カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第八十七夜・幻の森

2017-10-03 21:10:57 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『露に濡れつつ』と『苔色』を使って創作してください。

 山奥で一度だけ迷い込んだ空間は、濃霧の漂う中で下草と苔に覆われた地面から大人が数人がかりでも抱えきれないほどの幹を持つ樹が幹に蔦を這わせながら幾本も天高く聳え立ち、荘厳としか称しようのない雰囲気を醸し出していたが、山を下りた私に地元民は、あの山にそんな場所はないと口々に言った。
 それが本当だとしても嘘だとしても、あの空間はきっと神座かなにかで、本来人間が立ち入って良い空間ではないのだろう。
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第八十六夜・例え枯れ果てても

2017-10-02 23:56:42 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『恋ぞ積もりて』と『黄土色』を使って創作してください。

 心に咲いていた恋の花が枯れたので、残骸となった花殻を土中深くに埋めて忘れることにした。

 やがて時が過ぎ、あの頃の恋を思い出しもしなくなって久しい頃に「それ」は土中から全く新しい姿となって芽吹き、見慣れない姿のまま成長して、やがて見知らぬ新しい花を咲かせた。

 そして、その時、僕はようやく恋が永遠のものだと知った。
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