’08/04/09の朝刊記事から
中国 火消し躍起 荒れる聖火リレー
世界各地巡り「再考を」の声
ロンドンに続きパリでも、チベット暴動をめぐる中国への激しい抗議に見舞われた北京五輪の聖火リレー。
中国政府は、聖火が5大陸を駆け巡る一大行事が中国批判の格好の場として利用されたことに危機感を強める。
国際オリンピック委員会(IOC)からは「リレー再考」の声も出始める中、26日にリレーが行われる長野は警備態勢の再検討に着手した。
「われわれとダライ・ラマの立場の違いは民族や宗教、人権をめぐる問題ではない。分裂と反分裂、暴力と反暴力の問題だ」
中国外務省の姜瑜報道局長は8日の定例記者会見で、聖火リレーの妨害をチベット独立派の行動と決め付け、チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世との対決姿勢を強調した。
中国政府は、チベット自治区ラサで3月14日に起きた暴動を「ダライ・ラマ集団が画策、煽動した」として国内メディアを動員し、反ダライ・ラマキャンペーンを展開中だ。
しかし、こうした強硬姿勢に国際的な批判が一段と高まるのは必至。
強圧的な少数民族対策は通用しなくなっており、「強硬策だけでは国際社会から孤立しかねない」(中国政府系シンクタンクの研究者)との危機感も広がっている。
聖火リレーの妨害行為に、IOCは当惑の色を隠さない。
ジャック・ロゲ会長は7日、「チベットでの出来事は各国の政府、メディア、非政府組織(NGO)から批判の渦を呼んでいる」と言明。
避けてきた中国の内政問題に踏み込み「チベット問題の迅速で平和的な解決」を呼び掛けた。
パリでの聖火リレーが途中で打ち切られる事態となった7日夜には、グニラ・リンドベリIOC副会長が「聖火リレーを利用するのはほとんど罪悪だ」と語り、怒りをにじませた。
聖火リレーが世界各地を巡るようになったのは、4年前のアテネ大会から。
古参のケバン・ゴスパーIOC委員は8日、「(聖火を採火した)オリンピアから聖火が開催国に真っすぐ行くというのが基本形。IOC理事会は将来の聖火リレーを再考するべき」と、次回以降の五輪で再び聖火リレーを開催国内に限定するよう提唱した。