The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
先月5月に自粛生活の中で見た映画紹介
東京オリパラ開催が近付くに従い、新型コロナウイルス感染リスクについて強い警告を発している政府対策分科会の尾身茂会長に対し、菅義偉首相が激怒しているという報道がなされている。
政権内部での政策形成に問題はないのか。内部コミュニケーションは適切なのであろうか。首相のパーソナリティに、この点で最も問題を抱えているのではあるまいか。
それよりも、政権内部からの国民に向かっての外部コミュニケーション力も問われている。コロナ下での東京オリパラ開催は「理屈に合わない」「非合理だ」と思われ、日本の政治が論理的な判断や思考が失われた原因について、論理学者の高橋昌一郎・国学院大教授の見解が、朝日新聞に掲載されていた。その記事を引用・参照し、その趣旨を以下に紹介したい。
当初、コロナウィルスはえたいが知れず、専門家でさえ未来を予測するのがむずかしい状況で次々と重大な決断を下さなければならない政治家が、非常に困難な立場に立たされていたことは理解できる。だからこそ、“昨年3月、東京五輪・パラリンピックが1年間延期”する決断を下し、時間稼ぎをするのは懸命だった。
その後、もし政府が徹底した入国規制や人の流れの抑制を実施し、オリパラ直前までに国民の大半がワクチン接種を終えて新規感染者がゼロに近付いて、集団免疫を獲得したと認められる状態に持ち込めていたのならば、オリパラ開催はまさに「人類が新型コロナウィルスに打ち勝った証し」として、世界から称賛されていたにちがいない。
日本政府はこの論理を見失ったため、すべてがチグハグになったように映る。つまり昨年の夏から冬にかけて政府は「GoToトラベル」と「GoToイート」キャンペーンを行い、感染を拡大させた。今春には変異ウィルスの猛威で重症者が急増し、各地で医療態勢の崩壊が迫っているなかで、大会関係者が多くの医療従事者を確保しようとして非難を浴びた。或いは、緊急事態宣言下にもかかわらず、会食する政治家がいた。深夜まで大人数で送別会を開き、その後に集団感染を起こした官僚もいた。ようするに、コロナを「過小評価」した(政権側の)人々が現在の危機的状況を招いたといえる。オリンピックを成功させたければ、日本は右往左往せずに、一貫して「危機管理の論理」を追及すべきだった。
実は、政府が論理を見失っていく兆候は、コロナ以前からあった。国会の答弁では、「ご飯論法」などと呼ばれるような、意図的に論点をずらす奇妙な習慣が生まれた。質問に正面から答えず、とにかく時間を稼ぐ。誰も責任を取ることなく、謝りもしない。国会の質疑応答全体が、もはやコントのようにさえ見える。
そして高橋教授は、何故そうした政治の非論理性については、“ネットの発達がもたらした「情報過多」だ”と決めつけている。だが、それが根本源ではないと私は思う。根本的には、日本人自身が“論理的であること”が“難しい”と感じる傾向にあることだと思う。それは“正解”が用意された中で、その“正解”を探り当てるというパターン化した教育が徹底的に行われたことに原因があるのではないか。世の中には正解のない問題ばかりで、政治には結果責任だけが求められる。だからこそ、己自身による論理思考だけが頼りで、決断を下して行かなければならないにもかかわらず、模範解答の“正解”を探り当てることが、至上命題だったのがこれまでの日本社会だったのだ。
ところが現実社会は何が正解かは直ちには分からない。その正解のない世界に、何とか“正解”に近い解を求める方法が、論理思考である。こういう訓練をするのが、“哲学的思考”なのだ。だが、日本ではこれまでこうした論理を追及する教育は軽視されて来た。というより、無視され全くなされて来なかった。その状態に戸惑って“うろたえている”のが、現在の日本の政権政府であり、国民なのだ。
論理的に詰めて行くと、政策形成過程での論理力不足を問題視すればこのような結論に至る。しかし、問題は論理形成の前提条件の設定にもある。
それは、まず新型コロナウィルスの感染拡大を、この日本においてどの程度の深刻さと評価するのかの議論が必要なのではないか。例えば、この問題を日本にとっては“さざ波”程度であると表現して内閣参与を止めざるを得なくなった人物も居る。つまり、ここまでの感染拡大の深刻さを客観的に評価すると、日本人の重症者数や死亡者数は欧米のそれと比べると正に“さざ波”程度であり、通常のインフルエンザと何ら変わりないものとして扱っても問題ないものと認識するのか否かの前提の議論を絶えずしっかり行うべきであったのではないか。
