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“ISOを活かす―56. 手順書を改訂してはじめて、是正処置が完了する”


今回は 是正処置への対応、やり方をめぐる課題です。

【組織の問題点】
5年前にISO9001の認証取得した食品会社のA社には、最近 “納入された商品の数量が注文内容と異なる” との顧客クレームがありました。調べてみると、注文内容の変更の電話連絡が 正確に伝達できていないのが原因でした。A社では、5つある営業所から工場への注文内容の変更の連絡は電話ですると“受注管理規定”で定められていましたが、クレームのあった営業所では、注文内容の変更はファックスで連絡するようにルール変更し、所内朝礼でルール変更を説明し、周知徹底させました。
ところが、その後 別の営業所で同じような問題が発生してしまいました。
これに対して A社はどのようにすれば、ほかの営業所で同様の問題の発生を防げるか、という課題です。

【ISO活用による解決策】
“このように是正処置をとった場合には、文書の改訂に結びつくと考えるべきでしょう。逆に文書を改訂しなくてもよい処置は、是正処置(再発防止策)ではないといってもよいかも知れません。すなわち、・・・・関係する手順書を改訂することによって、是正処置が完了することになります。”と著者は指摘しています。

【磯野及泉のコメント】
ここでの著者・岩波氏の是正処置(再発防止策)に関する指摘は 一般的なISOマネジメント関係者の見解で 概ね 当然のことであり、これが いわゆるマネジメントの第一歩だと思います。
しかし、今後 業務は複雑化する一方で、まして社業が拡大・発展しているような企業では ルールも複雑化して行きます。それに逐一 ルール変更、文書改訂、変更内容の周知徹底、と手順を踏んでいる内に また同じようなクレームが 発生することもありうると 思われます。

ルールの複雑化・膨大化には 普通の人は対応しきれません。それこそ 業務の効率を低下させてしまいます。また、徹底化にも 結構膨大な労力が必要です。中間管理職の業務に大きな負担となるでしょう。
こうした 問題には IT化で対処するというのが 今日的対策であると言えるでしょう。経営者は 自組織の業務システムの現状が もはや普通の人々には耐え切れないほど 複雑化・膨大化しているか よく把握しておくべきです。
例えば 本件のA社の事例で“電話連絡をファックスに変更”したことで、本質的解決(再発防止)になっているかというと 非常に心許ない状態です。ファックスを受けた工場側は いつもファックスが来たかどうか確認しておかなければなりません。あるいは、ファックスを発信した側は 確実に情報が工場に届いたかどうか、確認の電話を入れなければ安心できないというのが実情ではないかと思われます。そうなると、これまで電話だけで済んでいた業務が ルール上 ファックスと電話の二つの業務を実施しなければならなくなります。一見余計な 業務の増加です。(これはISO9001を導入したために増えた業務ではないが、普通の人はISO9001のせいだと言うのです。)

こうした 面倒くささをカバーしてくれるのが ITによるシステム化だと思います。IT化すれば 工場の現場に直接 受注内容の変更も伝達可能となり、逆に 業務の簡素化・迅速化につながります。
このように ITの効用を認め、IT投資が必要かどうか 経営者または経営層にある人は 常に業務現場を観察し、投資効果を十分に見極める必要があります。
また、こうした対応も 是正処置(再発防止策)の一つと考えるべきなのは当然です。
少なくともIT投資完了までの つなぎとして 一時的に従業員に負担を 我慢してもらう“文書改訂”は 必要でしょうが、この“つなぎ”状態の恒久化は 好ましくありません。後々、必ず問題を生じさせます。

このように 何でも ルール化、文書化で是正処置(再発防止策)完了、完璧ダ!と考えるのは 大間違いです。ソフト(取扱いや手順)面での対応より、ハード(装置・ITシステム)面での改善こそ 最善であると考えます。それこそ ヒューマン・エラーを排除するような ハード面の改善を理想とするべきです。

もう20年以上前の話ですが、当時 松下電器の社員から直接聞いた話ですが、幸之助氏が “製品の取扱い説明書が分厚くなっている。普通の人は、こんなもの読みはしない。説明書なしで、扱える製品を開発しろ。”と言われて 開発者は困っているとのことでした。幸之助氏の卓見だと思いました。(そこで当時 当事者は、とりあえず操作盤面からON,OFFなどの英語から日本語に切り替えたとのことでした。)
これこそ、ルール・ブックなしで、仕事ができるようにするという精神と同じ発想ではないでしょうか。

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