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「昭和と師弟愛 植木等と歩いた43年」/小松政夫

2020年08月22日 | ブックレビュー


 小松政夫さんの「昭和と師弟愛 植木等と歩いた43年」という本を読みました。物凄く面白かったです。小松さんといえば、自動車のトップセールスマンが突如植木等さんの付き人になったという逸話を聞いていたのですが、その辺の経緯も全部書いてあって、実際どうだったかというのがよくわかりました。

 そもそも植木等さんが凄くダンディで優しくて素敵な人であり、尊敬する植木さんのために尽した小松さんが師匠の姿を見て真摯に活動したという事です。植木さんが特別な人だったといえばそうなのでしょうが、珍しい師弟関係なのではないかと思います。

 小松さんといえば、私は小学校に入る前くらいから記憶しているでしょうか。あの人の持ちネタとかギャグというと、淀川長治さんの物まね、電線音頭の司会者、しらけ鳥音頭、小松の親分さん、「どうして! どうしてなの! おせーて!」、「ニンドスハッカッカ、マー! ヒジリキホッキョッキョ! 」、「表彰状、あんたはエライ! 以下同文」、「どーかまーひとつ」、「ながーい目で見てください」、「いてーな いてーな」とか、ちょっと考えるだけでも色々出てきます。しかも、「それって小松さんのネタだったの?」という感じのもあって、そういうのはいろんな人が引用してるからであって、それだけ面白かったということでしょう。

 初めて見たというか意識したのは、土曜のお昼にやってたお笑い番組なのですが、完全に番組名忘れてました。が、この本によるとどうやら「お笑いスタジオ」という番組だったようです。他に誰が出てたかも覚えてないのですが、小松政夫さんはよく覚えてます。

 私としてはなんといっても「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」での、「悪ガキ一家と鬼かあちゃん」の伊東四朗さんとの絡みが最高で、毎週同じようなことやってるのになんであんなに面白いんだろうと思ってました。あんなに面白い人がいるんだろうかと。

 もっとも、ご本人は相当あちこちで苦労してて、淀川長治さんの物まねも大阪でのクレイジーキャッツのショーの幕間を繋ぐために苦し紛れに出したネタが受けたのだとか。それまで連日違うネタをやってたのがまったく受けず、「やっぱり小松の話じゃなくて休憩にしよう」と言われて、もう1日受けなかったらそれこそ降ろされてたという話も。

 あとは、意外だったのは「前略おふくろ様」の時のショーケンとのエピソードで、萩原健一さんの著書「ショーケン」でも出てこなかった話がありました。あれは意外でした。凄く上手くやってたのかと思ってたら…。

 そんなこんなですが、昭和の芸能の奥底がうかがえる本ではありますし、本当に植木等さんが素敵な人だったというのが行間からも伝わってきます。恐らく小松さんもそれを伝えたかったと思います。

 ちなみに、植木さんの「お呼びでない? こらまた失礼しました~!」というネタは、植木さん本人の談話では「控室で台本読んでるうちに大工の棟梁のかっこさせられて、付き人の小松政夫に『何やってるんですか。生放送だから出て下さい。』って言われて出ていったら全然違うシーンで、それで…」という事になってるそうです。が、実は小松さんは付き人になる前に、既にあのネタをテレビで見て大笑いしてたそうですから、その話は事実ではないと。あれは植木さんが小松さんを話のネタにしようと、後年あちこちでそういう風に語ってるうちに本人もそう思いこんでしまってたのかも…とのことですので、本当に素敵な師弟関係でした。

 ということで、ここ数年で読んだ芸能関係の本では一番面白くて読後感も爽やかな作品でした。興味のある方は是非お読み下さい。ただ、私はこれを図書館から借りてきたので買ったわけではありません。小松の親分さん、すいません…。