The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
“ISOを活かす―33. 工程変更は設計変更として管理することによって、品質問題を防止する”
今回は プロセス設計のあり方が テーマです。
【組織の問題点】
5年前にISO9001の認証を取得した電子機器メーカーA社では、設計変更に対しては 規格要求事項を順守していますが、製造工程の変更では その管理システムが定まっていません。工程変更はISO9001では明確に規定されていないからです。
このため、設計に関する品質問題は少なくなったのですが、製造工程変更のトラブルは減少していません。
A社はISOをどのように活用して 工程変更のトラブル対策をとるべきか、という課題です。
【磯野及泉のコメント】
著者・岩波氏は “ISO9001には、この工程変更の管理について述べている項目が見当たりません。” と指摘しています。しかし、“製造業における品質問題でもっとも大きな割合を占めるのは、製造工程の変更(材料変更を含む)に起因するものです。コストダウンや工期短縮のための工程変更による、製造不良や顧客クレームが増加しているからです。” とも述べています。したがって、工程変更もISO9001マネジメントでは重要な要素となります。
設計・開発には 製品そのものの仕様を決める製品設計と 製造工程の製造法案を決定するプロセス設計が あります。そして、ISO9001では原則的には “プロセス設計は 設計・開発に含まれない” とされています。
しかし、工程変更がISO9001マネジメントでは重要であるならば、プロセス設計も 設計・開発に含まれると考えるべきでしょう。1994年版でISO9002で認証取得した組織では “(実は)かなり多くの企業が設計・開発という機能を組織は持っているのだけれども、それを対象外として” いた*のですが、2000年版に移行する時に、審査する側(審査機関等)が それを認めないことにしました。この時に おそらく相当多数の組織が “プロセス設計を設計・開発プロセスの対象とすることで認証”を取得したようであり、そのように審査機関側が指導したようです。
*加藤重信 著 “ISO9001はこう使う―規格執筆者による解説”
また 特に 原材料メーカーでは “プロセス設計を設計・開発プロセスの対象とする”ようにしている事例が 多いようです。例えば 鉄鋼メーカーでは JISがあるため、製品設計をする余地は ほとんどありませんので、そのようにしているようです。また、むしろ JISのような規格にない要求事項である顧客からの固有要求事項に応えるための品質を実現するためには、プロセス設計が非常に重要であるという事情もあります。これは 原材料メーカーではいずれも同様な傾向ではないかと思われます。
そして自動車向け産業の規格であるISO/TS16949では 明確に 製品設計と プロセス設計を分けて規格要求事項を強化規定しています。
前述のように “プロセス設計は 設計・開発に含まれない” という考え方は、規格のどこにも明文化されていませんし、今や1994年版以前の 古い考えかたです。これは 一品管理の産業機械工業などに特有の発想のような気がします。これは、当初はISO9001が “受注機械エンジニアリング事業を念頭に置いた‘モデル’規格”*だったことによるものではないか、と思われます。
*岩本威生 著 “ISO9001:2000 解体新書”
いずれにせよ、今回の事例も 自分たちの組織にとって ISO9001規格の要求事項をどの程度まで、具体的にどうするかを主体的に判断することが大切です。そういう “リスク・マネジメント”の発想が重要なのは間違いありません。システムを必要以上に重くすることも リスクになります。
1994年版の前文には “規格は、このままの形で用いることを意図しているが、ときには、契約によって品質システム要求事項の一部を追加又は削除して修正(tailoring)することが必要になることもある。” と書かれていました。これは 重要な原則だと思うのです。
ですが、このあたりが ISO9001規格の根源的弱点のような気もします。
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