’07/10/23の朝刊記事から
肝臓がん 血液1滴判定5時間
北大チーム特定糖鎖の存在解明
北大大学院先端生命科学研究院の西村紳一郎教授と同大学院医学研究科の藤堂省教授らの研究チームは22日、肝臓がんの存在を高精度で判定できる生体物質を発見したことを明らかにした。
細胞表面にあり、病気になると構造が変化する物質「糖鎖」の特定の組み合わせが、肝臓がん患者に特異的に存在することを突き止めた。
糖鎖の自動分析器も企業と共同開発し、数時間で少量の血液から対象の糖鎖を識別する方法も確立した。
独立行政法人科学技術振興機構(JST)のプロジェクト研究で、30日に東京で開かれる研究会で発表する。
糖鎖は遺伝子が生み出すタンパク質の情報を伝達・制御する物質で、がんや糖尿病などの疾患に関与しているとされる。
北大の研究チームは肝臓がん患者83人と健常者20人の血液中の細胞の糖鎖を分析したところ特定の4種類の糖鎖による3通りの組み合わせが、肝臓がん患者の方に健常者より10倍前後多く存在することを発見した。
肝臓がんの判定には、AFP(αーフェトプロテイン)という物質がよく使われるが、肝臓がんではない肝炎患者らにも反応してしまうことがあった。
研究チームが今回発見した肝臓がんの判定は103例のサンプルで誤差はゼロだった。
糖鎖の分析は従来、濾過や濃縮を繰り返し、多量の採血と4、5日以上の時間が必要だった。
西村教授は糖鎖の識別原理を基に樹脂メーカーの住友ベークライト(東京)、塩野義製薬(大阪)などと共同で糖鎖自動分析器の試作機を開発。
1滴の血液で1度に30-50種類の糖鎖を約5時間で調べられるという。
患者の負担が軽減されるほか、他の種類のがんに特徴的な糖鎖のパターンを迅速に見つけ易くなる。
研究チームは膵臓や大腸がんなどの研究にも着手、「より早期のがんや糖尿病など他の病気と、糖鎖の変化との関係分析にも当たりたい」(西村教授)としている。