The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
ビジネスセミナー“植物工場最新動向”を聴講して
先週は、正倉院展を見学鑑賞したことを報告した。今週は その日の午後、“おおさかATCグリーンエコプラザ”で開催されたビジネスセミナー“植物工場最新動向~最大限に活かす方法~”の聴講に赴いたので、その概要を報告したい。
植物工場とは何か。野菜など食糧となる植物を農場ではなく、工場で効率的に生産しようというもの、と考えてよいようだ。そういったことから、人工的に化家具肥料漬けの水耕栽培で、太陽光の代わりに 人工の蛍光灯などにより化石燃料系のエネルギー多消費型の産業であるとの印象で、それで環境負荷の小さい将来ビジネスたり得るのだろうかという疑問が湧く。この“おおさかATCグリーンエコプラザ”にも、そうした野菜(レタスの一種)の栽培状況を展示しているが、一方で“環境維持”や“自然保護”を言いつつも、こうした産業を育成しようというのには なんとなく不調和を感じてしまうのが一般的イメージではないだろうか、そういう疑問を抱きつつ参加した。
セミナー・プログラムは次の通りであった。
[講演]“コンソーシアムによる植物工場の研究開発”
大阪府立大学大学院・工学研究科・教授/植物工場研究センター・副センター長:村瀬 治比古 氏
[事例紹介1]“土耕栽培の植物工場運営と今後の展開”
丸紅㈱機能化学品部・課長:藤原 澄久 氏
[事例紹介2]“マイ野菜市民農園は植物工場から吹く新しい風”
関西学院大学・総合政策学部・教授/サイエンス映像研究センター長:畑 祥雄 氏
どうやら、ここで最初に講演された 村瀬先生が研究開発のパイオニア的指導者のようだ。だが、残念ながら植物工場とは何で、現状どういう技術が一般化していて、問題点は何かについて明確な説明がなかった。
ここではすでにある程度のこの分野に関する知識を持っている人々に向けての講演という印象である。現状の研究開発の拠点は大学や独立行政法人などが中心で、全国に10箇所あり、研究対象により、経済産業省系が農林水産省系のいずれかの影響下にあるという。そして、これらの組織が企業体との連合体で どのように研究開発を推進していて、その体制で上手く行っているのか、問題点は何かの説明かと思いきや どうもそういうことが、講演の中心テーマでもなさそうであった。配付されたレジュメからはみ出したパワーポイントのコマを連発して、その説明を口早にされるばかりで、細部をフォローしながら理解してメモするのが容易でなく、結局 何を中心に参加者に説明したかったのか不明だった。そういう意図はなかったのだろうが、何だかごまかされた印象が多分に残った。
ここに 聞き取れて記憶に残った植物工場の特長を順不同で表記してみる。
①植物工場は 気候・気象に左右されず、計画的に完全閉鎖系で育成条件を徹底的にコントロールできる。また早期栽培可能で、生産性、回転率を上げられる。→完全閉鎖系なので、病害虫の被害を防止でき、衛生的な野菜栽培が可能。
②多様な品目が可能。一般的にはレタスと言われるが、キャベツ、白菜は勿論、イチゴ、トマト、キュウリ、小麦、豆類、芋などの根菜類も可能。(飢饉時の米食に代替できる食糧の確保も可能)
③核家族化というより、1人世帯の増加により、大ぶりの野菜は、わざわざ小さく切って小売販売されているが、こういった手間を省ける。例えば白菜は4分の一に切ってラップされて販売されているが、植物工場では大きさもコントロールして育成可能で、小ぶりの野菜を栽培することができる。←食材を有効に使える。(歩留まりの改善)
④エコである。植物工場では主電源はLNG発電が一般的だが、これには自然エネルギー(ソーラー、風、地熱等)も補助電源として使え、LNG発電自体からも排熱、二酸化炭素、水を回収して育成に使える。茎や葉などの残渣、食べ残しから水の回収、繊維は焼却又は バイオにより、メタンガスを生成によるエネルギー回収が可能とすることができる。←ただし、モデル工場を示し自然農法とj定量的に比較したデータは示されることはなかった。
⑤建屋さえあれば、植物工場の設置は可能であるので、場所を選ばない。したがって、都市での生産が可能となり、地産地消が可能である。つまり、フードマイレージを極小にすることが可能。使われなくなった工場建屋などは絶好の適地となる。
⑥工場は省力化を図れ、軽作業化が可能なので、高齢者、障害者の雇用促進に寄与できる。
⑦以上を考慮して、生産システムをハード、ソフトのパッケージとしてビジネス化できる。むしろ多様なビジネス・モデルの想定が可能で、地域に根ざす産業形態の構築が可能。
特に、村瀬先生の次の発言が 印象的であった。あまりにも人工的に過ぎることへの警戒感があるかも知れないが、そもそも化学肥料無しでは、現在の地球人口を賄うことは不可能である。19世紀のアンモニア合成が可能となって以降、有機農法では困難な食糧増産が可能となった。植物工場は その延長上にあるものだ。
