吉村昭先生の「羆嵐」読みました。元々はラジオで赤江珠緒さんがお奨めの本として語ってたのですが、「そういえば読んだことないな」と思って入手。赤江さんは「凄く怖いけど一気に読んでしまう。」との事でしたが、確かに先が気になって止まらなくなります。一昨日から読み始め、昨日は丁度1時間半ほど電車に乗ってたので読み終わりました。全部で250ページくらいで長くないし。
この本は、大正四年に北海道で起きた日本獣害史上最大の惨事といわれる事件を詳細に綴ったドキュメンタリー長編。その事件は、体長2.7メートル、体重383キロの巨大なクマがわずか2日間に6人の男女を殺害したというもの。
映像ではなく文字だけで熊が人を襲ったあとの惨状や、実際は熊を見てない人がその事故現場に入っただけで怯える様子を描くのは、さすが吉村昭先生です。基本的に、実際に熊が襲って来た現場にいた人はいないというか、そこにいた人はみんな死んでるわけで、同時にその様子を見た人はいないわけですが、周辺の証言からその怖さがヒシヒシと伝わってきます。
大正四年というと日露戦争から10年後くらいなので、熊の退治に周辺の地区から銃を持って集まってきた人の中には従軍経験というか、実戦の経験もあった人もいたのでしょうが、100人もいてまったく役に立たないというのがなんとも。警察も威張るだけで何もできませんし。
素人が手入れのされていない銃を持っていても役にたたないというのは、ペリーの黒船が来た頃と何も変わっていないという事ですね。さすがに、戦国時代の鎧兜で駆け付けた人はいなかったですが。
最後は一人の猟師と熊との戦いになるのですが、実話とはいえ本当にドラマのような展開です。(猟師の描き方については実際とは違う部分もあるようですが。) そして、調べてみたら、この作品はテレビドラマとラジオドラマになってるのを知りました。
テレビドラマは、1980年に「恐怖!パニック!!人喰熊 史上最大の惨劇 羆嵐」として放送されたそうです。その際の、熊と対峙する老練な猟師の役は三國連太郎。ラジオドラマは同じく1980年に放送されましたが、その際の猟師の役はなんと高倉健ですって。見てみたいし、聞いてみたい!
ただ、これを読んだせいで昨夜は予想通り悪夢。誰かの訃報が届くけど、それが誰かわからないが周囲の人はやたらと落ち込んでるという謎の夢でした。まあ、たまには悪夢を見てみたいという人は是非お読み下さい。