに足りるだけの完璧な出来栄えの菓子器が完成したのだが、結局その菓子器は町一番の金持ちと彼女の結婚祝いとなった。

骨董品に関する物語・天文系古書｢複数の世界－賢者の信義とキリスト教徒の希望－｣

　父が頭を抱えて悩んでいたので何事かと思えば、勤務先の小学校で今度進化論について教えなければならないのだが生徒の一人、牧師の息子が人類の祖先をアダムとイブ以外認めないのだそうだ。宗教論争に首を突っ込む気は無かったので父の健闘を神や悪魔ではなく幸運に祈っておいた。

第五十七景・桜花の狭間に

たかあきは、宵闇の忘れ物と桜の花に関わるお話を語ってください。

　夜道を歩いていたら小さなマスコット人形が落ちていたので、これ以上汚れないようにと桜並木の根元に移動させた。すると、上からくすくすと笑い声が聞こえたので樹上を見上げたが誰もいない。不思議に思いながら家に帰り、次の日に同じ場所を通ると人形は姿を消していた。一体誰に拾われたのだろう。