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“ISOを活かす―46. 審査機関を上手に活用して、ISOを経営に役立つシステムに改善する”


今回は 審査機関による第三者監査の活用についてです。
うかつにも どういう訳かスキップしていた 第46項についてです。私の原稿ファイルにはあったのですが イザ投稿する時に間違って第47項を先に入れてしまったようです。さて、こういう間違いへの是正処置・再発防止は どうするべきか・・・。

【組織の問題点】
建設機械メーカーのA社は、昨年ISO9001認証を取得し、最近 定期審査が実施されました。この審査の途中段階で、指摘事項候補が 不適合5件、推奨事項10件とされましたが、A社社員と審査チームの協議の結果 不適合1件、推奨事項5件とすることになりました。
この会社の社長は、審査に際して、“品質マネジメントシステムの改善のために、「厳しい審査をして、多くの指摘をしてください」”と言っていたのですが、このような社員の対応で よいのでしょうかという問題です。

【磯野及泉のコメント】
著者・岩波氏の“審査における指摘事項は、改善のネタである。指摘事項の件数は多い方がよい。” という結論は あまりにも天真爛漫すぎると思います。
しかし、一方では“審査機関や審査員によっては、審査の視点や基準に差があるのが実情です。審査員の審査方法や指摘事項の内容が、企業にとって役に立たないと感じたときは、遠慮なく審査機関や審査員と話をするとよいでしょう。” とも指摘しています。

このように、何と言っても 審査員は 第三者であって被審査側ビジネスの素人です。世の中には さまざまなビジネスの在り方があります。そこには 様々なドラマも絡んでいると言えます。
例えば B to B(会社対会社) だけのビジネスの会社に B to C(一般消費者相手)のビジネスのやり方を 押付けても意味が有りません。被審査側がB to Bの小企業で、審査員がB to Cの大企業出身の場合 ほとんどかみ合わない審査指摘になってしまうことがあります。
“8.2.1顧客満足”や“8.4データの分析a)項”において、審査員は “顧客アンケート調査” という ステレオタイプの“回答”を 頭に描いていたのですが、被審査側の顧客は 状況の異なる3社の顧客しかなく、アンケート質問にしても3社3様の質問事項しか有り得ず、まして得られた回答をデータ化して解析するなどという状態になかったのです。ところが、審査員は 大企業出身でそれまで、自身のあり方にも絶対の自信があったので、被審査側のやり方や回答に非常に不満で、審査では忌避すべき論争に発展しそうになるといったようなことも 現実に生じたりしました。
これが、“審査員によっては、審査の視点や基準に差があるのが実情” の一面の真相であるとも言えます。
この場合、審査員の想像力が問題となります。頭の固い審査員は困りモノなのです。このような状況で “指摘の件数は 多い方が良い” とは 安直には言えないでしょう。

実は そういうこともあるため “審査員の審査方法や指摘事項の内容が、企業にとって役に立たないと感じたときは、遠慮なく審査機関や審査員と話をするとよいでしょう。”と なる訳です。その意味で 被審査側と、審査員は 平等の立場にあると言えます。お互いの意見を尊重すると言う オトナの態度が必要です。
一般的に、審査ではこのような相互の主体的対応が必要なのですが、そういう精神構造が 日本人全体に欠けている印象が有ります。そして、被審査側の 卑屈なまでの表面的盲従があり、その後 目の前に居なくなった審査員の陰口を叩くなどということがしばしばあるのではないかと思います。
そんな表面的盲従が、“審査員の指摘や是正処置によって、文書や記録が増加する傾向” に つながっていないでしょうか。不適切な指摘に ムリヤリ回答を迫られるため、不要な文書を作って その場を糊塗して一旦しのぐような ことが起こっていないでしょうか。そんな一時しのぎのために 不要な仕事を増やすなどというISO事務局があれば 言語道断です。

こういったことから、ISOの審査という枠組みは第三者への説明責任を 果たせるコミュニケーション力の訓練の場でもあると考えるべきではないかと思うのです。自分たちのビジネスを適切に評価してもらうためにも、今 していることを適切に説明し、第三者に理解してもらう態度が 必要だと言えます。それができてこそ、透明性が 確保でき、ステーク・ホルダーへの理解や 共感も拡げられるのだと思うのです。自己満足だけではビジネスは成立しません。

さて、第三者認証が それほどいい加減な審査員によってなされるのならば 大枚払って審査してもらう価値があるのだろうか、という疑問が湧いてきます。確かに そういった疑問は ISO9001マネジメントに ほぼ習熟した組織にとっては 当然のような気がします。最近、審査では何の指摘も無いといったような状況の企業も多いようです。そういった企業では もはや認証を降りるところも出始めているようです。
JABの統計でも ISO9001の日本国内での認証件数が 頭打ちになったという現象が起きていますが このことの反映かも知れません。なおかつ、ISO9001認証取得企業の 不行状が度々報道されるに至っては ISO9001への信頼も地に落ちてしまいました。もはや ISO9001認証は 企業の自己満足充足のためのものになりつつあります。

それでも 余裕のある会社は 既に言いました “第三者への説明責任の訓練” のためや 審査員の岡目八目からの指摘に “気付き”を誘発させ 会社を良き方向に導くという姿勢は 大切にするべきでは ないかと思います。数少ない “改善の機会” を多様に持っていることは、一種のリスク・マネジメントのだと思うのです。
また、第三者監査は 顧客の第二者監査の負荷を減らすという意味がありますので、組織の業界内でのポジションをよく見極めるべきでしょう。顧客に相手にされなくなるようなことが有っては 元も子もありません。それも ビジネス・リスクへの見極めとして必要でしょう。

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