都市徘徊blog

徒然まちあるき日記

同潤会代官山アパートメント

2019-02-14 | 渋谷区  

 同潤会代官山アパートは、代官山駅から見上げる形の丘の上に建てられており、傾斜地の地形に沿って大小合わせて多くの住棟があった。全部で36棟、337戸が設けられていたという。老朽化のため建物群は1996年に解体され、跡地には代官山アドレスが建設され、超高層マンションとショッピングモールの街並みが現れた。


再開発準備組合があった中心部の建物前の広場的空間
左:23号館(文化湯が併設)、右:29号館

同潤会代官山アパート
所在地:渋谷区代官山町17
建設年:1925(大正14)
構造・階数:RC・2〜3F
解体年:1996(平成8)
Photo 1996.4.27


3階建ての住棟

 老朽化して建て替えられることが予想されていたからか、補修等はあまりされていなかった。コンクリート製の庇は内部の鉄筋が露出してボロボロ。玄関部分の庇の上には雑草が繁茂していたりもした。


29号館

 内部に入るのはためらわれたので、内部は全く見ていない。階段室や廊下、部屋の取り付き方がどのようになっているのかぐらい見ておけば良かったと今更ながら思う。モルタルで造られた幾何学的な模様が印象的。


再開発準備組合事務所が入っていた29号館

 撮影当時は既に再開発の方針が大体決まって、準備が始まっていた時期だったので、団地の集会所だったか食堂(はっきり覚えていない)は、再開発準備組合事務所になっていた。


3階建ての住棟(恐らく左が27号館で、右が26号館)

 樹木が結構大きくなっていて、緑の多い住環境だった。庭先で落ち葉炊きをしたりして、ゆったりとした時間の流れる団地。
 間取りは決して大きくなく、その意味では良い住居空間ではないのだが、なぜか大型のアメリカ車が停まっていたりして、お金のある人が住んでいるのかしらんと思った記憶もある。


敷地内への階段と3階建ての住棟(左:32号館、右:31号館)

 周辺は地形の起伏があるため、場所によってはエリア内へ上る階段が設けられていた。擁壁の上に住棟が聳える姿も印象的。


小規模な住棟:13号館

 不勉強でよく知らないのだが、四戸で一つの建物となっていた模様。


同じく小規模な住棟:4号館

 1階部分は反対側からアクセスするんだったかな? ちゃんと見ていなかったことに今頃気づいたりする。


低層棟の入口部分

 コンクリートモルタルで階段状の腰壁?を作り、ちょっとした造形をしている。二階から下りてきて屋外に出るときの感覚はちょっと面白かったかも知れない。


低層棟の入口部分:35号館

 建物ごとに少しずつ様子が違っているようで、こちらの建物は階段を二段上がって庇の下の扉を開ける形。木陰では猫がマッタリしていた。


銭湯・文化湯

 引き違い戸の玄関は、古い他の集合住宅の多くで見られる。近代的な鉄筋コンクリートの建物が引き戸だと、ちょっと違和感があるのだが、日本的な生活習慣からするとその方が馴染むのかも知れない。今でも、狭い階段室などの場合は、引き戸の方が良い気もする。


銭湯の入り口

 代官山アパートの建築群の敷地内には、銭湯、食堂、集会所などがあり、全体として一つの街となっていた。集合住宅団地という考え方は当時の日本ではまだ新しいものだったはず。海外の新しい住宅地の情報なども入ってきていたのかも知れないが、日本なりにそれを消化して代官山集合住宅地は造られた。銭湯が団地の中心部近くにあって、立派な建物になっているあたりはやはり日本的な気がする。


銭湯入口脇のタイル

 上はアーチ部分をかたちどるスクラッチタイル。下は柱部分で、凹凸模様のある陶板状のタイル。右側の壁はモルタルで、洗い出しのようなザラザラした手触りになっている。


団地の片隅にうち捨てられていたトヨペットクラウン。

 既に住民が退去を始めており、空き室になった建物が多くなり始めた頃だったと記憶している。その頃になると、不法投棄されるものも増え、車も置き去りになっていたりした。廃墟と廃車。ノスタルジーをかき立てる意味においてはフォトジェニックであり、つい撮影をしてしまった。
 しかし、後でこれを片づけるコストとか、勝手に捨てていく心根を考えると、「いい感じ」ではちょっと済まされない気がしてくる。

