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’08/05/12の朝刊記事から
北朝鮮 新たな拉致被害者示唆
安否伝達も 04年 内閣府事務官に
北朝鮮による日本人拉致問題で、北朝鮮側が2004年初め、ひそかに訪朝した拉致問題担当の内閣府事務官に対し、日本政府が当時「拉致被害者」と認定していた横田めぐみさんら15人以外に複数の被害者の存在を示唆、安否情報を提供する意向を伝えていたことが11日、政府関係者の話で明らかになった。
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生存しているかどうかは不明だが、北朝鮮が04年当時、ほかの拉致被害者の存在を把握していたとすれば、「拉致問題は解決済み」とする北朝鮮の立場と矛盾し、横田さんら被害者の安否情報の信憑性も揺らぐことになる。
この事務官は当時、内閣府拉致被害者・家族支援室の業務を担当、後に安倍晋三前首相の政務秘書官となった井上善行氏。
井上氏は共同通信の取材に「コメントしない」としている。
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関係者によると、井上氏は03年暮れから04年1月にかけ、私用を装うなどして複数回にわたって北朝鮮を訪問し、当局者と拉致問題について交渉を重ねた。
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井上氏は当時焦点となっていた蓮池薫さん夫妻ら被害者5人の家族の帰国や、北朝鮮が「死亡」などとした安否不明者10人の再調査などについて協議し、大筋で合意に達していた。
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交渉は電話も含めて行われ、井上氏が15人以外の拉致疑惑の解明を求めたのに対し、北朝鮮側は、複数の拉致被害者に関する安否情報を伝える意向を示したという。
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協議内容は当時、自民党幹事長だった安倍氏や首相官邸、外務省にも概略が報告された。
協議は政府間交渉に移行させるため合意点を確認する文書を作成する段階まで進んだが、04年2月、一部報道で井上氏の訪朝が明らかになった後、北朝鮮側が打ち切った。
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被害者家族の帰国はその後、公式ルートで交渉が行われ、同年5月の小泉純一郎首相(当時)の再訪朝で、実現した。 (下線は管理者)