もし、通常のインフルエンザと何ら変わりないレベルの感染症として扱えば、関西、特に大阪で見られた医療態勢の崩壊はなかったのではないか。こうした問題を、現象のリスクとその対応への結果、現れる損失とを比較考量して厳密に評価するべきではないか、という議論には一考の余地は大いにある。だが、それも国民の間に厳密な論理力と判断力があってのことかもしれない。
何よりも政策課題は、医療態勢の崩壊を招かないために何を為すべきかであろう。不要な死者や経済的に或いは精神的に不幸になる人々の数を極力抑制するために何をどうするべきかである。このコロナ禍で、自殺者が増えたとの報告も見られる。そうしたことを少なくするための論理的政策形成が必要なのだ。特にこの国は精神衛生面での意識が低く、精神医療も十分であるとは思えないのも問題である。精神科の医師もレベルが低く、金儲け主義で精神医に係ると返って酷い目にあうという声も多々あり、明らかに問題があっても控えることがあるように思うからだ。
“さざ波”程度であるとの認識を持った人物を眼前から追放して、それで安心する、そんな感情論のみが横行するこの国では、適切な議論が行えるとは到底思えない。
オリパラ開催のための準備も結構着々と進んでいるという声も聞く。もし、そうならば組織委からの開示があるべきだ。こうした危機的状態の中では、日々の結果をブリーフィングするべきではないか。オリパラ担当相はそのための御大臣ではないのか。そういう情報開示があってはじめて適切な議論ができるのだ。
こう考えて来ると物心両面で、この国ははるかに世界の後進国であるような情けない気分になる。
一方、日当20~35万円の人件費合計80万円を広告代理店(㈱東急エージェンシー)デレクター一人に組織委が支払う契約をしているとのテレビ報道が週末あった。急にレベルの低い話になって申し訳ないが、40日間で3200万円に上るのか?オリパラ絶対開催にはこういう背景があるのか?菅義偉首相が尾身会長に激怒する原因がここにあるのか。
またボランティアの辞退者が増えて、人手が無く、同じ仕事を有償で募集しているという。同一労働同一賃金は当たり前だが、一方では無償、一方では優勝と言う矛盾を抱えているのが現実だとうも言う。
こういった事実から、日本が一層だらしない利権国家に堕落している現実に、さらに情けなくなる。
ワクチン接種を円滑に進めるため国が新たに導入した接種記録を個人単位で管理するシステムVRSが、一部の自治体で十分に利用されていないことが分かったという。国は接種の全体像の把握が難しくなって接種計画に支障が出るおそれもあるとのこと。
各自治体に国民の接種情報とマイナンバーの紐づけを義務化しなかったのは何故か、不思議なのだ。接種の全体像の把握にはこれが決め手だが、これもVRSの開発と微妙に利権がからんでいるという噂がある。これが事実なら、この国は全く腐っている。
さて、今回は月初めにつき、自粛生活で始めた恒例の先月見た映画の紹介としたい。
先ずは、NHK-BSプレミアムのBSシネマで見たのは次の通り。(題名の前の数字は鑑賞日)
5/3“ベン・ハー Ben-Hur”1959年米 ウィリアム・ワイラー(監督)チャールトン・ヘストン、スティーヴン・ボイド
5/4“日本沈没”1973年日 森谷司郎(監督)小林桂樹、丹波哲郎、藤岡弘、いしだあゆみ、
5/5“大脱走 The Great Escape”1963年米 ジョン・スタージェス(監督)スティーブ・マックイーン 、ジェームズ・ガーナー、チャールズ・ブロンソン 、ジェームズ・コバーン 、リチャード・アッテンボロー 、デヴィッド・マッカラム
5/6“知り過ぎていた男 The Man Who Knew Too Much”1956年米 アルフレッド・ヒッチコック(監督)ジェームズ・ステュアート、ドリス・デイ
5/10“タクシー運転手~約束は海を越えて~A Taxi Driver”2017年 韓国 チャン・フン(監督)ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン
5/11“エデンの東East of Eden”1955年米 エリア・カザン(監督)ジェームズ・ディーン,ジュリー・ハリス,レイモンド・マッセイ,ジョー・ヴァン・フリート
5/12“サイコPsycho”1960年 米 アルフレッド・ヒッチコック(監督)アンソニー・パーキンス,ジャネット・リー
