徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

オミクロン株の症状はデルタ株までと、どう違う?

2022年02月07日 15時29分50秒 | 小児科診療
前項ではオミクロン株の、
「感染力は強いが重症化しにくい」
という特徴を取りあげました。

今回は具体的な症状です。
テレビでは、
「のどの痛みが目立ち、熱も出る」
「味覚障害や嗅覚障害は目立たない」
などと報道され、
「従来株以上に風邪との区別が難しい」
と専門家は解説しています。

また、
「潜伏期が短いので隔離期間も短くできるのでは?」
という意見もあり、これは実際にルール変更されました。

ポイントを抜粋します。

■ 症状

まずは症状です。
オミクロン株登場以前の新型コロナの症状は、

・咳、息切れ、息苦しさ
・発熱、寒気
・筋肉痛、関節痛
・嘔吐、下痢
・嗅覚・味覚の異常

と言われてきました。
オミクロン株ではどう変わったのでしょう。


先ほど述べたように、頭痛・のどの痛み・鼻水が50%以上に見られ、
いわゆる“かぜ症状”ですね。

以前は「鼻水が目立たないのが特徴」とされてきましたが、
オミクロン株では鼻水もふつうに見られるようになりました。

「食事もとれないほどの喉の痛み」も新たに登場した症状です。
現在は、この“強いのどの痛み”が特徴とされつつあります。

筋肉痛/関節痛、発熱が目立つとインフルエンザ様です。
ただ、日本全国でインフルエンザはほとんど出ていないのが現状ですので、
今は新型コロナを疑うべきでしょう。

デルタ株で目立っただるさ(全身倦怠感)も半分以下。

当初、特徴的と言われた嗅覚/味覚異常は13%ですから、
それがないからといって否定はできません。

また、頻度は10%前後であるものの、嘔吐/下痢も見られ、
これは現在流行中のウイルス性胃腸炎とオーバーラップします。

やはり、新型コロナ・オミクロン株感染と、それ以外のかぜを症状で区別するのは困難です。

実際当院に来院する小児患者さんも、
ふつうの風邪症状が多く、
敢えて言えば頭痛と咽頭痛が目立つことが特徴でしょうか。
発熱は1-2日で下がり、
熱の勢いはインフルエンザの方がありそうです。

私は全身倦怠感が強い患者さんには、
桂枝湯や柴胡桂枝湯などの漢方薬を処方しています。
西洋医学では対応する薬がありませんので。

■ 潜伏期

さて、次は潜伏期の話。



上のイラストでは、デルタ株までの従来株の潜伏期:約5日間が、
オミクロン株では約3日まで短くなっています。

■ (追加)藤田次郎教授(琉球大学)の解説

感染力の強い期間を以下のグラフのように説明しています。


従来株の感染力は発症日がピークであり、
その2日前から感染力があるとし、
一方オミクロン株では発症前の感染リスクは少なく、
感染力のピークは発症3-6日と後ろにずれ込んでいるというデータを示しました。

いや〜、同じウイルスなのにこんなに違うのですね。

そしてこれらのデータを元に、
濃厚接触者の追跡開始日や待機期間(隔離期間)を、
オミクロン株に合わせて以下のように変更することを提言しています。


今のところ提言にとどまり、
厚労省がルールを変更するまで至っていません。

さて、忽那先生の解説記事に戻ります。

■ 重症化までの時間

オミクロン株は潜伏期が短くなりましたが、
重症化するまでの期間も短くなったようです。
従来は発症後7日間で肺炎などの合併症が出てくるとされていましたが、
オミクロン株ではなんと3日まで短くなりました。
あっという間です。
自宅療養者はこのことを認識して要注意対応する必要がありますね。


■ 無症状感染率

「無症状感染者率」も気になります。
従来の新型コロナウイルスでは、
・子どもの約半分
・成人の3分の1
・高齢者の5人に1人
ーが無症候性感染者と報告されています。
しかしオミクロン株による無症状感染者率のデータは、
報告により1.2〜4〜20〜27%と大きくばらけています。

(1.2%)ノルウェーの集団感染例81人のうち、1人(1.2%)のみが無症状だった。
(4%)沖縄県でのオミクロン株による感染者50名のうち、4%が無症状だった。
(20%)デンマークの初期の感染者785例のうち、20%が無症状だった。
(27%)日本国内で12月27日までに診断されたオミクロン株による感染者109例のうち29例(27%)が経過中無症状で経過した。

おそらく、国や地域により感染者の年齢構成が異なること、
ワクチン接種率も異なることなどが影響しているのではないか、
と忽那先生は推測しています。

■ 重症化率

重症化率についても言及しています。
デルタ株よりは低いものの、最初に登場した武漢株並みとのこと、
やはり侮れません。

(イギリス)デルタ株と比較して、オミクロン株の感染者の入院リスクは約3分の1
(南アフリカ)デルタ株と比較して、オミクロン株の感染者の入院リスクは0.2倍、重症化リスクは0.3倍
(アメリカ)デルタ株と比較して、オミクロン株の感染者のICU入室リスクは0.26倍、死亡リスクは0.09倍

2022年1月前半までと、1月後半以降では、重症度が違う、呼吸不全に陥る患者が増えたという声も聞こえてきます。

欧米でもオミクロン株が猛威を振るっていますが、イギリスでもフランスでもオランダでも「制限解除」へ方針を変更しています。

しかし日本では死者数がデルタ株中心の第5波なみまで増加し、
むしろ「制限強化」と逆行しています。

なぜこんな風になってしまったのか?

テレビでも解説しているように、
「高齢者への3回目接種(ブースター接種)が出遅れたから」
が当を得ているようです。

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