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吉村昭・著“大本営が震えた日”を読んで

今回は久しぶりに吉村昭の作品を読んだ。それは“大本営が震えた日”である。同氏の戦前の戦記物は、いつも乾いた表現で事実のみが書かれていて、昭和戦前の軍人社会の雰囲気が良くわかるような気がする。紹介文によれば、中華航空の旅客機“上海号”遭難事件にまつわる動向だけで“大本営が震撼した”状態だと思える。だが、実際に読んでみると、そこから宣戦布告前のマレー半島奇襲攻撃準備から直前の態勢まで入って行き、さらには連合艦隊の真珠湾攻撃まで話は進んで行くのだった。 この作品は1968年に書かれた。“あとがき”で“私にとって、この種のものは再び書くことはないだろう”と書いている。やはり綿密で膨大な取材は、相当に大変な作業であったのだろうと想像できる。しかし、著者は“この種のものを”再三再四書いて膨大な作品群として残している。この作品群はいわば歴史に埋もれた戦記なのだ。嫌だ嫌だ!と一方では思いつつも、きちんとした作品を残して行くのが作家の使命なのかも知れない。 . . . 本文を読む
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西研・著“ヘーゲル・大人のなり方”を読んで

先週は西研・著の“ヘーゲル・大人のなり方”を読んだ。“哲学者ヘーゲル”に関しての本で西研教授単独執筆はこの本しかないようだ。だが、この本実は1995年の発行で新刊書は今や入手不能。それをブックオフで昨夏偶然見つけてツンドクしていたのをようやく、カント、ルソーと“お勉強”して来て読んで理解できる条件が整って、今回読だつもりだった。 この本を紹介しているネット記事には“マルクス主義につながる悪しき思想の根源とされていたヘーゲルは過去のものになる。共同体と人間の関係について徹底的に考えた思想としてヘーゲル哲学を捉えた新しい入門書。”とある。だが、ヘーゲルを“悪しき思想”との表現は、この本のどこにもない。それどころか、一時流行ったというポストモダニズムの忌避した、“真理・道徳・共同体”こそが哲学上の重要テーマであり、ヘーゲルはこれに挑んだ哲学者であったという解説であった。 だが、この本を読んでもシックリ理解できていない部分が未だ多々ある。さすがに難解な内容である。特にこの本では、“弁証法”に関しての解説の“省略”があるので、また別の人のヘーゲル概説書を読んで、理解を深めたいと思っている。 . . . 本文を読む
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伊丹敬之・著“日本企業の復活力―コロナショックを超えて”を読んで

先週、ソニーの株価が暴騰した。特に4日は前日比1,015円高。先週1週間で2,400円の高騰だ。日立製作所も市場で高評価を受けている。1週間で500円を超える上昇を見た。この2社に改革が進んで90年代以降の不振からの脱却が見え始めているように感じられるように見える。ここに来て疾風怒濤を乗り越えた企業も出てき始めて、いよいよ日本の市場も潮目が変わったのではないかと思った。 そんな市場動向の中、日本を代表する経営学者の伊丹敬之・著“日本企業の復活力―コロナショックを超えて”の新聞宣伝を見て、日本企業群を俯瞰しての論評から、日本経済の方向性、期待できる点を知りたくなった。 読んでみて、私には目新しい事実もいくつかあったが、核心的な企業変革の課題は把握できなかったような気がする。しかし、そのための示唆は様々にあったと思う。それは私には、コーポレイト・アイデンティティとコア・コンピタンスを見失わないこと、“責任と権限”を明確化した“ジョブ型雇用”の徹底と成果主義人事であり、それを可能にする“人物”の登用が要諦であろうと思われたのだ。 . . . 本文を読む
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天満宮初詣と東洋陶磁美術館の展示品鑑賞

さて、先週は大阪の図書館へ借りた本の返却の時期だったので、ついでに大阪で何か観るものはないかと考えてみた。新型ウィルス禍で不謹慎とは思いつつ、先ずは中之島美術館で、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の開催があるのを思い出した。しかし新型ウィルス禍で1時間ごとに入館制限をしていて要予約。しかもほぼ予約が一杯で断念。 そうだ中之島には、東洋陶磁美術館がある。陶磁器に関しては超一級の美術館ではあるが、不思議にあまり人気が無い。そこで先ず、大阪市立中央図書館へ行き、返却と予約本の借り受け。次に天神さんへ初詣。その後、徒歩で中之島の東洋陶磁美術館へ行き陶磁器の鑑賞し、さらに近くの府立中之島図書館に図書返却として、午後一出発。 東洋陶磁美術館は大阪市立公会堂と向き合って建っている。かつて一度、ここへ来たこともあったが、その後は見に来ていないので、今回は全くの久しぶりだ。所蔵品の展示と、“黒田泰蔵”の特別展が見られた。所蔵品は豊富なので、その一部の展示でも充分見応えがあった。 . . . 本文を読む
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