5/13“我が谷は緑なりきHow Green Was My Valley”1941年 米 ジョン・フォード(監督)ウォルター・ピジョン、モーリン・オハラ、ドナルド・クリスプ、ロディ・マクドウォール
5/14“拳銃王The Gunfighter”1950年 米 ヘンリー・キング(監督)グレゴリー・ペック、ヘレン・ウェスコット、ミラード・ミッチェル
5/18“恋人たちの予感When Harry Met Sally…”1989年 米 ロブ・ライナー(監督)ビリー・クリスタル、メグ・ライアン
5/19“めまいVertigo”1958年 米 アルフレッド・ヒッチコック(監督)ジェームズ・ステュアート、キム・ノヴァク
5/25“バニーレークは行方不明Bunny Lake Is Missing”1965年 英 オットー・プレミンジャー(監督)ローレンス・オリヴィエ、キャロル・リンレー、キア・デュリア
5/26“引き裂かれたカーテンTorn Curtain”1966年 米 アルフレッド・ヒッチコック(監督)ポール・ニューマン、ジュリー・アンドリュース
5/27“ラストエンペラーThe Last Emperor”1987年 伊・中・英・仏・米合作 ベルナルド・ベルトルッチ(監督)ジョン・ローン、ジョアン・チェン、ピーター・オトゥール、坂本龍一、ケイリー=ヒロユキ・タガワ
5/28“新・ガンヒルの決斗Shoot Out”1971年 米 ヘンリー・ハサウェイ(監督)グレゴリー・ペック、パット・クイン、スーザン・ティレル
5/29“ハリーの災難The Harry with Trouble”1955年 米 アルフレッド・ヒッチコック(監督)エドマンド・グウェン、ジョン・フォーサイス、シャーリー・マクレーン
5/31“戦場Battleground”1949年 米 ウィリアム・A・ウェルマン(監督)ヴァン・ジョンソン、ジョン・ホディアク、リカルド・モンタルバン、ジョージ・マーフィ
“ベン・ハー”は以前に見たことがあり、2度目はどうかと見てみたが、申し訳ないが感動巨編とは思えなかった。
“大脱走”は昭和時代の欧米男優総出演の観あり、各男優の個性があふれていた。昔も、テレビで放映されたのを見ている。多分、カットはあったのではないだろうか。マックイーンがオートバイで国境線をジャンプしようとして、失敗するのが見せ場?
“エデンの東”は確か予備校生の時に、予備校の英語教師だった神戸大の先生が解説していたので、見たことを思い出す。内容は何故かすっかり忘れていて、2度目でも感動できた。
“知り過ぎていた男”、“サイコ”、“めまい”、“引き裂かれたカーテン”、“ハリーの災難”は、アルフレッド・ヒッチコック監督作品。“サイコ”は2度目だが、まともに見たのは初めて。ラストを知っていたのでこれも面白み低減。“ハリーの災難”はヨシモト喜劇的ギャグ?“引き裂かれたカーテン”はスパイものが、少々迫力不足の印象。
“バニーレークは行方不明”はヒッチコック監督作品ではないが、よく似たタッチの作品だ。
“我が谷は緑なりき”(1941年)は、“喜びも悲しみも幾歳月”(1957年松竹・木下惠介監督)の灯台守を思い出した。木下監督が参考にしたかも知れない。これはイギリスの炭鉱夫達と家族、町の話。
“ラストエンペラー”、これも2度目。今となっては最初は何で見たのか記憶がない。だが、そんなはずはないのだが、カットされた部分があるのではないか、と思える部分がある。コオロギの登場部分がもっと長かった記憶がある。満州国成立に御存知関東軍が大きく深くかかわっていたはずだが、その部分がほとんどなく、あっさり過ぎている。溥儀は昭和天皇にも会っているにもかかわらず、だ。勿論、坂本龍一、高松英郎等日本人俳優の出演はあるが、制作に関与していないのが残念。残念ながら、ノモンハン事件も日中戦争もシーンとしては登場しない。
“拳銃王”、“新・ガンヒルの決斗”は西部劇。いずれもBSシネマで2度目。
“恋人たちの予感”は若きメグ・ライアンが見れる。そういえば、最近見かけない。
今回、邦画は小松左京・原作のSF“日本沈没”だけ。これは地球物理学者の竹内均が出演していて、プレートテクトニクスの解説をしているが、実際にはストーリーに影響する台詞はない。原作は読んではいないが、小松左京氏は祖国を失った日本人が外国でどう生活を展開できるのかが問題だろうと思って、書いたという意味のことを言っていたと記憶するが、その部分についてはラストの僅かなシーンだったので、少々ガッカリ。気に懸けるべき要因が多すぎて、小説化困難としたのだろう。
