徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

“ヒトメタニューモウイルス”って何?

2023年02月02日 08時42分24秒 | 小児科診療
このウイルスの名前が話題になったのは5年くらい前でしょうか。
春先になり、乳幼児の気管支炎(ゼーゼー/ヒューヒュー)が目立つ年がありました。

小児科医にとっては、乳児がゼーゼーする感染症はRSウイルスが定番です。
しかしRSウイルスは幼児期にゼーゼーすることはあまり経験しませんし、
RSウイルスは冬の前期、季節性インフルエンザの前に流行し、
インフルエンザが流行し始めると消えていく、
というパターンを取るとされてきました。

そこに登場したのが「ヒトメタニューモウイルス」。
どうやら、春先の乳幼児気管支炎の犯人はこのウイルスらしい。
RSウイルスによる気管支炎は乳児がメインですが、
ヒトメタニューモウイルスは乳児<幼児がターゲットになり、
少し年齢層が異なります。

その後、迅速検査キットが開発されて市民権を得るようになりました。
現時点では隔離期間の設定はありませんので、
診断されても「症状が治まって元気になった」ら登園できます。

ヒトメタニューモウイルスを扱った記事が目にとまりましたので紹介します。
ポイントは、

・1〜3歳の幼児で流行しやすく、2歳までに約半数、遅くとも10歳までにほぼ全員が1回は感染する。
・多くの人は何度も繰り返し感染するが、年齢が上がるにつれて徐々に免疫がつき、症状が軽くなる。
・小児の呼吸器感染症の5~10%、大人の呼吸器感染症の2~4%は、ヒトメタニューモウイルスが原因。
・春先に流行(1月から報告件数が上昇し、3~4月にピークを迎える)し、感染経路は飛沫と接触、潜伏期間は4~6日。
・咳、鼻水、発熱などが主症状で、通常1週間程度で症状は治まるが、乳幼児や高齢者では重症化することもある。
・ワクチンや特効薬はなく対症療法のみ。

RSウイルスと似ており、違う箇所を探すと、
前述のように季節と年齢層が少しずれることくらいです。
つまり、症状・診察所見では区別はできません。


■ 「ヒトメタニューモウイルス感染症」10歳までにほぼ全員が1回は感染する
(荒川隆之/薬剤師)
2023/2/1:日刊ゲンダイ Digital)より一部抜粋;
 ヒトメタニューモウイルスは、小児を中心とした急性呼吸器感染症のウイルスのひとつです。1~3歳の幼児の間で流行するケースが多いのですが、大人にも感染します。 
 初感染は生後6カ月ごろから始まり、2歳までに約半数、遅くとも10歳までにほぼ全員が1回は感染します。小児の呼吸器感染症の5~10%、大人の呼吸器感染症の2~4%は、ヒトメタニューモウイルスが原因だと考えられています。  ヒトメタニューモウイルス感染症は春先に流行することが知られていて例年1月あたりから報告件数が上昇し、3~4月にピークを迎えます。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスと同じく飛沫や接触により感染し、4~6日の潜伏期間の後に発症します。
 いわゆる風邪症状、咳、鼻水、発熱などが主症状です。通常、1週間程度で症状は治まりますが、乳幼児や高齢者では重症化することもあり、注意が必要です。多くの人は何度も繰り返し感染してしまいますが、年齢が上がるにつれて徐々に免疫がつき、症状が軽くなる傾向にあります。 
 ヒトメタニューモウイルス感染症は、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスとは異なり、ワクチンや抗ウイルス薬がなく、重症度に応じた対症療法を行います。 
 また、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスと同様に抗原検査キットによる迅速診断が可能で、鼻咽頭を細い綿棒でぬぐった後、3~15分程度で診断されます。 
 確定診断ができても治療薬がないのだから意味ないじゃないかと思われるかもしれませんが、原因ウイルスを特定することにより、不安を解消できますし、家庭内や保育施設などでの流行を把握することができます。また、何より「ウイルス感染」であるとわかれば、不要な抗菌薬の使用を避けることにつながるのです。

なお、当院ではカゼ症状に対する抗菌薬投与は最低限としており、ヒトメタニューモウイルスと診断されても治療に反映されない(変わらない)ので抗原検査は行っておりません。

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