 代官山アパートでは3階建てが最大の建物で、階段の両側に住戸が取り付く形が多かった。ただ、住宅地図で改めて確認すると、ひな壇状になった斜面に建てられた29〜33号館は建物間を繋ぐ渡り廊下があったようで、これらの建物には建物内の廊下もあったのかもしれない。

2007.2.26
rewrite 2019.2.3
同潤会アパート - Wikipedia
(一社)東京建設業協会>>広報活動>>東建月報
  > 同潤会代官山アパートの再開発
同潤会代官山アパート - UR都市機構

Tokyo Lost Architecture
#失われた建物 渋谷区  #住宅系  #銭湯  #同潤会  #近代建築 
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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (深山桂子)
2020-09-08 20:22:43
私は代官山で生まれ育ち、同潤会アパートは私の同級生が住み、毎日暗くなるまで、遊んでいました。
全てのお家にも入りました笑
お祭りの後はみんなで、お風呂に入り、冬は外で焚き火で、焼き芋を焼いているおじさんにおやつに、焼き芋を頂き、幼少期の思い出が全てつまっています。
返信する
Unknown (asabata)
2020-09-08 22:41:40
深山桂子様
コメントありがとうございます。
代官山アパートで多くの方が暮らしていた頃の様子が活き活きと伝わってきました。
アパートがなくなって既に20年以上が経ち、当時のことを知らない人も増えているなか、貴重なお話だと思います。
返信する
Unknown (ムラタさん)
2021-03-16 20:44:03
懐かしい。。
当時29号館にはレディースの古着屋さん。
向かいの文化湯アーチの隣に美容院などのお店もありましたね。
かく言う私は取り壊し迄の最後の4年間、30号館の住人でした。
アーチから31号館の階段に抜ける景色が好きで風呂もガスも無い(ガス管は部屋に突き出してましたが…)部屋で古い物に囲まれ幸せな時代でした。
今思えば写真に残しておけばと悔やまれ此方のサイトに浸っております。
なんだか甘酸っぱい。。
返信する
Unknown (asabata)
2021-03-16 23:22:44
ムラタ様
コメントありがとうございます。
私自身は近隣住民などではなかったため、残念ながら内部の様子やお店の様子まではあまり覚えておりませんが、懐かしく見て頂けたのは嬉しいです。
返信する
ブログ内の写真をお借りしたい (株式会社トラスト・システム 三浦)
2022-11-15 12:53:16
初めまして、お世話になります、トラストシステム三浦と申します。
弊社広告代理を行っておりまして、新築マンションのHP作成にあたり、
都市徘徊ブログ様の「同潤会代官山アパートメント」内における、
一番上部の同潤会代官山アパートの写真をお借りしたくコメントいたしました。
そういったご相談は可能でしょうか?
可能であれば詳細をご連絡させて頂きたいです。
返信する
Unknown (asabata)
2022-11-15 18:31:24
株式会社トラスト・システム 三浦様
御連絡頂きありがとうございます。
さて、御依頼の件についてですが、
大変申し訳ありませんが、不動産広告媒体へのご利用は辞退させて頂きます。
よろしくお願い致します。
返信する
写真の件 (株式会社トラスト・システム 三浦)
2022-11-22 10:35:40
ご確認ありがとうございます。
内容承知いたしました、また機会があれば何卒よろしくお願いいたします。
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Unknown (タケシ)
2023-01-23 18:27:14
はじめまして。
こちらの銭湯は入った事があります。
凄い老眼鏡の耳の遠いお爺さんが、番台に座っていて何とかお風呂に入りました。
白いケロリンの風呂桶がある、見たことのない古い水道の金具。確かゲームセンターのジョイスティックみたいな形だったと思います。

写真のクジラクラウンの裏手にあるお店は、ハリウッドランチマーケットの姉妹店があったはずです。当時の雑誌にこの車の写真が載ってました。
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銭湯 (asabata)
2023-02-03 19:26:01
タケシさま
コメントありがとうございます。
銭湯には入っていなかったので往時の中の様子、興味深く拝見しました。
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