“タクシー運転手~約束は海を越えて~”は、珍しい韓国映画で、韓国作品は見るのは初めて。1980年の光州事件の実話が基になっているという。実際には深刻な事件だったと思われるが、何となくコミカルに扱っていて、見る側の負担を軽くしている印象がある。事件の真っ最中の光州に潜入・脱出するドイツ人記者をタクシー運転手が手伝う話。
ネット経由で鑑賞したのは次の通り。中には、無料映画も含まれるが、内容はなかなか侮れない。
5/2“アスUs” 2019年 米 ジョーダン・ピール(監督)ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク、エリザベス・モス、ティム・ハイデッカー
5/3“レッド・エージェントDespite the Falling Snow”2016年 英・加 シャミム・サリフ(監督)レベッカ・ファーガソン、 サム・リード、アンチュ・トラウェ
5/5“8月はエロスの匂い”1972年 日 藤田敏八(監督)川村真樹、片桐夕子、永井鷹男、むささび童子、粟津號
5/6“マルティナは海Son de Mar”2001年 スペイン ビガス・ルナ(監督)レオノール・ワトリング ジョルディ・モリャ エドゥアルド・フェルナンデス セルジオ・キャバレロ
“アスUs”はGWで帰郷した娘が、ネットで見せてくれた。キッカイな現代映画との記憶しかない。
“レッド・エージェント”は米ソ冷戦時代の亡命スパイ映画。モスクワが主な舞台で、英語表記のDespite the Falling Snowの通り、雪が降るシーンが確かに印象的ではあった。レベッカ・ファーガソンは一人二役だが、その必要性ありや。ミッションインポッシブルでもスパイ役で出演の由。
“8月はエロスの匂い”は作られた当時、一世風靡のポルノ女優主演。意味不明の芸術性を醸し出したつもりか。
“マルティナは海”も何かスペインの昔話が背景にあるのだろうか。話の中の主人公の夫の行動や心理が不可解だが、見応えはあった。
次は、これまでテレビで放映されたものをこまめに録画しておいたものを見たもの。
5/1“エクストラクションExtraction”2015年 米 スティーヴン・C・ミラー(監督)ケラン・ラッツ、ブルース・ウィリス、ジーナ・カラーノ
5/2“ダイ・ハード3 Die Hard: With a Vengeance”1995年 米 ジョン・マクティアナン(監督)ブルース・ウィリス、ジェレミー・アイアンズ、サミュエル・L・ジャクソン
5/4 “難波金融伝ミナミの帝王34・ブランドの重圧”2005年 日 萩庭貞明(監督)竹内力、岩崎ひろみ、西興一朗、天田益男、ゆうき哲也、池田政典、増田未亜、萩原流行 ほか
5/9“難波金融伝ミナミの帝王29・闇の代理人”2004年 日 萩庭貞明(監督)竹内力、川島なお美、桐谷健太、天田益男、ゆうき哲也、梅垣義明、螢 雪次朗、栗島瑞丸、池乃めだか ほか
5/23“エネミーラインBehind Enemy Lines”2001年 米 ジョン・ムーア(監督)オーウェン・ウィルソン、ジーン・ハックマン
5/24“スピード2 Speed 2: Cruise Control”1997年 米 ヤン・デ・ボン(監督)サンドラ・ブロック、ジェイソン・パトリック、ウィレム・デフォー
“エクストラクション”と“ダイ・ハード3”は、ブルース・ウィリスのアクションもの。気分的にすぐれない時に見るのが良い。
“難波金融伝ミナミの帝王”の2作は竹内力主演のヒット作。金融のカラクリを熟知しているのが面白い。
“エネミーライン”、“スピード2”には明らかにカットされているシーンがあると分かる。このような時間潰しのためだけの放映は、各テレビ局も止めるべき時ではなかろうか。
この際、かつて安値で買っておいておいたDVDを見た。御存知、マリリン・モンロー。
5/25“7年目の浮気The Seven Year Itch” 1955年 米 ビリー・ワイルダー(監督)マリリン・モンロー、トム・イーウェル
浮気をするつもりだったが、結局はそれを止めて、仕事も放棄して休暇に入った妻子の滞在先のへ駆けつけるサラリーマンの話。その浮気のターゲットになったのが、マリリン・モンロー。写真で見るよりも映像で見る方が、可愛い印象なのが不思議。有名な地下鉄の通る場面でスカートがめくり上るシーンは本編では無い。PR用のポスターの画像なのか。
