2019年5月10日 第一刷発行
株式会社講談社
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危機にある男を励ます女―『「雨の木(レイン・ツリー)を聴く女たち』
大きな悲哀を負った女性の再生―『人生の親戚』
障害を持った兄との生活を通して家族・社会・時代、人間の未来を考える妹―『静かな生活』
美しい国際派女優をめぐる過去の事件と新たなもくろみ―『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』
女性的なるものの力に宿る希望と再生を主題にした4つの傑作長編小説
【収録作品】
「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち
人生の親戚
静かな生活
臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ
──女性的なるものの力
大江健三郎
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。
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抜粋した最後の『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』
こちらは改題され『美しいアナベル・リイ』となっている。
・「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち
頭のいい「雨の木」
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「僕」はハワイで行われた文学シンポジウムに参加した(注:大江は実際に1977年にハワイ大学の東西文化研究所で開かれたセミナー「文学における東西文化の出会い」に参加している)
迎賓のパーティーが民間の精神療養施設で行われた。そこで「僕」はアガーテという女性から庭に立つ「雨の木」を教えてもらう。パーティーは施設の収容者によって開催されていたことが判明する。アガーテも施設の患者であった。
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「雨の木」を聴く女たち
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大学時代の旧友の英文学者くずれで虚言癖がある高安カッチャンが、ハワイ滞在中の「僕」を訪ねてくる。重度のアルコール依存で独特のパーソナリティの高安に「僕」は散々に振り回される。帰国後に「僕」は高安の妻の中国系アメリカ人のペネロープ・シャオ=リン・リー(ペニー)から手紙を受け取る。一通目の手紙で、アルコール依存の高安の再生のために、高安の構想をもとにした小説の合作を依頼される。二通目の手紙で高安がアルコール依存の果てに事故死したことを伝えられる。
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「雨の木」の首吊り男
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「僕」が数年前メキシコの大学で教鞭をとっていたときにアシスタントをしてくれた日本文学研究者のカルロス・ネルヴォが末期癌であると知らされる。知らせに悄然としながらも「僕」はメキシコ時代を回想する(注:大江は1976年、メキシコの国立大学コレヒオ・デ・メヒコで客員講師をつとめている)
カルロスの奇態な人物像、エキゾチックな異国の街での出来事が語られる。帰国の際の送別会の挨拶でカルロスは、自分が病気で痛みに苦しむことになった時は自殺をするのでその手伝いをして欲しいと述べていた。
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さかさまに立つ「雨の木」
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「僕」は日系人の主宰する反核集会に参加するために再びハワイに出向くが、集会は中止となる。ペニーが「僕」を訪ねてきて高安について話し、成り行きで性交する。帰国後ペニーから手紙が届く。同封された写真には精神病院の火災で焼失した「雨の木」の前に立つペニーとアガーテが写っていた。手紙でペニーは核の大火による先進各国の破滅は避けがたいと述べる。そして彼女とアガーテは大火後の「原水爆荷物カルト運動」に身を投じるためメラネシアに出向くという。
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泳ぐ男――水の中の「雨の木」
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「僕」が東京で通っているプールの常連の学生玉利くんはプールのサウナで、やはり常連のOL猪之口さんから性的な挑発を受けている。ある日猪之口さんが強姦されて殺害される。「僕」と同窓の高校の英語教師が犯人で、彼は犯行後すぐに自殺しているが、玉利くんが事件に関与している可能性を「僕」は想像する。
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読書会タイムオーバー!
言葉を持たない私・・