なるほど、そういうものなのだろうか、というのが 私の感想である。ただし、自然農法との比較で、エネルギー特に化石燃料の消費度合いはどうなのだろうかという疑問は残ったままである。人が生存する限りにおいて全く化石燃料を費消せずに済ませることは不可能なことは理解できるのだが・・・・。
丸紅の藤原氏の実際的な説明でよやく 上記の不満は解消された気分だった。
植物工場は 完全閉鎖型と太陽光利用型とがあり、それぞれ土耕式と水耕式とがある。ここでは丸紅が開発した ヴェルデナイトという人工土壌を使った工場の事例を紹介された。ヴェルデナイトはピートモスの表面に粘土物質を加工したもので、保水性が非常に高い物質である。
丸紅大阪の本町ビルの地下にこの方式の植物工場があり、希望すれば見学が可能となっている由。その他 全国の実施事例を紹介していた。これまでは、種、苗、運営システム、関連機器、肥料の開発に商社機能を活かして推進して行くことでビジネス展開しているとのこと。これからは、植物工場の川下展開としての食品加工業、その先として畜産への飼料提供、その畜産から提供される肥料の利用、食品加工業から輩出された残渣をバイオマスエネルギー源として有効利用などのビジネス展開を目指しているということである。
関学の畑先生の場合はさらに訴求力のある説明だった。さすがに映像の専門家という印象。阪急電車・逆瀬川駅前のビルの地下2階空室の有効利用として宝塚市と協同で植物工場を開設し、“マイ野菜市民農園”として運営している状況の報告である。現状は 貸し農園が盛んであるが、民間の貸し農園は都市から遠くにあり、賃料も高い。自治体の運営する農園もあるが、これは賃料は安いが抽選であるため、名前だけで登録する人が居て実際に有効利用されていない事例が多いという問題がある。これに対し、地元駅前のビル地下での農園なので親しみやすく参加でき、安い賃料で運営可能であるとの状況説明であった。セミナー資料として配付された新聞記事によれば、“レンタル料は月4~8千円”とある。
植物工場について 実態を知ることもなく、一般的イメージのみで抱いていた印象をかなり変えることができたように思う。人口増大による食糧不足への1つの解かも知れないと思うようになったのは事実だ。しかし、徹底的に人工的に育成された野菜の健康への影響はどのようなものであろうか。また、化石燃料の使用に関して自然農法と定量的に比較したデータは どうなのだろうか。そういう疑問は残ったままだ。
いずれ、ある時、宝塚の市民農園か 丸紅の植物工場を視察・見学して確認してみたいと思っている。
植物工場とは何か。野菜など食糧となる植物を農場ではなく、工場で効率的に生産しようというもの、と考えてよいようだ。そういったことから、人工的に化家具肥料漬けの水耕栽培で、太陽光の代わりに 人工の蛍光灯などにより化石燃料系のエネルギー多消費型の産業であるとの印象で、それで環境負荷の小さい将来ビジネスたり得るのだろうかという疑問が湧く。この“おおさかATCグリーンエコプラザ”にも、そうした野菜(レタスの一種)の栽培状況を展示しているが、一方で“環境維持”や“自然保護”を言いつつも、こうした産業を育成しようというのには なんとなく不調和を感じてしまうのが一般的イメージではないだろうか、そういう疑問を抱きつつ参加した。
セミナー・プログラムは次の通りであった。
[講演]“コンソーシアムによる植物工場の研究開発”
大阪府立大学大学院・工学研究科・教授/植物工場研究センター・副センター長:村瀬 治比古 氏
[事例紹介1]“土耕栽培の植物工場運営と今後の展開”
丸紅㈱機能化学品部・課長:藤原 澄久 氏
[事例紹介2]“マイ野菜市民農園は植物工場から吹く新しい風”
関西学院大学・総合政策学部・教授/サイエンス映像研究センター長:畑 祥雄 氏
どうやら、ここで最初に講演された 村瀬先生が研究開発のパイオニア的指導者のようだ。だが、残念ながら植物工場とは何で、現状どういう技術が一般化していて、問題点は何かについて明確な説明がなかった。
ここではすでにある程度のこの分野に関する知識を持っている人々に向けての講演という印象である。現状の研究開発の拠点は大学や独立行政法人などが中心で、全国に10箇所あり、研究対象により、経済産業省系が農林水産省系のいずれかの影響下にあるという。そして、これらの組織が企業体との連合体で どのように研究開発を推進していて、その体制で上手く行っているのか、問題点は何かの説明かと思いきや どうもそういうことが、講演の中心テーマでもなさそうであった。配付されたレジュメからはみ出したパワーポイントのコマを連発して、その説明を口早にされるばかりで、細部をフォローしながら理解してメモするのが容易でなく、結局 何を中心に参加者に説明したかったのか不明だった。そういう意図はなかったのだろうが、何だかごまかされた印象が多分に残った。