先月は以上28本の映画を鑑賞した。
政権内部での政策形成に問題はないのか。内部コミュニケーションは適切なのであろうか。首相のパーソナリティに、この点で最も問題を抱えているのではあるまいか。
それよりも、政権内部からの国民に向かっての外部コミュニケーション力も問われている。コロナ下での東京オリパラ開催は「理屈に合わない」「非合理だ」と思われ、日本の政治が論理的な判断や思考が失われた原因について、論理学者の高橋昌一郎・国学院大教授の見解が、朝日新聞に掲載されていた。その記事を引用・参照し、その趣旨を以下に紹介したい。
当初、コロナウィルスはえたいが知れず、専門家でさえ未来を予測するのがむずかしい状況で次々と重大な決断を下さなければならない政治家が、非常に困難な立場に立たされていたことは理解できる。だからこそ、“昨年3月、東京五輪・パラリンピックが1年間延期”する決断を下し、時間稼ぎをするのは懸命だった。
その後、もし政府が徹底した入国規制や人の流れの抑制を実施し、オリパラ直前までに国民の大半がワクチン接種を終えて新規感染者がゼロに近付いて、集団免疫を獲得したと認められる状態に持ち込めていたのならば、オリパラ開催はまさに「人類が新型コロナウィルスに打ち勝った証し」として、世界から称賛されていたにちがいない。
日本政府はこの論理を見失ったため、すべてがチグハグになったように映る。つまり昨年の夏から冬にかけて政府は「GoToトラベル」と「GoToイート」キャンペーンを行い、感染を拡大させた。今春には変異ウィルスの猛威で重症者が急増し、各地で医療態勢の崩壊が迫っているなかで、大会関係者が多くの医療従事者を確保しようとして非難を浴びた。或いは、緊急事態宣言下にもかかわらず、会食する政治家がいた。深夜まで大人数で送別会を開き、その後に集団感染を起こした官僚もいた。ようするに、コロナを「過小評価」した(政権側の)人々が現在の危機的状況を招いたといえる。オリンピックを成功させたければ、日本は右往左往せずに、一貫して「危機管理の論理」を追及すべきだった。
実は、政府が論理を見失っていく兆候は、コロナ以前からあった。国会の答弁では、「ご飯論法」などと呼ばれるような、意図的に論点をずらす奇妙な習慣が生まれた。質問に正面から答えず、とにかく時間を稼ぐ。誰も責任を取ることなく、謝りもしない。国会の質疑応答全体が、もはやコントのようにさえ見える。
そして高橋教授は、何故そうした政治の非論理性については、“ネットの発達がもたらした「情報過多」だ”と決めつけている。だが、それが根本源ではないと私は思う。根本的には、日本人自身が“論理的であること”が“難しい”と感じる傾向にあることだと思う。それは“正解”が用意された中で、その“正解”を探り当てるというパターン化した教育が徹底的に行われたことに原因があるのではないか。世の中には正解のない問題ばかりで、政治には結果責任だけが求められる。だからこそ、己自身による論理思考だけが頼りで、決断を下して行かなければならないにもかかわらず、模範解答の“正解”を探り当てることが、至上命題だったのがこれまでの日本社会だったのだ。
ところが現実社会は何が正解かは直ちには分からない。その正解のない世界に、何とか“正解”に近い解を求める方法が、論理思考である。こういう訓練をするのが、“哲学的思考”なのだ。だが、日本ではこれまでこうした論理を追及する教育は軽視されて来た。というより、無視され全くなされて来なかった。その状態に戸惑って“うろたえている”のが、現在の日本の政権政府であり、国民なのだ。
論理的に詰めて行くと、政策形成過程での論理力不足を問題視すればこのような結論に至る。しかし、問題は論理形成の前提条件の設定にもある。
それは、まず新型コロナウィルスの感染拡大を、この日本においてどの程度の深刻さと評価するのかの議論が必要なのではないか。例えば、この問題を日本にとっては“さざ波”程度であると表現して内閣参与を止めざるを得なくなった人物も居る。つまり、ここまでの感染拡大の深刻さを客観的に評価すると、日本人の重症者数や死亡者数は欧米のそれと比べると正に“さざ波”程度であり、通常のインフルエンザと何ら変わりないものとして扱っても問題ないものと認識するのか否かの前提の議論を絶えずしっかり行うべきであったのではないか。
