’08/06/25の朝刊記事から
千葉沖漁船 10ー15分で沈没か 「重大海難事件」指定へ
千葉県の犬吠埼灯台沖で沈没した巻き網漁船第58寿和丸(22人乗り組み)が転覆後、10ー15分で沈没していたことが24日、僚船のレーダー情報などで分かった。
第二管区海上保安本部(塩釜)や関係者によると、生還したワイヤ長豊田吉昭さん(49)=青森県八戸市=ら3人は「右舷船首方向から最初の波を受け、同じ方向から2回目の波を受けて転覆した。船体が徐々に右舷側に傾き、戻る気配がなかった」と話している。
当時、第58寿和丸はエンジンを停止し船体を安定させる「パラアンカー」を下ろしていた。
2回の波の間隔は1ー2分。
転覆から約15分間、僚船からの呼び掛けの無線に応答はなく救難信号も確認されなかったという。
事故を受けて横浜地方海難審判理事所は、イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突に続き、「重大海難事件」に指定する方針。
二管本部は24日午後も船長今野恵洋さん(51)ら13人の捜索を続行。
第58寿和丸の漁網などを見つけた。
救助された3人の体調を考慮し、午後の聴取は行わなかった。
「三角波」の可能性
巻き網漁船第58寿和丸沈没事故では、「三角波」が原因の可能性が指摘されている。
過去にもたびたび大事故の原因となっており、専門家は「気象次第で突発的に起こる。対策は難しく不断の注意を続けるしかない」と指摘する。
三角波は突然起きる巨大波「一発大波」の一種で、複数方向からの波がぶつかってできる。
頂点が切り立ったような三角形で、荒天時では高さ10メートルを超えることもある。
日本近海では千葉県野島崎沖や紀伊半島沖などで起きやすい。
高等海難審判庁によると、過去の裁決書が三角波などの巨大波を何度も事故原因として指摘。
1980年には貨物船尾道丸(33,833トン)が千葉県野島崎沖で波高約20メートルの三角波とみられる大波に乗りあげてたたきつけられ、船体が切断されて沈没した。
気象庁海洋気象情報室は「船は一度波を受け、体勢を立て直す前にもう一度別方向からの波を受けると安定を失いやすい。三角波はたびたび事故の原因になっている」と指摘する。