ここに 聞き取れて記憶に残った植物工場の特長を順不同で表記してみる。
①植物工場は 気候・気象に左右されず、計画的に完全閉鎖系で育成条件を徹底的にコントロールできる。また早期栽培可能で、生産性、回転率を上げられる。→完全閉鎖系なので、病害虫の被害を防止でき、衛生的な野菜栽培が可能。
②多様な品目が可能。一般的にはレタスと言われるが、キャベツ、白菜は勿論、イチゴ、トマト、キュウリ、小麦、豆類、芋などの根菜類も可能。(飢饉時の米食に代替できる食糧の確保も可能)
③核家族化というより、1人世帯の増加により、大ぶりの野菜は、わざわざ小さく切って小売販売されているが、こういった手間を省ける。例えば白菜は4分の一に切ってラップされて販売されているが、植物工場では大きさもコントロールして育成可能で、小ぶりの野菜を栽培することができる。←食材を有効に使える。(歩留まりの改善)
④エコである。植物工場では主電源はLNG発電が一般的だが、これには自然エネルギー(ソーラー、風、地熱等)も補助電源として使え、LNG発電自体からも排熱、二酸化炭素、水を回収して育成に使える。茎や葉などの残渣、食べ残しから水の回収、繊維は焼却又は バイオにより、メタンガスを生成によるエネルギー回収が可能とすることができる。←ただし、モデル工場を示し自然農法とj定量的に比較したデータは示されることはなかった。
⑤建屋さえあれば、植物工場の設置は可能であるので、場所を選ばない。したがって、都市での生産が可能となり、地産地消が可能である。つまり、フードマイレージを極小にすることが可能。使われなくなった工場建屋などは絶好の適地となる。
⑥工場は省力化を図れ、軽作業化が可能なので、高齢者、障害者の雇用促進に寄与できる。
⑦以上を考慮して、生産システムをハード、ソフトのパッケージとしてビジネス化できる。むしろ多様なビジネス・モデルの想定が可能で、地域に根ざす産業形態の構築が可能。
特に、村瀬先生の次の発言が 印象的であった。あまりにも人工的に過ぎることへの警戒感があるかも知れないが、そもそも化学肥料無しでは、現在の地球人口を賄うことは不可能である。19世紀のアンモニア合成が可能となって以降、有機農法では困難な食糧増産が可能となった。植物工場は その延長上にあるものだ。
なるほど、そういうものなのだろうか、というのが 私の感想である。ただし、自然農法との比較で、エネルギー特に化石燃料の消費度合いはどうなのだろうかという疑問は残ったままである。人が生存する限りにおいて全く化石燃料を費消せずに済ませることは不可能なことは理解できるのだが・・・・。
丸紅の藤原氏の実際的な説明でよやく 上記の不満は解消された気分だった。
植物工場は 完全閉鎖型と太陽光利用型とがあり、それぞれ土耕式と水耕式とがある。ここでは丸紅が開発した ヴェルデナイトという人工土壌を使った工場の事例を紹介された。ヴェルデナイトはピートモスの表面に粘土物質を加工したもので、保水性が非常に高い物質である。
丸紅大阪の本町ビルの地下にこの方式の植物工場があり、希望すれば見学が可能となっている由。その他 全国の実施事例を紹介していた。これまでは、種、苗、運営システム、関連機器、肥料の開発に商社機能を活かして推進して行くことでビジネス展開しているとのこと。これからは、植物工場の川下展開としての食品加工業、その先として畜産への飼料提供、その畜産から提供される肥料の利用、食品加工業から輩出された残渣をバイオマスエネルギー源として有効利用などのビジネス展開を目指しているということである。
関学の畑先生の場合はさらに訴求力のある説明だった。さすがに映像の専門家という印象。阪急電車・逆瀬川駅前のビルの地下2階空室の有効利用として宝塚市と協同で植物工場を開設し、“マイ野菜市民農園”として運営している状況の報告である。現状は 貸し農園が盛んであるが、民間の貸し農園は都市から遠くにあり、賃料も高い。自治体の運営する農園もあるが、これは賃料は安いが抽選であるため、名前だけで登録する人が居て実際に有効利用されていない事例が多いという問題がある。これに対し、地元駅前のビル地下での農園なので親しみやすく参加でき、安い賃料で運営可能であるとの状況説明であった。セミナー資料として配付された新聞記事によれば、“レンタル料は月4~8千円”とある。
植物工場について 実態を知ることもなく、一般的イメージのみで抱いていた印象をかなり変えることができたように思う。人口増大による食糧不足への1つの解かも知れないと思うようになったのは事実だ。しかし、徹底的に人工的に育成された野菜の健康への影響はどのようなものであろうか。また、化石燃料の使用に関して自然農法と定量的に比較したデータは どうなのだろうか。そういう疑問は残ったままだ。
いずれ、ある時、宝塚の市民農園か 丸紅の植物工場を視察・見学して確認してみたいと思っている。
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