もし、通常のインフルエンザと何ら変わりないレベルの感染症として扱えば、関西、特に大阪で見られた医療態勢の崩壊はなかったのではないか。こうした問題を、現象のリスクとその対応への結果、現れる損失とを比較考量して厳密に評価するべきではないか、という議論には一考の余地は大いにある。だが、それも国民の間に厳密な論理力と判断力があってのことかもしれない。
何よりも政策課題は、医療態勢の崩壊を招かないために何を為すべきかであろう。不要な死者や経済的に或いは精神的に不幸になる人々の数を極力抑制するために何をどうするべきかである。このコロナ禍で、自殺者が増えたとの報告も見られる。そうしたことを少なくするための論理的政策形成が必要なのだ。特にこの国は精神衛生面での意識が低く、精神医療も十分であるとは思えないのも問題である。精神科の医師もレベルが低く、金儲け主義で精神医に係ると返って酷い目にあうという声も多々あり、明らかに問題があっても控えることがあるように思うからだ。
“さざ波”程度であるとの認識を持った人物を眼前から追放して、それで安心する、そんな感情論のみが横行するこの国では、適切な議論が行えるとは到底思えない。
オリパラ開催のための準備も結構着々と進んでいるという声も聞く。もし、そうならば組織委からの開示があるべきだ。こうした危機的状態の中では、日々の結果をブリーフィングするべきではないか。オリパラ担当相はそのための御大臣ではないのか。そういう情報開示があってはじめて適切な議論ができるのだ。
こう考えて来ると物心両面で、この国ははるかに世界の後進国であるような情けない気分になる。
一方、日当20~35万円の人件費合計80万円を広告代理店(㈱東急エージェンシー)デレクター一人に組織委が支払う契約をしているとのテレビ報道が週末あった。急にレベルの低い話になって申し訳ないが、40日間で3200万円に上るのか?オリパラ絶対開催にはこういう背景があるのか?菅義偉首相が尾身会長に激怒する原因がここにあるのか。
またボランティアの辞退者が増えて、人手が無く、同じ仕事を有償で募集しているという。同一労働同一賃金は当たり前だが、一方では無償、一方では優勝と言う矛盾を抱えているのが現実だとうも言う。
こういった事実から、日本が一層だらしない利権国家に堕落している現実に、さらに情けなくなる。
ワクチン接種を円滑に進めるため国が新たに導入した接種記録を個人単位で管理するシステムVRSが、一部の自治体で十分に利用されていないことが分かったという。国は接種の全体像の把握が難しくなって接種計画に支障が出るおそれもあるとのこと。
各自治体に国民の接種情報とマイナンバーの紐づけを義務化しなかったのは何故か、不思議なのだ。接種の全体像の把握にはこれが決め手だが、これもVRSの開発と微妙に利権がからんでいるという噂がある。これが事実なら、この国は全く腐っている。
さて、今回は月初めにつき、自粛生活で始めた恒例の先月見た映画の紹介としたい。
先ずは、NHK-BSプレミアムのBSシネマで見たのは次の通り。(題名の前の数字は鑑賞日)
5/3“ベン・ハー Ben-Hur”1959年米 ウィリアム・ワイラー(監督)チャールトン・ヘストン、スティーヴン・ボイド
5/4“日本沈没”1973年日 森谷司郎(監督)小林桂樹、丹波哲郎、藤岡弘、いしだあゆみ、
5/5“大脱走 The Great Escape”1963年米 ジョン・スタージェス(監督)スティーブ・マックイーン 、ジェームズ・ガーナー、チャールズ・ブロンソン 、ジェームズ・コバーン 、リチャード・アッテンボロー 、デヴィッド・マッカラム
5/6“知り過ぎていた男 The Man Who Knew Too Much”1956年米 アルフレッド・ヒッチコック(監督)ジェームズ・ステュアート、ドリス・デイ
5/10“タクシー運転手~約束は海を越えて~A Taxi Driver”2017年 韓国 チャン・フン(監督)ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン
5/11“エデンの東East of Eden”1955年米 エリア・カザン(監督)ジェームズ・ディーン,ジュリー・ハリス,レイモンド・マッセイ,ジョー・ヴァン・フリート
5/12“サイコPsycho”1960年 米 アルフレッド・ヒッチコック(監督)アンソニー・パーキンス,ジャネット・リー
5/13“我が谷は緑なりきHow Green Was My Valley”1941年 米 ジョン・フォード(監督)ウォルター・ピジョン、モーリン・オハラ、ドナルド・クリスプ、ロディ・マクドウォール
