薬の効果を確認する治験では、
「本物の薬成分が入ったモノ」
「本物の薬成分が入らないモノ」
の両方をランダムに投与し、
かつ中身を処方医にも受け取る患者にも知らせない、
そして集計・データ解析は第三者が行う、
という方法をとります。
処方側にも患者側にもわからないため、
「二重盲検法」
と呼ばれています。
そして薬成分が入ったモノの効果が6割以上認められないと、
薬として認可されないと聞いています。
しかし、このような治験を行うと、
「本物の薬成分が入っていないモノ」
を内服したのに「薬が効いた」と答える患者さんが一定数います。
その比率は、だいたい3割程度。
多いですよね。
薬成分が入っていないニセ薬でも、
ヒトは薬と思って飲むと3割効いてしまうのです。
というか、“効いたと感じる”のです。
ヒトの思い込みとはそういうモノ。
この“偽薬でも効いたと感じる”ことを“プラセボ効果”と呼びます。
さて、現在鋭意接種進行中の新型コロナワクチン。
“mRNAワクチン”という新しいメカニズムゆえ、
安全性が話題になっています。
人類の危機に対して、人類全体で行う実験のような側面がありますから、
不安になって当然です。
ここで、前述の薬の効果と同じような実験を、
新型コロナワクチンで行った報告があります。
mRNAの入ったワクチンと、
mRNAが入らない偽ワクチンを、
接種者にも接種されるヒトにもわからないように接種し、
その副反応の発生率を第三者が解析したのです。
その結果を、あなたはどう予測しますか?
mRNAが入ったワクチンの副反応発生率と
mRNAが入らない偽ワクチンの副反応発生率を比較すると・・・
なんと、“ワクチンの副反応”を訴えたヒトの半数以上は“思い込み”という結果になりました。
「ワクチンは痛い」
「ワクチンは怖い」
という不安や、接種前に、
「〇〇〇などの副反応が出ることがあります」
と説明されると、そのような気持ちになってしまうのですね。
これは全身の不定愁訴で顕著ですが、
局所反応(接種部位の腫れ、痛み)では少ない傾向があります。
なお、偽薬による副作用(ワクチンでは“副反応”)は“ノセボ効果”と呼ぶそうです。
ところで皆さん、
「病気」
というネーミングについて考えたことがありますか?
そのまま読めば「気を病む」状態です。
検査でわかる内臓疾患だけでは、
人間の病気は理解しきれず、治療しきれません。
私は小児科医ですが、珍しく漢方を多用しています。
西洋医学の治療で上手くいかない、満足できない患者さんには、
希望があれば漢方薬を処方しています。
これを15年以上続けてきた結果、
現在では外来患者さんの約半分に漢方を処方しています。
その魅力はいろいろありますが、
まず「手応えがある」ことです。
そして「病気(=気を病む)」を「“気”の異常」と捉え、
漢方薬のほとんどに「“気”の異常」を解消するための生薬が含まれていることです。
例えば、夜泣き、泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)、かんしゃく持ち、チック、寝ぼけ・・・
検査では異常が出ないので、西洋医学では治療できません。
おそらく小児科医に相談しても、
「様子を見ましょう」
と言われてガッカリするご家族が多いと思われます。
しかし漢方を知っている私は、逆に診療が盛り上がります。
「このお子さんは怒りんぼタイプですか、シクシク泣くタイプですか?」
などと深掘りて質問し、お子さんに合う漢方薬を模索します。
つらい症状を訴えて受診しても検査で異常がないため、
「気のせいですよ」
と言われた方、
漢方治療を考えてみると活路が見いだせるかもしれません。
「“気のせい”といわれたんですね」
「漢方ではそれを“気”の異常と捉えます」
「“気”の異常には、気鬱・気滞・気逆の三つがありまして、それぞれに効く方剤が・・・」
などと会話が続き、あなたに会う漢方がきっと見つかることでしょう。
あらら、大分脱線しました(^^;)。
■ コロナワクチンの副反応 5~7割が「ノセボ効果」によるもの?
薬として効く成分がまったく含まれていない偽薬を「プラセボ」と呼びます。プラセボを飲んでも、理論上は何の効果も期待できませんが、実際には身体に有益な作用が得られることも多く、これがプラセボ効果です。
しかし、プラセボによってもたらされる効果は有益な作用だけとは限りません。プラセボを飲んでいるにもかかわらず、本物の薬と同じような副作用が表れることをノセボ効果と呼びます。新型コロナウイルスワクチンの接種にあたり、副反応を心配される方は多いと思います。同ワクチンの副反応は接種部位の痛み、発熱、頭痛、倦怠感など、その症状の多くは軽いものです。しかし、副反応に対する不安が強いと、ノセボ効果の影響によって副反応が強まる可能性もあります。
新型コロナウイルスワクチンの副反応とノセボ効果の影響を検討した研究論文が、米国医師会が発行しているオープンアクセスジャーナルに2022年1月4日付で掲載されました。
この研究では、新型コロナウイルスワクチンの有効性や安全性について、プラセボワクチン(生理食塩水など)と比較した12件の臨床試験データが解析対象となりました。
臨床試験に参加した被験者のうち、2万2802人が新型コロナウイルスワクチンを、2万2578人がプラセボワクチンを接種していました。
解析の結果、プラセボワクチンを接種したにもかかわらず、何らかの副反応を報告した人は、初回の接種で35.2%、2回目の接種で31.8%でした。この頻度をもとに新型コロナウイルスワクチンによるノセボ効果の影響を検討したところ、新型コロナウイルスワクチンによる全ての副反応のうち、初回の接種で76%、2回目の接種で52%がノセボ効果に相当すると見積もられました。
■ COVID-19ワクチン有害事象のノセボ効果の説明が必要
新型コロナワクチンの登場により、
副反応についてたくさん報道されました。
不安を煽るというマイナス面はある一方で、
国民の理解も進むというプラス面もあったと感じています。
従来“アナフィラキシー”という言葉は専門用語でしたが、
メディアがたくさん取り上げたお陰で一般化しましたから。
また、思春期に多いワクチン接種後の不定愁訴や失神・転倒の一部は、
自律神経系の“血管迷走神経反射”であることも認知されるようになりました。
その影響もあってか、
以前副反応が問題になり事実上中止に追い込まれたHPVワクチンが、
2022年4月に復活することになりました。
小児科医を長くやっていると、いろんなことに遭遇します。
実はHPVワクチン以前にも、
副反応で中止に追い込まれたワクチンがあります。
それはおたふくかぜワクチン(=ムンプス・ワクチン)。
もう20年以上前に定期接種から外され、
未だに定期接種として復活できていません。
私が引退する前に、復活できるかなあ。