二年ぶりです。
札幌のテレビ塔近く。「創成川イースト」とも呼ばれるエリア。
そこにお店はあります。
元々は「オステリアヨシエ」と言う名のイタリアンでしたが、ちょうど二年ほど前に「吉花」としてリニューアル。
イタリアンのみならず、和食などの要素を含めた、シェフの吉江さんが生み出す「フュージョン」料理のお店となりました。
戸井産マグロと白魚のサラダ。カブのソースと自家製カラスミ、岩海苔。
ラーメンにしか見えませんが(笑)パスタです。
この佇まい。
この扉を開けると、今日はどんな世界が拡がるのか。
毎回、胸が高鳴るのです。
六名だけが座ることのできる、広々としたカウンター。
そのカウンターに繋がる様にキッチンが。
そして、六名のためだとしたら、贅沢なくらい広々とした店内。
席に着くと、吉江シェフが白木のケースに入った今宵の食材を紹介して下さいます。
そして、今夜自分が使うナイフを選ぶ、いつもの儀式を経て、目の前で調理が始まります。
戸井産マグロと白魚のサラダ。カブのソースと自家製カラスミ、岩海苔。
戸井は北海道の南、函館の近く。津軽海峡に面していて、つまりは「大間のマグロ」と同じエリアで獲れるマグロですね。
そこに自家製のカラスミ。
海の幸の宝石箱、ってのはまさにこのことだなと。
たまらず、日本酒を。
鯖と二十世紀梨のサラダ。山葵を添えてあります。
…コレが食べたくて秋に来たんです。
この鯖と梨の組み合わせは、「オステリアヨシエ」の頃からあった、吉江シェフならではのお料理。
来てよかった…と、しみじみ思いつつ、味わいました。
たちのボリート。イタリアの魚醤で味付けをしているそうです。そして、上には平取産松茸の炙りが。
北海道の平取町で採れる松茸は、特に最近、その美味しさを耳にすることが多くなりました。
ずっと食べたかったのですが、ついに対面することが叶いました。
目の前で、シェフが松茸を割いている最中からすでに、芳醇な香りを感じました。
「ボリート」とは、イタリアの料理法のひとつらしいのですが、魚醤を使ってるだけあって、鰹出汁のような風味が。
その濃厚な旨味と、松茸の豊かな香り。
添えられたすだちを絞れば、また爽やかな味わい。これまた松茸とよく合います。
至福。
こんな素晴らしい松茸を食べる機会は、二度と無いでしょうね。
ボタンエビの漬け。
マルサラ酒に八角やシナモンなどで漬け込んだ、いわばお寿司屋さんの「ヅケ」とのこと。
イタリアンなんだけど、和食だったり、中華で多用される香辛料だったり。
「吉花」ならではのお料理のひとつ、と言うことになるのではないかと。
鵡川のシシャモのフリッター。
胸びれがカッコいい。
フリッターですけど、つまりは天ぷらですよね。
「アイコ」と言うトマトで作ったドライトマトとイクラの茶碗蒸し。甲殻類の出汁が利いています。
この食材の組み合わせの絶妙さ。
トマトの旨味は、和食の素材とも合うんですね。
ポレンタと宗谷のホタテの炙り。
最初、丁寧な卵焼きかなと。
しかし、ポレンタでした。とうもろこしの粉で作った、滑らかな食感のポレンタは、香ばしく炙られてまさに「焼きとうもろこし」。
ホタテとの相性も素敵。
メインです。
鹿肉のスモーク、帯広の和田ごぼうと松の実添え。熊石町の釜炊きの塩で頂きます。
イタリアンなんだけど、和食。
噛み締めるたびに旨味が溢れる鹿肉。
これまた旨味の塊のような牛蒡。
松の実の食感と風味が、これまた合います。
締めは…
ラーメンにしか見えませんが(笑)パスタです。
パスタ・イン・ブロード。
「ブロード」はつまりは出汁だったりブイヨン、ってことですが、今回は鹿、牛、鴨、カツオを使っていると。贅沢なスープです。
で、パスタは北海道小麦と長沼の平飼い卵で手打ちされたもの。目の前で、四角い生地をパスタマシーンで麺にしてくださいました。
途中では、味変で黒胡椒を。
もはや、超高級なラーメン…(笑)。箸でいただきましたよ。
二条市場の「のれん横丁」に「オステリアヨシエ」があった時は、よく泥酔してお店に行き、締めのペペロンチーノをお願いすると言う、今ではとても出来ない振る舞いを僕はしてまして(笑)、未だにシェフにお詫びの言葉を述べてるのですが…
本当に締めのラーメン…的な、極上のパスタを頂ける日が来るとは。
デザートは、季節のフルーツにサバイヨンソース。マルサラ酒で風味付けされています。
昔から果物を使ったお料理が、唯一無二な吉江シェフの真骨頂とも言えると、僕は思うのですが、そんなシェフが果物を活かしきったデザートを。
素材の甘さを一切邪魔せず、その美味しさを高めるソース。
うっとりします。このデザートには。
そんな、幸せな時間はあっという間に過ぎてしまいます。
以前は父の誕生日をお祝いしたり、姪を連れてきたりと、節目ごとに訪れる事も多いのですが、「自分へのご褒美」としてはこの上ありません。
本当はもっと足繁く通いたいのですが…自分には「自分を褒めたい時」に行くのが身の丈に合っているんでしょう。
それでも、いつお伺いしても、まるでご自宅に招いてくださった様に温かく迎えてくださり、素晴らしいお料理でおもてなしをしてくださる吉江シェフには、いつも感謝しかありません。