5/14“拳銃王The Gunfighter”1950年 米 ヘンリー・キング(監督)グレゴリー・ペック、ヘレン・ウェスコット、ミラード・ミッチェル
5/18“恋人たちの予感When Harry Met Sally…”1989年 米 ロブ・ライナー(監督)ビリー・クリスタル、メグ・ライアン
5/19“めまいVertigo”1958年 米 アルフレッド・ヒッチコック(監督)ジェームズ・ステュアート、キム・ノヴァク
5/25“バニーレークは行方不明Bunny Lake Is Missing”1965年 英 オットー・プレミンジャー(監督)ローレンス・オリヴィエ、キャロル・リンレー、キア・デュリア
5/26“引き裂かれたカーテンTorn Curtain”1966年 米 アルフレッド・ヒッチコック(監督)ポール・ニューマン、ジュリー・アンドリュース
5/27“ラストエンペラーThe Last Emperor”1987年 伊・中・英・仏・米合作 ベルナルド・ベルトルッチ(監督)ジョン・ローン、ジョアン・チェン、ピーター・オトゥール、坂本龍一、ケイリー=ヒロユキ・タガワ
5/28“新・ガンヒルの決斗Shoot Out”1971年 米 ヘンリー・ハサウェイ(監督)グレゴリー・ペック、パット・クイン、スーザン・ティレル
5/29“ハリーの災難The Harry with Trouble”1955年 米 アルフレッド・ヒッチコック(監督)エドマンド・グウェン、ジョン・フォーサイス、シャーリー・マクレーン
5/31“戦場Battleground”1949年 米 ウィリアム・A・ウェルマン(監督)ヴァン・ジョンソン、ジョン・ホディアク、リカルド・モンタルバン、ジョージ・マーフィ
“ベン・ハー”は以前に見たことがあり、2度目はどうかと見てみたが、申し訳ないが感動巨編とは思えなかった。
“大脱走”は昭和時代の欧米男優総出演の観あり、各男優の個性があふれていた。昔も、テレビで放映されたのを見ている。多分、カットはあったのではないだろうか。マックイーンがオートバイで国境線をジャンプしようとして、失敗するのが見せ場?
“エデンの東”は確か予備校生の時に、予備校の英語教師だった神戸大の先生が解説していたので、見たことを思い出す。内容は何故かすっかり忘れていて、2度目でも感動できた。
“知り過ぎていた男”、“サイコ”、“めまい”、“引き裂かれたカーテン”、“ハリーの災難”は、アルフレッド・ヒッチコック監督作品。“サイコ”は2度目だが、まともに見たのは初めて。ラストを知っていたのでこれも面白み低減。“ハリーの災難”はヨシモト喜劇的ギャグ?“引き裂かれたカーテン”はスパイものが、少々迫力不足の印象。
“バニーレークは行方不明”はヒッチコック監督作品ではないが、よく似たタッチの作品だ。
“我が谷は緑なりき”(1941年)は、“喜びも悲しみも幾歳月”(1957年松竹・木下惠介監督)の灯台守を思い出した。木下監督が参考にしたかも知れない。これはイギリスの炭鉱夫達と家族、町の話。
“ラストエンペラー”、これも2度目。今となっては最初は何で見たのか記憶がない。だが、そんなはずはないのだが、カットされた部分があるのではないか、と思える部分がある。コオロギの登場部分がもっと長かった記憶がある。満州国成立に御存知関東軍が大きく深くかかわっていたはずだが、その部分がほとんどなく、あっさり過ぎている。溥儀は昭和天皇にも会っているにもかかわらず、だ。勿論、坂本龍一、高松英郎等日本人俳優の出演はあるが、制作に関与していないのが残念。残念ながら、ノモンハン事件も日中戦争もシーンとしては登場しない。
“拳銃王”、“新・ガンヒルの決斗”は西部劇。いずれもBSシネマで2度目。
“恋人たちの予感”は若きメグ・ライアンが見れる。そういえば、最近見かけない。
今回、邦画は小松左京・原作のSF“日本沈没”だけ。これは地球物理学者の竹内均が出演していて、プレートテクトニクスの解説をしているが、実際にはストーリーに影響する台詞はない。原作は読んではいないが、小松左京氏は祖国を失った日本人が外国でどう生活を展開できるのかが問題だろうと思って、書いたという意味のことを言っていたと記憶するが、その部分についてはラストの僅かなシーンだったので、少々ガッカリ。気に懸けるべき要因が多すぎて、小説化困難としたのだろう。
