村上春樹
『海辺のカフカ ㊦』★★★
「『純粋な現在とは、未来を喰っていく過去の捉えがたい進行である。実を言えば、あらゆる知覚とはすでに記憶なのだ』
「ねえ大島さん、ひとりでいるときに相手のことを考えて、哀しい気持ちになることはある?」
「もちろん」と彼は言う。「おりにふれてある。とくに月が蒼く見える季節には。とくに鳥たちが南に渡っていく季節には。とくに――」
「どうしてもちろんなの?」と僕は尋ねる。
「誰もが恋をすることによって、自分自身の欠けた一部を探しているものだからさ。だから恋をしている相手について考えると、多少の差こそあれ、いつも哀しい気持ちになる。ずっと昔に失われてしまった懐かしい部屋に足を踏み入れたような気持ちになる。当然のことだ。そういう気持ちは君が発明したわけじゃない。だから特許の申請なんかはしないほうがいいよ」
僕はフォークを置いて顔を上げる。
「遠くにある古い懐かしい部屋?」
「そのとおり」と大島さんは言う。そしてフォークを宙に立てる。「もちろんメタファーだけど」
「私の中にはあなたが知らなくてはならないようなものなんてなにひとつないのよ」
「いいかい、戦いを終わらせるための戦いというようなものはどこにもないんだよ」
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3月1日に全線開通
常磐自動車道の最終開通区間、常磐富岡-浪江IC間14.3キロ
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