カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

『泣き虫』と【嬉しい】より・泣かない彼女の笑顔

2015-11-04 20:29:31 | 物書きさん、お題です
 彼女は泣き虫だったが大半の人間はそれを知らなかった。何故なら彼女は決して他人の前で泣かなかったからだ。
 ある日、偶然彼女の泣くところを見てしまって以来、彼女は僕の前だけでは泣くようになった。

 やがて僕と彼女の娘は笑顔の可愛い子に育ったが、やっぱり誰も知らない場所でだけ泣いているようだ。
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『泣き(鳴き)声 』と【笑顔】より・笑う爺さん

2015-11-03 19:21:12 | 物書きさん、お題です
 うちの爺さんがボケ防止にと、七十六にしてSNSを始めた。ちなみに知識が豊富で含蓄のある物言いが受けているのか閲覧者の人気は高い。
 そんなある日、爺さんがスマホ片手に大笑いしていたので何事かと訊ねたら、爺さんの書き込みに対して『あまり人生を舐めるな』という返事をくれた二十代の学生がいたのだそうだ。
 爺さんも若い頃は散々に大人に対して青臭く尖った意見を振りかざして噛み付いたモノだが、いつの間にか今度は噛み付かれる側の大人になっていたのが何とも可笑しいとは当人の談。
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『兄』と【たとえば】より・断絶の構図

2015-11-02 22:17:58 | 物書きさん、お題です
 例えば僕が心から兄を憎んでいて、でも、君がどうしても理解出来ないというならそれでもいい。
 ただ、理解出来ないそれを『理解出来ないから』と、君なりの解決方法を僕に押し付けてきたら、僕らはそれで終わると宣言した。

 だから、もう終わりなのだという僕の別れの言葉を、彼女は最後までどうしても理解しようとしなかった。
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『嘘』と『綺麗事』より・物語とモノ騙りと、そしてものがたり

2015-11-01 18:38:03 | 物書きさん、お題です
 物語が好きな子供は、往々にして現実に直面することで物語が架空の存在であると否応なしに気付かされる。そして大概は物語に裏切られた傷心を抱えながら物語を信じない大人になる。
 だが、ほんの少しの子供は、かつて架空の存在であると投げ捨てた物語の中に幾多の真実を見付けて拾い上げ、物語を楽しむ大人になるのだ。
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