“タクシー運転手~約束は海を越えて~”は、珍しい韓国映画で、韓国作品は見るのは初めて。1980年の光州事件の実話が基になっているという。実際には深刻な事件だったと思われるが、何となくコミカルに扱っていて、見る側の負担を軽くしている印象がある。事件の真っ最中の光州に潜入・脱出するドイツ人記者をタクシー運転手が手伝う話。
ネット経由で鑑賞したのは次の通り。中には、無料映画も含まれるが、内容はなかなか侮れない。
5/2“アスUs” 2019年 米 ジョーダン・ピール(監督)ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク、エリザベス・モス、ティム・ハイデッカー
5/3“レッド・エージェントDespite the Falling Snow”2016年 英・加 シャミム・サリフ(監督)レベッカ・ファーガソン、 サム・リード、アンチュ・トラウェ
5/5“8月はエロスの匂い”1972年 日 藤田敏八(監督)川村真樹、片桐夕子、永井鷹男、むささび童子、粟津號
5/6“マルティナは海Son de Mar”2001年 スペイン ビガス・ルナ(監督)レオノール・ワトリング ジョルディ・モリャ エドゥアルド・フェルナンデス セルジオ・キャバレロ
“アスUs”はGWで帰郷した娘が、ネットで見せてくれた。キッカイな現代映画との記憶しかない。
“レッド・エージェント”は米ソ冷戦時代の亡命スパイ映画。モスクワが主な舞台で、英語表記のDespite the Falling Snowの通り、雪が降るシーンが確かに印象的ではあった。レベッカ・ファーガソンは一人二役だが、その必要性ありや。ミッションインポッシブルでもスパイ役で出演の由。
“8月はエロスの匂い”は作られた当時、一世風靡のポルノ女優主演。意味不明の芸術性を醸し出したつもりか。
“マルティナは海”も何かスペインの昔話が背景にあるのだろうか。話の中の主人公の夫の行動や心理が不可解だが、見応えはあった。
次は、これまでテレビで放映されたものをこまめに録画しておいたものを見たもの。
5/1“エクストラクションExtraction”2015年 米 スティーヴン・C・ミラー(監督)ケラン・ラッツ、ブルース・ウィリス、ジーナ・カラーノ
5/2“ダイ・ハード3 Die Hard: With a Vengeance”1995年 米 ジョン・マクティアナン(監督)ブルース・ウィリス、ジェレミー・アイアンズ、サミュエル・L・ジャクソン
5/4 “難波金融伝ミナミの帝王34・ブランドの重圧”2005年 日 萩庭貞明(監督)竹内力、岩崎ひろみ、西興一朗、天田益男、ゆうき哲也、池田政典、増田未亜、萩原流行 ほか
5/9“難波金融伝ミナミの帝王29・闇の代理人”2004年 日 萩庭貞明(監督)竹内力、川島なお美、桐谷健太、天田益男、ゆうき哲也、梅垣義明、螢 雪次朗、栗島瑞丸、池乃めだか ほか
5/23“エネミーラインBehind Enemy Lines”2001年 米 ジョン・ムーア(監督)オーウェン・ウィルソン、ジーン・ハックマン
5/24“スピード2 Speed 2: Cruise Control”1997年 米 ヤン・デ・ボン(監督)サンドラ・ブロック、ジェイソン・パトリック、ウィレム・デフォー
“エクストラクション”と“ダイ・ハード3”は、ブルース・ウィリスのアクションもの。気分的にすぐれない時に見るのが良い。
“難波金融伝ミナミの帝王”の2作は竹内力主演のヒット作。金融のカラクリを熟知しているのが面白い。
“エネミーライン”、“スピード2”には明らかにカットされているシーンがあると分かる。このような時間潰しのためだけの放映は、各テレビ局も止めるべき時ではなかろうか。
この際、かつて安値で買っておいておいたDVDを見た。御存知、マリリン・モンロー。
5/25“7年目の浮気The Seven Year Itch” 1955年 米 ビリー・ワイルダー(監督)マリリン・モンロー、トム・イーウェル
浮気をするつもりだったが、結局はそれを止めて、仕事も放棄して休暇に入った妻子の滞在先のへ駆けつけるサラリーマンの話。その浮気のターゲットになったのが、マリリン・モンロー。写真で見るよりも映像で見る方が、可愛い印象なのが不思議。有名な地下鉄の通る場面でスカートがめくり上るシーンは本編では無い。PR用のポスターの画像なのか。
先月は以上28本の映画を鑑賞した。
コメント ( 0 ) | Trackback ( )
« オリパラ開催... | 健診帰途の大... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |