カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第五十八景・おもいさくら

2019-03-14 19:15:34 | 桜百景
たかあきは、雨の裏切りと桜の造花に関わるお話を語ってください。

 あの日、あの場所でいつまでも待っていますと書かれた手紙を僕は無視した。そうすれば彼女も僕の事を諦めるだろうと思っての事だったが、言葉通りに雨の中で僕を待ち続けた彼女は肺炎をこじらせて亡くなり、薄情かもしれないが気持ちが楽になった僕の元には、今でも春になると彼女が好きだった桜の造花が届いている。
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骨董品に関する物語・図解マンドラゴラ

2019-03-14 18:58:52 | 突発お題

 万病の薬として珍重されるマンドラゴラは土から引き抜くと悲鳴を上げて採取主を狂死させる危険植物なので、採取主は耳を塞いで他の何かに引き抜かせる必要がある訳だ、ところでお前犬飼ってたよなと尋ねられた時点で僕は無言のまま席を立ち、それ以来奴と顔を合わせた事は無い。
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骨董品に関する物語・銀の裁縫セット

2019-03-14 18:42:56 | 桜百景

 祖母は夜会服の出来映えを褒められた時につい完全な自作だと見栄を張ってしまったが、祖父はその見栄を承知で祖母に豪華な裁縫セットを贈り、引くに引けなくなって裁縫技術を劇的に向上させた祖母とめでたく結ばれた。どちらが狐か狩人かは知らないが結果として母と私が産まれた。
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骨董品に関する物語・函入りの祈祷書

2019-03-14 18:41:34 | 突発お題

 生涯にわたって神に対しての漠然とした不信感を拭えなかった彼女に、彼はせめてその美しさだけは理解して欲しいと立派て頑丈な装丁の祈祷書を贈った。彼女はその祈祷書を大事にしたが、それは壊してはいけないものに触らず丁寧に仕舞い込んで棚から出さないようなやりかただった。
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骨董品に関する物語・黒蝶貝のオペラグラス

2019-03-14 18:39:16 | 突発お題

 自称発明家の兄はしょっちゅう訳の分からない物を作り出しては好事家に売りさばいているが、たまに一見はまともに見える品物を作ることがある。だからつい劇場で使えと渡された新品のオペラグラスをうっかり使ってしまい、視覚的な意味でひどい目に遭ってしまって大喧嘩になった。
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骨董品に関する物語・初聖体拝領のアームバンド

2019-03-14 18:37:14 | 突発お題

「キリスト教だと洗礼を受けられないままに死んだ子供は天国に行けないシステムらしいな」
「日本だって親より先に死んだ子供は賽の河原で積み石崩しの刑だが」
「子どもの頃に死ぬってのは、そんなに罪深いことなのかね」
「子供を失った親の悲しみの重さを背負わなきゃならんそうだ」
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